第129話「水のシャワーを浴びながら」

 俺はシャワーを浴びに奥の浴室に入った。

 質素な作りなのだが、シャワーも浴槽もあり一般の家庭ならある程度普及していることが伺える。

 しかし、上下水道が完備されているという風ではない。水は建物の外にある井戸からくみ上げているようだ。


 元の世界でも井戸を使っている家庭は珍しくはないし、それを主体にしている国は多く違和感と言うものはない。

 総じて直接汲み上げる場合は、地下の浅い場所にひかれたパイプに比べれば圧力がないために水力が弱くなる傾向がある。


 この汲み上げ式のシャワーも同じく水力は弱く、冷たい水が僅かに噴き出すだけだった。

 それでもないよりは幾分もましだった。

 水しか出ないのは熱源がないからである。


 雨とは違い、空気中の不純物が含まれてないと仮定すれば衛生的な為水とはいえ十分であった。

 頭を冷やすには今は都合が良い。浴槽には昔ながらの薪を焚いてお湯を沸かすシステムが採用されていた。


 誰も沸かしていない為浴槽に水も張られていない。

 雨が止めば熱いお湯を沸かすのもいいかと思ったが、そこまで考えるには今はやることが多すぎる。

 少しはゆっくりと考える時間が欲しかった。


 そうこうしているうちに、日も暮れてしまっていた。

 一日が経つのは想像以上に早いのだと感じた。

 俺は浴室から出た。

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