第7話 夜の来訪者 その1
その夜、アギト達は村長に呼び出される。
アギトの顔を見て驚く村長。
「アギト殿どうしたんじゃ、その顔! 頬(ほほ)が腫れとるではないか?」
「いえ、別にたいした事はないです」
アギトの後ろでは、腕を組んで明後日の方向を向く不機嫌なミアの姿があった。
「夜分に呼び出して悪いが、あるお客人が来ての。リリーナ様に是非お会いしたいと申しておるのじゃ。今、客室で待ってもらっておる」
「そのお客とは?」
「スタンリー王国第二王子カーシー・ドミニク・スタンリー様の執事アモス・ブラウン殿とその護衛の方々じゃ」
「ほぉー、襲撃の容疑者の片方が来たか!」
「どうしたものかと悩んでおるのじゃ」
「と、言うと?」
「例の襲撃事件の事を考えると、リリーナ様を会わせるべきかどうか?」
アギトは少し考える。
「会いましょう! どうせこちらの事はバレてるんだ。だったら逆に正々堂々と会った方がいい。コソコソ逃げ回ってもいずれ分る。なら相手の顔を拝んでおくのもいい。いい機会だ」
「豪胆じゃの。よし分かった。で誰を会せる?」
「その前に相手は何人です?」
「アモス様と護衛の方が2人。そして荷物持ちの方が1人。合計4人じゃ」
怪訝(けげん)な顔をするアギト。
「荷物持ち?」
「どうした?」
「いえ、なにも」
リリーナ達の方に顔を向けるアギト。
「リリーを真ん中に据えて、俺が後ろで護衛を務める。ジーナさんは司会進行を。ミアはここで待機。何かあったら直ぐにリリーを安全な場所に誘導。皆これでいいかな?」
不満げなミア。
「何でアギトが仕切ってんだよ」
「なら、ミアが指示してくれ」
「う……ん」
「私はアギト君の案でいいわ」
「私も兄様の案でいいです」
「……ボクも一緒にアギトの横で護衛をしてもいいかな? ダメかなアギト?」
「分かった。皆といたかったんだな、ミア?」
うなずくミア。
村長に向きなおすアギト。
「では、何かあった時、安全な場所への誘導は村長の方でお願いします」
「心得た」
「ミアは服を着替えてくれ。流石にその恰好では失礼になる。あと飾りでいいから剣を腰に携(たずさ)えてくれ」
ミアは赤いビスチェにホットパンツ。流石にこれでは不味い。あとミアの武器は本来三節棍だ。しかし公式な会談ではないとはいえ三節棍はないだろう。因みにジーナさんの武器はムチだ。似合いすぎていて怖い。
女性達は服を着替えに行くと、アギトは村長に話しかける。
「使者の人達は何で来たんです?」
「徒歩じゃが」
「徒歩?」
「あぁ」
考え込むアギト。
こんな遅くに徒歩で?
「村長、使者の人達は泊まっていくと思います?」
「多分の。じゃから泊まれる様に準備しておる」
「どの部屋です?」
「寄合所の2階じゃが」
「2階のどこです?」
「客間の隣じゃ」
「そう……ありがとう村長」
アギトは着替えに戻る前に、その部屋に立ち寄る。そして急いで家に戻り着替えをすます。再び集まるアギト達。
女性陣を見回すアギト。
リリーはジーナさんから借りた白いドレスか。少し大きめだが大丈夫だな。ジーナさんは淡い紫のドレス。俺とミアはこの国の騎士が式典の時などに着用する白い礼装。俺の腰には国切丸。ミアは剣。そして軽い打ち合わせをする。
アギトは寄合所の2階で一番良い客間のドアに手をかける。
「よし、皆いいか? ドアを開けるぞ」
うなずく一同。
「さぁ、ご対面だ!」
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