第14話 コーカス村攻防戦 奇襲

      ~二つ目の壁~


 アギト。

 ミアの手料理か、罰ゲームなのか? そんな事を思いながら移動する。


 アギトは橋を拠点に反時計回りで奇襲を仕掛ける事にする。このコーカス村は街道に近い。あと周りに草が少ない為、身を隠す事は難しい。その為、壁からかなりの距離をとりながら敵兵の背後に回り込む。


 見える範囲では食料を積んだ荷車はない。もし食料を積んだ荷車なら、もっと安全な後方に配置するからだ。という事はカーシー軍はやはり短期決戦の腹積もりだな。ならば明日の朝か、昼には撤退するはず。それまで持ち堪(こた)えればいい。


 食料を積んでいないとすると、壁の近くにある荷車は何だ? 消極法でいくなら矢・火矢、もしくはハシゴを載せている事になる。どうやら敵さんは、かなり手こずっている様だな。壁の中からは煙が見えるが、ボヤですんでいるようだ。


 ここまで確認すると、アギトは頭の中でどう対応するか考える。

 

 橋での攻防戦は、修理をする村人の安全を確保する為、敵兵を殲滅した。しかし、ここからは敵兵を殺してはダメだな。命に別状は無いが戦えない程度に怪我を与えていかないと。何故か? その利点は次の点に要約される。



 ① 怪我人が出れば、その兵を介護する為に1~2人の兵が必要になる。

 ② 戦いが終わった後は死体の片づけが大変だが、怪我人なら仲間が拠点に連れて帰る。

 ③ 長期戦の場合、生きていれば食料を消費する為、敵の台所事情が悪化する。



 今回に関して言えば、③は関係ない。この命に別状がない程度に怪我を与えるのが難しい。これはどちらかの力量がかなり勝(まさ)っていないと出来ないからだ。逆に殺す方が簡単だ。


 あと今回は荷車を破壊しない。怪我人を運んでもらう為に必要だから。しかし、火矢の供給を止める為に荷車は襲う。考えをまとめると…まず荷車を襲うか。



 早速、実行に移す。まず音をたてずに近付き、口をハンカチで塞ぐ。そして首にナイフを刺す。もう1人も同じように首を刺す。

 次に壁から矢を放っている村人に大きく手を振り、矢を放つの止めさせる。敵兵は背後にいるアギトに気付いていない。ナイフから国切丸に持ち変えると、そのまま敵の手足だけを斬り落とす。突然現れたアギトに、敵兵は軽いパニック状態に陥る。


 「な、何者だ?」


 ここを受け持つ隊長らしき奴が、アギトに問いかけてくる。


 「俺はこの村の住人だ。お前達が来たせいで今夜は徹夜だ。後で深夜のバイト代、払ってもらうからな!」


 「何を言っているか分からんが、村民なら敵だ。ならばここで死ね!」


 兵がアギトに向きを変えると、一斉に矢を放とうとする。その瞬間、壁の中から村人達が敵兵に矢を射かける。


 敵の小隊長。


 「この野郎、壁にも矢を放って!!」


 小隊長は壁に向かい怒号を放つと部下は再び壁に矢・火矢を放つ。小隊長は再びアギトに向き合うと矢を構えた。


 「この至近距離だ、外す事はない。お前にはもうなす術はない。謝るなら今のうちだぞ」


 「謝ったなら、許してくれるのか?」


 「いや、許さん!!」


 「何だ、ケチだな。ならこちらから行くぞ!」


 アギトは矢が放たれた瞬間、国切丸で矢を斬り落とし間合いを詰める。そのまま小隊長の左腕を肩の辺りから斬り落とす。小隊長は地面に膝を付くと、そのまま転げまわった。


 「い、痛い! 肩が痛い!! 燃えるように痛い!!!」


 「人の命を取りに来たんなら、自分の命も狙われるという事だ。こちらも生きる為には何でもやるんだ。少なくてもお前達が仕掛けてこなければ、お前は左腕を失う事はなかった! 命があるだけでも感謝するんだな!」


 アギトは捨て台詞を吐くとその場から離れ、再び敵の弓矢隊を背後から襲う。そして一応の決着をみると、次の壁に向かった。






    ~カーシーの焦り~


 見晴らしの良い場所にイスを置き、その上に腰をかけるカーシー。


 「何を、何をしているんだ!! 橋を破壊してからもう6時間が経とうとしておるのに! 何故こんなに遅いんだ! まだ村は落ちんのか?」


 苛立つカーシーは周りの者に当たり散らす。


 「カーシー様」


 アモスを睨み付けるカーシー。


 「何だ? アモス」


 「ネイル隊長から報告がございます。一つは例のアルトと申す者。もう一つはカロン殿。報告によりますと進ちょく率が進まないのは、アルトという者が邪魔をしているとの事。時間がかかっているのはそれが原因にございます」


 「カロン殿はどうしている?」


 「カロン殿とバディ殿は待機をしております」


 「何もしていないのか? 早くアルトに当たらせよ!」


 「カロン殿が言うには、あの者には『勝てない』と申しております」


 呆れるカーシー。


 「では、この場におる意味がないではないか?」


 「しかし、カロン殿はこうも言っておりました。『弱点を見つけた。それにはある条件が必要』だと」


 「何だ? その条件とは?」


 「それは、分かりません。直に聞かれては」


 「ならば直ぐ呼んで来い!」


 「かしこまりました!」


 伝令を出し、待つ事30分。カーシーの前に姿を現し膝まづくカロンとバディ。


 「カロン殿、奴に勝てないというのは本当か?」


 「はい、勝てません!」


 「しかし『弱点を見つけたが、ある条件が必要』と言っておったみたいだが、どう言う事かな?」


 聞き漏らさないように身体を乗り出す、カーシー、アモス、バディ。


 「はい、それは雨でございます」


 不思議に思うカーシー。


 「どういう事だ?」


 「あの者は、変わった足さばきで敵に近付き、斬り伏せておりました。一見あの刀の斬れ味や上半身のしなやかさに目が奪われがちですが、剣を扱う者として一番大事なのは腰と足さばきです。足元がしっかりしてないと上半身はブレ、あのような動きは出来ません」


 「分かったぞ! だからその足さばきが出来ない雨を待つのだな?」


 「そうでございます」


 「しかし、それではカロン殿や、バディ殿も同じではないのか?」


 「我々には雨の日でも動ける秘術があります。これはレニア地方の中でも我が流派にしか伝わっていない秘術でございますれば門外不出。派手さはありませんが、雨の中で戦う時には天と地ほどの差があります。ヌカルミにでもなればその差は歴然。故に雨の日まで待って欲しいのです」


 間を置くカーシー。


 「分かった。その件許そう」


 「ありがとうございます。」


 「しかし、それでは今回の襲撃はまたしても失敗なのか?」


 控えていたアモスが答える。


 「今、ネイル殿が対アルト用の策を張り巡らしておる様子。うまくいけばカロン殿の出番はなくなる可能性があります」


 「私の出番がないのなら、それに越した事はございません」


 カーシー。


 「では、そのアルトに対する策を今しばらく待つとするか。しかし、朝にはここを撤退するぞ。分かっておるだろうが、この周辺の封鎖は一時的なもんだ。長期滞在すればバカ兄貴や、スタンリー王国の正規軍が動き出す。第一食料を持って来ていない、よいな!」


 「しかと承りました」






     ~橋~


 橋を修理している村人がジーナに語りかける。


 「ジーナ、橋の修繕がすんだぞ。いつでも橋を閉鎖する事が出来る!」


 「ご苦労様でした。それでは早速、橋の閉鎖をお願いします」


 ミア。


 「待って姉さん、アギトがまだだよ! そんな事したらアギトが戻れなくなる!」

 

 「大丈夫よミア。なんせ彼はこの壁を跳躍で飛び越えるのよ。それに壁を修理するまでの時間を稼ぐ事が彼の第一の目的よ。目的を達したなら速やかに実行しないと彼が怒るわ!」

 

