第136話「俺の代わり……」

 薄れゆく意識の中で誰かに呼ばれたような気がした。

 その刹那、俺は幾万と言う思考の海に溺れる最中人影のようなものを見た。それは薄らと脳裏に残る影法師のようだ。


 頭がくらくらとし、限界に達し力なくつんのめってしまう。鎧目がけて倒れ行く最中極限に達したために意識を失う瞬間、無意識に俺の右手が自然な動きで槍を握りしめる。そして、そのまま目の前が真っ白となった。


『自衛、脅威の排除を開始』


 アマトは無表情でいて、まるで機械か人形のような精密な動きで立ち上がると周囲に意識を集中する。その仕草は人間にしては些か不自然だが合理的でいて無駄がない。

 電流が流れている鑓をゆっくりと引き抜くさまなど悍ましいとしか形容しようがない程自然なのだ。痛みを感じている様子もなく急速に胸に開いた穴は塞がり、人間の形をした何者かへとなっていた。


「むっ」


 鎧は槍を手放すと真後ろへと大きく跳躍する。

 その判断はただしかった。もしも距離を取ろうとしなければ鎧はこの場所から消え去っていたのだから。

 

 アマトが握っていた鑓ははじけ飛んでいた。アマトは風の魔法が使えるのだがその使用方法は初歩的なものでお世辞にも強力とは言えなかった。

 それにも関わらず風の魔法で鋼鉄の槍を粉砕して見せたのだ。

 

 その余波は絶大で、目の前にクレーターが出来上がってします程だった。

 辺り一帯の空気を圧縮し、打ち出したのだ。以前音速を超える衝撃を目の当たりにして驚いていたとはとうてい思えないほど巧みに操ってみせたのだ。


『目標の破壊に失敗……追撃する」


 アマトは右足を一歩前踏み出すと衝撃が地面を伝って鎧に向かって激震する。

 鎧は地面の揺れにより地面に釘付けにされた為に回避することができずまともに衝撃を受けてしますがよろめいただけで痛手を受けたようには見えない。


「誰だ」


 鎧は呟いた。


 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る