第151話「分析に長けた者」
ルナは剣戟を紙一重で躱しつつ、氷の礫も迸る稲妻も易々といなしすが反撃に出ることはない。
あくまでも手の内を全て曝け出すまでは分析に努める。一見思った事をすぐに口に出す真っ直ぐな無鉄砲な印象が強い少女に見えるのだが、実際はパーティー内では最も用心深く周囲を観察していた。
ユイナの事を心配しつつも、敢えて脅威を排除する為に行動を起こしたのも自分が一番適した役割だと踏んだからだ。
そうでなくては神に匹敵するような相手には単身で挑むようなことはしない。
即ち勝算は十二分にあり、なおかつ被害を蒙るようなこともないことを確信していての行動なのだ。
現実として目の前には、魔神にも関わらず自分に手も足も出ない男がいるだけである。
「そろそろ、無駄なことはやめて家に帰ったほうがいいと思うけどなぁ。じゃないとボクも本気で相手をしないといけなくなる」
ルナは髪を靡かせ男に向かって言う。
感情のこもっていない言葉はまるでゲームやドラマの台詞を読み上げているようである。
「そういうわけにはいかない。俺がここで死ぬようなことがあってもここを離れることはない」
中年の髪も髭も手入れされていない男はその身なりとは裏腹に全くぶれることなく言った。
足元にはなおも激しい水が滝のように地上へと流れている。
それを男は一瞥すると、口元を緩ませる。
それは一瞬だったのだが、ルナは見逃さなかった。
攻める手を緩めることはないが本気ではない。それはわかっていた。
だからと言って本気で攻めたところで何かが変わるわけでもない。
ただ、この男の目的は確かに他にある。それだけは確かなのだが、そこまでは現状の少ない情報では当りをつけることは出来てもそれ以上の事は何もわからない。
わからない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます