第322話「規定」
「確かに襲撃者も気になるがまずは守りだ。結界を作り直すのにはどれくらいかかるんだ? このままにしていくわけにもいかないだろう」
「おらが張った結界でねえからもう結界は張れねえが」
これでこのままバニティーをここに置いて行くといえば叱責されても文句が言えない状況が出来上がった。良心の呵責に苛まれるならば一人悩まずとも肯定するしかない状況である。
「冗談ではない……」
バニティーが運んできた紅茶を各自が受け取る。
そして、最後に残った一つにそっと手を伸ばす者がいた。
スペラが目覚めたのだ。
あれだけ深い呼吸をしていたというのに、しっかりとティーカップを持つとちょろちょろと舐めるようにすすった。
状況は目覚める前と後でがらりと変わっているはずなのだが漫ろ見渡す風もなく、あたかもすべてを把握しているかのように達観しているように見えた。
「アーニャごめんにゃ。ミャーなら大丈夫にゃ」
やはり、すぺらは
「バニティー、力を借りる」
「お互いさまだが」
もう誰一人と反対することはない。
既に決まっていた事なのだから。
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