第314話「ドワーフという種族」

 ここにはいないようだが、以前に実証済みという事のようだ。

 この毛むくじゃらの娘というとやはり似ているのだろうかと思うのだが、それは邪推というものだろう。

 スペラの母も猫耳でユイナの父も耳に特徴があったのだから、どうしても小柄で毛むくじゃらを想像してしまう。


「失敬なこと考えてたが。ドワーフには純粋な種族の血を継ぐ女はいないが。おらには似とらんが」


「す、すまん」

 

 表情に出ていたのか叱責を受ける羽目になった。

 無論、間違ってなどいないのだから反論のしようもない。


「人の顔見てなんか考え込んでるが、誰でもわかるが。お前に似なくてよかったなんぞ、よー言われたがかまわん。もう慣れとるが」


 やはり表情一つ変えずバニティーは言った。

 ドワーフという種族がやはり存在しているようではあるのだが俺の知ってるものとは違っている。

 ドワーフは男しかいないというのを聞いたことはあるものの、妻も娘もいる。尚且つ娘が似てなくてよかったという話から実子だということがわかる。


 土から突如生まれる妖精の類ではなく人間同様の種族の一種であり、営みのある生物なのだ。

 もともと持ち合わせている知識に頼り切っていたら足を掬われかねない。

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