 「でも、疲れて飛べないかもしれないじゃないか!」


 「その時は助けに入るわ。アギト君を死なせたりなんかさせない。でも今は橋の閉鎖が先。彼が後顧の憂いなく思いっきり動ける為にも、この橋を閉鎖しなくちゃいけないの。分かるわねミア?」


 うなずくミア。


 「分かったよ、姉さん」


 「ではお願いします」


 ジーナが村人に頼むと、橋は約6時間ぶりにその役割を果たすのであった。






     ~四つ目の壁~


 アギトは三つ目の壁を同じ様に攻略すると、四つ目の壁に取り掛かった。


 流石にこちらの動きも読まれているかもな。さっき、橋が閉鎖する音が聞こえた。これで多少は余裕が出来る。さて、気を引き締めて最後の壁に向かうか。


 アギトが到着すると、列を正した兵が臨戦態勢を敷いていた。


 「待たせて悪かったな、皆」


 油断したわけではないが、待ち伏せを食らうとは。敵さん準備万端みたいだな。ここは腹をくくるか。


 まず第一陣の騎馬隊がアギトめがけ真っ直ぐに突っ込んで来る。ここは橋の上ではない。騎馬隊は縦横無尽に暴れまくる。


 ナンバ歩きでも対応が難しいな、ここはもう一つの歩法を使うか。




 膝抜き。簡単に言うとこの歩き方は、股関節の力を抜き、膝の力も抜く。そして倒れる方向に足を出し移動する。脚力を使わない重心移動なので足への負担が少なくスムーズに移動できる。



 アギトはある程度、騎馬を斬り伏せると、一挙に歩兵部隊まで間合いを詰める。ここまで来ると歩兵部隊が邪魔になり騎馬隊は手出しが出来ない。そして歩兵部隊に斬りかかろうとした瞬間、部隊は二つに別れその奥から弓矢隊が待ち構えていた。



 「しまった!!」


 アギトは咄嗟に身体を小さくし表面積を最小限にして右に飛びのく。しかし心臓に近い部分に1本、右太腿に1本刺さる。これにより今までみたいな動きが出来なくなった。徐々に血が流れ出す。



 微笑むネイル。

 

 「アルト、これで形勢逆転だな! これで貴様にとどめが刺せる。しかしお前は腕が立つ。正直、我が配下に欲しいくらいだ。どうだ、俺の配下にならんか? そうすれば助けてやる!」


 アギトはネイルの目を見据え返事をする。


 「断る!!」


 「予想通りの返事だな、実に惜しい! 仕方がない、殺れ!」


 動けないアギトに弓矢隊が照準を合わせる。矢が放たれるその瞬間、水堀の中から黒装束の集団が20人現れ弓矢隊に目潰しを投げつける。その中から、しなやかな身体つきの2人がアギトに駆け寄る。


 1人ずつアギトの両脇を支えると話しかけて来た。


 「アギト君、助けに来たわ! さぁ、早く捕まって!」


 「アギト、大丈夫か? これから村に帰るぞ!」


 アギト。


 「その声はジーナさんとミアか。すまない」

 2人は顔は隠しているので表情はわからないが、心配しているのが声で分かった。


 アギトの救出に成功すると退却するジーナ達。近くの壁には縄ハシゴが3本かけられていた。アギトは何とか自力で上りきると、そのまま倒れ込んで動けなくなる。体力も限界だったようだ。心配する2人の女性。



