第239話「人間らしさ」

 俺はスペラがはぎ取ったコートを再び奪い取ると慌ててルナへと羽織ると、ルナは座り込んでしまった。

 俯く少女の顔は覗き込まなくても恥ずかしさに顔をさらに赤くしているのだと、真っ赤な耳を見ればわかる。

 出会って間もないというのに変化は著しかった。


 最初は周囲の事は愚か自分自身の事さえ無頓着で興味のあることに真っ直ぐだった。

 その本質が変わったというより、個としての自我をより意識するようになったのだろう。

 それは人間としては当たり前のことなのだが、精神体に近い存在だった悪魔だったルナには稀有なのだろう。


 幾度となくこの世界に顕現しているという話なのだからこれまでにも似た経験があってもよさそうなのだが、共有した情報ではそこまではわからなかった。

 お互いわからないことがまだまだあるという事だ。

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