第106話「悪魔とハーフエルフに挟まれて眠る」
しくはなく宿は見つけることは出来なかった。
ただ、診療所なのか薬師の住いなのか薬品の類が棚に並べらた建物を見つけたためひとまず雨宿りも兼ねて休ませてもらうことにした。
建物内には人の姿はなく、外の雨音を除けばいたって静かなものだ。住居として使用されていたのは明白なのだがそれにしては治療薬の類が目立つ。専門的な知識はないもののそれが薬だというのはわかる。
「ここは診療所か……スペラをベッドに寝かせてやってくれ」
「うん」
俺は背負ったディアナをベッドに寝かせる。隣ではスペラをゆっくりとユイナがベッドへと運んでいた。
このベッドも診療の際に使っていたのだろう。脇には治療具のようなものが複数置いたままになっている。診察用のベッドは二床だが、奥の移住スペースにも一床有る為合計で三床ということだ。
「もともと村に宿があったかどうかはこの際おいておいて、探したかぎり見つからなかった。止む負えない事情もあるんだからこのままこの診療所を使わせてもらう」
「いいんじゃない。もともと人間が怪我したり病気になったりしたら来るところあんでしょ? ちょうどいいよ」
「ちょうどいいっていうのはどうかと思うけど、私もルナの意見に賛成かな。幸いにも薬はあるし、使わせてもらうにも都合がいいし」
「医者がいればよかったんだが、これ以上贅沢も言ってられないからな。それじゃ二人が良くなるまではここを拠点にさせてもらう」
「それじゃ夜も遅くなってきたし、寝るとしますか~。ボクはもうくたくただよ」
「そうね。私も疲れちゃったかな」
「もう、こんな時間か……。二人は奥のベッドを使ってくれ。俺はその辺で横になっているからさ」
俺はそういうと住居の床に寝転がろうとしたが、ルナに腕を掴まれ無理やりベッドに押し倒された。
その力は強力で、試しに全力で逃げようと思いっきりh見込んだがピクリともしなかった。
「何やってるの!! 離れなさいっ!!」
ユイナはルナを引きはがそうとする。ユイナの力をもってしても引き離せない。やはり悪魔の潜在能力はとてつもなく強い。
「余ってるベッドは一つでしかないんだからボクとアマト君とで使えばいいんだよ」
「私だって……」
ユイナが顔を紅くしながらも呟く。
このままでは二人で寝ることになってしまう。と言うよりもユイナが床で寝るのは良心痛む。
(待てよ……。俺が二人を床にころがせておきたくないように二人も俺が床に転がってるはまずいとおもってるんじゃ……)
「ユイナ……まだ余裕があるから……」
「うん……」
ユナは相変わらず頬を染めてベッドに俺に背を向けて横になった。ルナも特に邪険にすることなくそのまま横になる。もう力はこもってはいなかった。即ち俺は拘束から解放されたのだ。
今更ながら雨で全身びしょ濡れになっていた事に気が付いた。
もともとコートのみを羽織っていたルナは不快さに、その一張羅さも脱ぎ捨て真っ裸になってしまった。
「おまっ!! ちょっ!?」
「別に減るもんじゃないんだし、そんなに気にしなくてもね」
ルナはこんな事を言うが、ユイナは改めてルナのスタイルの良さに絶句していた。
俺も今回ばかりは文句も言えなかった。濡れたままでは風邪をひくかもしれない。
仕方がないので、装備を一式外すとインナーのみとなった。唯一の元の世界から来ていたパジャマがあったのだが雨でぬれてしまっていた為このままとなってしまった。
ユイナも俺の行動に決心がついたのか、装備一式を脱ぐと上下おそろいの下着のみとなった。恥ずかしさのあまり掛布団をすぐに体に巻き付けてしまった。
以前も一度目にしているとはいえ恥じらいがあると、こちらも恥ずかしくなってしまう。どこかの裸族な人たちとは大違いだ。
その裸族はユイナの行動に触発されたのか顔を真っ赤にしている。どうやら今の自分の姿に徐々に何らかの違和感を抱きだしているようだ。
成長した者と思いたい。
結局狭いベッドに俺達三人はほとんど裸の状態で眠ることになったのだ。
だからと言って何かが起きる事など無いのだけど。
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