第110話「直感を信じろ!!」
俺はアビリティではなく自分の直観を信じて何者かに狙われているという意識を念頭に置いて行動することにした。だからといって悟らせるわけにもいかない為別段行動そのものに緩急をつけるようなことはしない。
いたって自然に雨の中民家から民家へ移りながら周囲を見て回る。
物陰に隠れたり、民家の中へと姿を隠せたときにより遠くへと意識を向けて探りを入れることにする。 多くの場合敵から視認できるという事は逆にこちらからも視認できる可能性がある。裏を返せば相手から視認できないという事はこちらからも視認できないという事だ。
しかし、それらは正攻法に限る。向うの索敵範囲がこちらを上回っているのならこちらは方法を変えればいい。
俺はみんながいる診療所を気配のする方から対角線に入るように大きく裂けた谷へと歩いて行く。
もちろん真っ直ぐ進むのではなく周囲の民家を偵察も兼ねて立ち寄りながら進んでいく。
感じた気配が気のせいだったとしてもそうでなかったとしても、動作に差異が出てはいけない。
明確に何者かがいるのであれば俺を追ってくるだろう。
そのまま直線距離で距離を詰めれば診療所にも近づくこととなる。敵の戦力がわからない以上負傷している二人に近づけてしまうのは得策ではないのだろうがやはり情報はほしい。
今の俺達は首都へ向かうという目的こそあるが、それだけだ。実際に首都へ着いたときに再び情報を集めるというのは変わりはしない。
現状ここで足止めをしているのだからこれを活かしていきたい。
多少のリスクは致し方がないと思う。それでも診療所にはルナがいるのだから、この機会は大切にしていきたい。敵がいるのならばあいつが気づかないとは思えない。
診療所を避けるようならばそれでもいい。その場合は上手く撒くことができればこちらから打って出ることができる。
(敵何てものがいなければ俺は一人で妄想と戯れてる痛い奴ってことだよな。元の世界じゃそもそも追われることなんてないから、完全に頭のどうかしてる奴の行動……考えないようにしよう)
そもそも、少し外の空気でも吸いたくなったというだけで黙って出てきてしまった。あまり長居することがないようにしないといけない。
もうすでに30分は経ってしまっているが仕方がない。
診療所に戻るとしよう。
戻るときは大きく反時計回りに回り込んで帰路につくことにする。相手に戻ることを悟らせないようにすることが最重要なのだが、敵に未だ気づいていないと思わせるのが何よりも必要になってくる。
でなければ今までの行動が全て無意味になってしまうのだから。それと何より診療所に敢えて近づけさせた事が裏目に出るようなことにはしてはならなかった。
一瞬何かの反応がしたと感じたら一瞬でそれが消えた。この反応は俺を見ていた者ではない。恐らく何らかのモンスターが村に侵入したのだ。それを何者かが始末した。
放っておけばいい物を、対処しなければいけない理由があったのだろう。
それさわかれば何らかの糸口になることは明白なのだが、モンスターを一瞬で屠ることができるその能力は侮ることは出来ない。
思っている以上に厄介なものに目をつけられたのかもしれない。
診療所に戻ってくるのに結局1時間ほどかかった。
本の数分の息抜きがこれだから、なにが起こるか本当にわからない。一人で外を出歩くだけでリスクが付きまとうなんて物騒な世界なのだと改めて思うのだった。
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