第323話「まるで虫よけ」

 新たな同行者となったバニティー。

 あたかも今しがたまで共にいたかのように、準備は万全。荷物は既に麻袋に詰め込まれていた。

 鍛冶に使うのかその荷物の量も俺達の誰よりも多い。


 にもかかわらず、腕の先だけで軽軽と持ち上げてみせたのだからその力は圧巻である。

 全力を出せば馬車だろうがいとも簡単に持ち上げてしまいそうだ。

 この世界の馬車は軽量化などされている風でもなかったのだが、不思議と違和感などなかった。


「家を空ける事になるが大丈夫なのか? もうこの家を守るものはないんだろ」


「んだ。もうここは安全でないが。それでもモンスターさ嫌がるところなのはちげーねえ」


「その根拠は?」


「壁さ、描いた絵だが。あれはどうもモンスターが嫌がるみたいだが」


「魔力が込められてるからね。その魔力も特にモンスターが嫌う類の匂いっていうんだからつくづく笑えないよ」


 ルナが言うにはバニティーが描く絵には虫よけの効果があるらしい。

 俺には魔力が込められているところまでしかわからないが、魔力にも何らかの性質があるということだ。

 これは使えないだろうか。

 

 


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