第112話「さあ、追いかけて来るがいい」

 激しい雨で視界が悪い中では目に頼った索敵も音を頼りにすることもできない。そうなれば、見方によっては抽象的で確実性に欠けるのだが、超自然的な運に任せるように索敵をする方が都合が良い。明確な理由は相手に悟られることがないという事だ。


 狙ってしたことというのは相手からしてみれば教科書通りの模範解答でしかない。そうなればどうあがいたところでレールから外れることがないのだから、レールの外にいれば攻撃も当たらなければ見つけることもできない。


 しかし、何も考えず予測不可能な動きであれば可能性は格段に上がり相手にプレッシャーを与えることにもなる。あまりに見当外れならば見つけることも出来ずこちらの疲労が先にピークに達してしまう可能性もあるのだが、それは人海戦術で行くしかない。


 相手は推定2名だがこちらは3人なのだから人数では優っている。数の優位というものはよほどのことがない限りは覆らないものだ。


「二人とも、敵の目的がわからない以上手出し無用だ。だが、やられたら全力で叩き潰すまでだ。いけるか?」


「ボクは異存はないよ。ボクでも完全に場所がわからないなんてなかなかの手練れみたいだし、楽しめるならそれに乗っかるまでってことで」


「アマトもルナも掴めないのなら、私じゃどうしても見つけることは出来そうにないね。残念だけど、支援に徹するから二人は敵の存在にだけ集中して」


「よし、そうと決まれば行動開始だ」


「「了解」」


 俺の掛け声は雨にかき消されてほぼほぼ聞こえなくなっていたが二人の返事は聞こえてきた。

 気合が入るのを確かに感じて一度は足を運んだ、奈落へ繋がる谷へと会二人を連れて最短距離で向かう。

 もう対角線に診療所を入れる必要もないのだから、このルートが一番早い。


 後は奴らが罠にかかるかどうかだ。

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