第341話「現象を理解できるか?」

 俺の少ない魔力で風を腕に纏う。

 これでただ一つの準備が整った。

 ユイナの力に頼れば全身に纏う事など造作もないが、それでは条件が満たせなくなる。


 周囲の空気は凪いでいる。

 小泉の水面も微動だにせず、まるで時間が止まっているかのようだ。

 死をまき散らす存在が生物の刻を奪っていく。


 鈍感な小鳥が怨魂の脇を掠めていくが、数刻もせずしてこの世界から存在が霞む。

 もう姿を見ることはない。

 感慨深くもなく、意図せず視界に捉えることがなければ生物であったことすら知ることはなかった。

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