第321話「耳を澄ますまでもなく」

「みんな!! そんなに冷静に話してる暇なんてないんじゃないのかな!? 結界が破られたってことはここも危ないんじゃ!!」


「ボクの索敵範囲には魔力の質が明らかに違うのが一体確認してるけど、おかしいね」


「どうした?」


「派手に壊すだけ壊しておいて少しずつ離れていってるんだ。何がしたかったのか意図がわからないよ」


 別次元にある建物に干渉するほど程の力があるのにもかかわらず、手が触れられるところまで近づいてからは手出しすることがない。

 結界の破壊が目的にしては、こちらからばれてしまうなどお粗末にもほどがある。

 

 このタイミングである必要性がない。

 バニティーの不在時を狙えば反撃されるリスクがないのだから、不合理であると言わざる負えない。

 先程まで気にもならなかったことだが、今では鳥のささやき、虫のざわめき、草木の揺れる音が聞こえていた。

 建物の遮音性が高かったわけではなく完全に外界との関係性を断絶していたのだ。

 

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