 アギトに駆けよるリリーナ。


 「兄様、兄様! 大丈夫ですか?……大丈夫じゃない! 矢が2本も! 早く治療を!」


 ジーナ。


 「リリーちゃん、寄合所はどんな状況?」


 「35あるマットは怪我した人で埋まってます! 死亡者はいません。軽傷は100人ぐらいはいます」


 「その程度ですんでるのは上出来ね! アギト君が頑張ったおかげね! けどそのアギト君を寝かせる場所がないのね?」


 「姉さん、うちに連れて帰ろう! そうすれば治療が出来るよ。多少遠いけど怪我人で溢れている寄合所よりいいよ」


 アギトは何とか意識を取り戻し、皆に話かける。


 「俺……なら、だ…大丈夫だ。まだ戦え……る」


 ミアが声を詰まらせながら反論する。


 「もう、いいから、もう……いいから、じっとしてて! あとはボク達がやるから。だから……だから…」


 ミアの泣き顔を見ると、再び意識を無くすアギト。

 そのやり取りを見ていたジーナは決断する。


 救出を手伝ってくれた村人にお願いをするジーナ。


 「悪いけど彼を、私の家まで運んでくださらないかしら?」


 村人。


 「彼はこの村の恩人だ、頼まれなくてもするに決まってるじゃないか!」


 ジーナ、ミア、リリーナは周りの男達に頭を下げる。近くに用意しておいた担架にアギトを乗せると、そのままジーナの家まで運ぶ。



 ミア。


 「姉さん、ソファーで寝かすとアギトの背中が痛いと思うんだ。ボクのベットを使っていいからキチンと寝かせてあげて!」


 リリーナとジーナが目を丸くする。


 「自分の部屋に他人を入れるの嫌うアナタがどうしたの?」


 「今はそんな事を言っている場合じゃないよ。早くアギトを治療しなくちゃ。アギトが……早く、早く!」


 「にそうね、すみません。彼を似階まで運んでください」


 村人。


 「分かった!」


 ミアの部屋に担ぎ込まれたアギトは、そのままベットに寝かされる。ベットは治療しやすいように部屋の中央に移動させてある。


 ジーナは運んでくれた村人に礼を言った。


 「どうも、ありがとうございました。ここからは私達で彼の治療を致します」


 「コーカス村は彼に大きな借りができた。こんな事で借りを返せるとは思っていないが、少しずつでも返していきたい。その為には彼に生きてもらわなくてはな。後の事は任せる、彼を死なせないでくれ」


 「そのつもりです。彼を、アギト君を絶対死なせません!!」


 「その言葉を聞いて安心した。では我々はこれで失礼する」






     ~治療~


 ジーナ。


 「ミア、リリーちゃん、まず彼の服を脱がせて。返り血と彼の血で身体にくっ付いているからゆっくり脱がしてね。それが済んだらやや熱いタオルで身体を拭いて」


 血糊で身体に癒着した服を脱がす為、ミアとリリーナがハサミで切っていく。リリーナはアギトの胸に付いている、ある物を見て思わず声をあげる。


 「な、なんで兄様、いえ、アギトさんにこのアザが?」


 ミア。


 「どうした、リリー?」


 ジーナ。


 「どうしたの、リリーちゃん?」


 リリーナが凝視していると、2人もアギトのアザを見る。

 ミア。


 「何だ、このアザは?」


 「まさか、アギト君にもあるの? あの紋章、いえ刻印が?」


 「え、ジーナさんにもあるんですか、あのアザが?」


 「ひょっとして、リリーちゃんにも?」


 「はい!」


 「ボクにはないけど…そんな事よりもアギトの治療が先だよ!」


 「そうね、ごめんなさい。リリーちゃんこの件は後回しよ!」


 「すみません、続けます」


 再びハサミで服を切るリリーナとミア。

 切り終わるミア。

 

 「ふぅ、次はズボンだね」


 今度はズボンに取り掛かる。それがすむとジーナは腹部に刺さった矢を抜く事から始めた。腹部と言っても心臓に近く、太腿より緊急性があるからだ。


 ジーナ。

 

 「矢は貫通していないわね。そのまま抜いては矢の返しのところで、かえって他の臓器を傷つけるかも…リリーちゃんアギト君にタオルを噛ませて。ミアはさっきの男性を呼んで来て。あとアギト君の手足をベットの端に縛りつけて」


 「どうするんだ姉さん?」


 「矢の刺さった周辺の肉の一部を矢と一緒に切り取るわ。多分、凄く暴れると思うの。そうなれば私達の力ではアギト君を抑え込めない。だって4メートルも跳躍する人よ、私達だけでは無理よ。少なくても男性の力が必要ね。それでも抑え込めるかどうか疑問だけど」

 

