第208話「狂竜襲来」
見慣れたヴーエウルフもこれだけいれば悍ましい。
握りしめる拳もより強くなるというものだ。
しかし、敵意というものはまるでなく俺にぶつかって足を止める事すら時間が惜しいというように最少の動きで俺の後ろへと流れていく。
それはルナに対しても同様で、一刻を争う状況においての最善の行動をとっているだけなのだと理解できる。
理性を越えて本能で逃走を選択せざる負えないほど追い込まれているモンスターを見ることなど初めてで対応に困りその場で動くことも出来なくなっていた。
うかつに動けばこのモンスターの群れに蹂躙されかねない。
圧倒的な物量というのは何が起こるか全く読むことができず、この中の一頭でも強者がまぎれていたらそれで詰んでしまう事もあり得る。
そして、最大の問題はこのヴーエウルフたちが何から逃げているかという事だ。
アビリティの察知範囲外だというのにこのすれ違うモンスターの怯えようは尋常ではない。
俺は思考を巡らせながらもこの群れを飛び越えるように前方へ跳躍した。
その時。
俺の前方数百メートル先に突然炎の柱が天へと伸びた。
辺りはまるで昼間のように明るく照らされて昼夜が逆転したかのような錯覚すら感じてしまう。
炎柱はすぐに消えることはなく永続的にモンスターを焼き続けている。
柱が地と天を繋げ、熱風の余波がモンスター共を容赦なく消し炭へと変えていく。
俺はその柱目がけ飛び込む構図になっている。
「おわっ!! 冗談じゃない」
このままでは飛んで火にいるなんとやら、次は自分が奴らのようになってしまう。
そうならなかったのは身体が強化されていたからではない。
ルナが俺が消し炭コースのレーンに乗っているところを横からかっさらうかのように救い出してくれたからだ。
「今ならこのくらいの炎なら周りの雑魚みたいにはならないけど、熱いよ!?」
「なぜ、疑問形かなんて聞かないが助かった……。まあただで済む感じじゃないのはわかるしな」
「もう、時間もない。やるなら早くしないと」
「わかってる。あれだろ?」
俺の視線の先には5、6階建ての建物程の高さのトカゲを二足歩行にさせたような恐竜が炎を吐きつつこちらに向かってきていた。
動きは左程機敏には見えないが吐き続ける炎と、感覚を開けて炎の塊を吐くのが何とも厄介だ。
『狂竜リジャード・グレイル レベル51 』 ランクB 備考:グレイル種
今まで出会ったモンスターの中では最もランクが高い。
しかし、これだけ規格外な巨体と殲滅力を兼ね備えているというのに微妙な評価なのが気になるところではある。
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