第164話「通り過ぎた選択」

 ユイナは少し、また少しゆっくりと確実に前に進んでいると思っていた。

 それが間違いだと確信したのは奇しくも目の前の光景だった。視線の先に見えたのは濁流により奈落へと流される二人の姿だったのだ。


 真っ直ぐ向かっていればぶつかるはずが、大きく西へと逸れてしまっていたのだ。ここからでは合流することは出来ず、そのまま流されて行くのを見ているしかない。

 だが、一度通り過ぎるのを待ってから流れに逆らわずに斜め方向に追う形であれば追い付けるかもしれない。


 問題は流れの速さが思いのほか速いことだ。

 追い付くことができなければ、三人とも奈落へと落ちてしまう。

 ユイナもまた迷うことなく二人の方へと向かう事を選択した。

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