 「分かった、すぐに呼んで来る!」


 先程の男性が再び現れた。ジーナが頭を下げる。


 「すみません、力を貸してもらえませんか?」


 「何をすればいい、ジーナ?」


 「彼の手足を押さえつけて欲しいんです。これから矢を抜くのに周辺の肉も一部切り取るんで、暴れると思います。尋常でない力だと思んで気を付けてください」


 「分かった」


 「よろしくお願いします」


 アギトの手足をベットに縛りつけた後、屈強な男2人が更に力づくで手足を押さえつける。

 ジーナ。


 「では、始めます」


 ジーナは腹部に刺さった矢を抜く為、消毒した細いナイフで矢の周辺の肉ごと切り取る。何とか心臓を傷つけずに取り出す事に成功する。患部にリリーナとミアが痛みを柔らげるため回復魔法をかける。

 しかし、アギトはあまりの痛みのため強制的に意識を呼び戻される。押さえ付けている男達もその凄まじい力で壁に叩きつけられた。


 「何をする、お前ら!!」


 アギトは周りを睨(にら)みつける。

 ジーナがアギトの顔に手を添えて言葉を発する。


 「ごめんなさいアギト君。今アナタに刺さった矢を抜いてるの。痛いと思うけどあと一本よ。我慢して」


 アギトは冷静さを取り戻しジーナに返事をする。


 「すまなかったジーナさん、続けてくれ」


 胸の傷に回復魔法をかける為、ジーナとミアが協力をする。


 「いい、ミア。タイミングは私に合わせて」


 「分かってるよ、姉さん」



 2人とも回復魔法は初級だが、2人のタイミングが合えば上級回復魔法と同じ効果を生み出す。30分ぐらい経って腹部の傷が癒えると、今度は右太腿の矢を抜く。


 今度は矢が突き抜けているので、矢を二つに折る。太腿の前の部分で切り、残りは太腿の裏側に突き出てる矢の先から引っ張り抜く。今度は暴れずに耐え抜いた。


 2人の屈強な村人はそれを見届けて去って行く。再びジーナとミアがコンビネーション回復魔法をかける。このコンビネーションはタイミングが合わないとただの初級回復魔法で終わるそうだ。


 申し訳なさそうな顔をするジーナ。


 「ゴメンね、アギト君」


 「何が?」


 「魔法で傷は治せても、傷痕は治せないの。せっかく綺麗な肌なのに跡が残って」


 「別にかまわない。逆にカッコイイじゃないか、歴戦の戦士みたいで。それにジーナさんや、ミア、リリーに傷痕が残るのは困るが、俺はいい、男だからな」


 「そう言ってくれると、私も助かるわ」


 「それより、敵はどうなった? 傷も癒えたし、もう一回なら…」


 突然、アギトに抱き着き言葉を遮るミア。


 「もういいから、じっとしてて、アギト!」


 「兄様、まだ体力もそんなに回復していないでしょう? 無理はしないでください。何故か分かりませんが、今は攻撃が止まっています」


 アギト。


 「怪我人を増やしたのが効いたかな? リリー今、何時だ?」


 「確か朝4時くらいだと思います」


 「もう一回仕掛けてきてもおかしくはないな。その時は俺が出るからな」


 3人の女性は仕方なく頷く。


 ジーナ。

 

 「アギト君は一応大丈夫みたいだから、私達は一度寄合所に戻るわ。それとあとの事はまかせておいて。今は少しでもいいから身体を休ませて! じゃ、ミア、リリーちゃん、一度戻りましょう」


 「兄様、キチンと寝ててくださいね! 絶対ですからね! もし約束破ったら、一ヶ月無視しますから。いいですね!!」


 「わ、分かった」


 「ボクも行くけど、静かに寝てないとダメだぞ!」


 「ミア!」


 「どうした?」


 「ここお前の部屋だろう?」


 「そうだけど?」


 「俺が暴れたせいで、無茶苦茶になってすまない」


 「アギトが無事ならそれでいいよ。部屋はまた片付ければいいから」


 「そうか、ありがとうな。なら一度寝させてもらうよ。でも何かあったら必ず起こしてくれ! 頼む」


 「わかったよ!」


 3人は家を後にすると、そのまま寄合所に向かう。アギトは少しの間眠る事にした。




     AM4;00  カーシー軍 撤退まであと2時間

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る