第315話「頼みの器」
「みんな出掛けているのか? 姿が見えないが」
「妻も娘も首都にいるが。五年前に出てったきりだ。それで、頼みがある聞いてもらえるか。おらを首都さ連れてってくれ。ただでとは言わんが。おらは武器も防具も心得がある。それを存分に使わせてもらう。おらが拵えた物を見てから決めてくれが」
「それでは、一方的に恩恵を受けるのは俺達だ。護衛に対する報酬としては大きすぎると思うし、それにだ。俺たちと一緒に行かなくても一人でも十分首都まで行けるだけのレベルだろ」
「本気で言ってるのなら、この世界を甘く見てるんじゃないが。独りじゃ安心して眠ることさ出来んが。だが、二人いれば子供でも生き残れる可能性さあるが。この意味わかるが」
俺は反論は愚か何も言えなかった。
何せ、バニティーは妻と娘を一人で追う事が出来なかったのだから。
さぞかし悔しかったのではないのだろうか。
しかし、本当にそうなのだろうか。
すぐに引き留めることは出来なかったのか。
出ていくまでに止めなくてよかったのか。
危険な旅路を進ませたのは何故か。
やはり引っかかる。
ただの考え過ぎだと思いたい。
他人の家庭の事情など関わるとろくなことなど無いと、敢えて見てみないふりをする姿勢を取っているがここは問うべきだ。
これから先、依頼主とその護衛という立場以上の関係を築くならば。
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