ヒロイン会議

 テレビ局の特設スタジオ。カラフルな壁飾りに大きな円形テーブル。それを囲むようにカメラが何台も配置されている。テーブルの上に置かれた小型カメラ付きのマイクの前には8人の少女たちが椅子に座っている。12時の席に座っていたスーツ姿の少女が、スタッフからの開始の合図を横目で確認し、固定されていたマイクを片手に持って元気に口を開いた。

「みなさん、こんにちは!麦茶テレビの新番組、異世界たちの本音。司会を務めさせていただきます、通称、進行ちゃんです!」

客席から盛大な拍手が起こり、進行ちゃんは笑顔で彼らと出演者たちにお辞儀をした。

「まずこの番組について簡単に説明しましょう。」

説明用の映像を流し、進行ちゃんは原稿を読み始める。

「この番組は、色々な世界のヒーロー、ヒロインといった共通の要素を持つゲストさんたちを集めて、いくつかのテーマに沿ってお喋りしてもらおうというトーク番組です!世界が違えば趣向や習慣、日常風景も変わる。ゲストさん同士の世界間のギャップや自分たちの世界のことでぶっちゃけたい本音などを余すことなく全て丸々ゲストさんたちに語ってもらいます!どうぞ、最後までごゆるりとお付き合い下さいませ!」

スタジオの映像に戻り、進行ちゃんの説明が終わると再び拍手が起こった。掴みは上々と言わんばかりに進行ちゃんは左手にガッツポーズを作った。進行ちゃんは自分の席を立ち、時計回りに座っているゲストに近付いていく。

「さて、記念すべき第一回目となる今回は、物語の華とも言えるヒロインのみなさんに集まっていただきました!簡単ではありますが、個性的な7人のヒロインさんたちをお一人ずつ紹介させていただきます!」

まず、軽装の鎧を身に纏う少女の横に立つ。カメラが向けられた少女は、進行ちゃんに促されて兜を脱いで頭を振る。美しく輝く金色の髪がしなやかになびき、少女は透き通った青色の目をカメラに向けた。

「一人目は、自国の王子から求婚されるほどの美貌を持つ一方で、王国騎士団団長として数多の戦を勝ち抜いた百戦錬磨の武神、バトルファンタジー世界の女騎士さんです!」

女騎士さんは立ち上がり、カメラに向かって一礼する。客席からの拍手を受けてか、頬を赤くして照れていた。女騎士さんが座ったのを見届けて、次の席に向かう。席に着いていた少女は、ピンクのワンピースに栗色のおさげ髪が特徴の可愛らしい小学生ぐらいの女の子だった。横に立った進行ちゃんにあどけない笑顔を見せる。思わず心奪われた進行ちゃんは、しばらく彼女の顔から目が離せずにいたが、すぐに我に返り、慌てて説明を始めた。

「えー、続いては、お花も生き物もみんなお友達!太陽のように眩しい笑顔とキュートな容姿で見る人の心を癒す、絵本世界からきた絵本ちゃんです!」

「ぱちぱちぱちー!」

無邪気に拍手するお客さんを真似して自分も拍手をする絵本ちゃん。彼女の一つ一つの動作が進行ちゃんの母性をくすぐる。よだれを垂らしながら絵本ちゃんの一挙一動をぼーっと見ていると、見かねたスタッフが、机の下に潜り、進行ちゃんの足を叩いて進行を促した。絵本ちゃんの魅力から解放された進行ちゃんは、すぐに次の席に向かう。次の席では、机に片肘ついて進行ちゃんの様子を呆れて見ていた黒髪ツインテールで夏服制服を着た少女が、進行ちゃんをジト目で睨んでいた。頭を掻いて苦笑いしながら軽く会釈して、進行ちゃんは説明を始めた。

「えへぇと、公立夕涼高校に通い、幼馴染君やクラスメート、部活の仲間たちと青春を謳歌するツンデレ系女子高生、ツンデレJKちゃんです!」

「普通に、JKちゃん、でいいじゃない。私ツンデレじゃないし。」

頬を膨らませて抗議するツンデレJKちゃんを宥めて、進行ちゃんは次の席へ向かった。次の席には、金髪のロングヘアーにスーツ姿で眼鏡を掛けた大人の女性が背筋を伸ばして行儀よく座っていた。少女と言うには無理があるかもしれないが、「女性の心はいつまでも少女」というスタッフの謎の格言を思い出し、進行ちゃんは敢えて言及しなかった。

「みなさん一度はお世話になるであろう英語の教科書からの電撃参戦!義務教育界のビーナス、英語先生です!」

「Hell-o!Your low sick nail!」

英語で会話をすることになると思っていた進行ちゃんだったが、英語先生の挨拶を聞いてほっと胸を撫で下ろした。最初のHellとoを区切ったのはジョークだと思うが、後半部分は「よろしくね」とちゃんと聞こえたので多分大丈夫だろう。客席に投げキッスを振り撒く英語先生を席に着かせて、次の席に向かう。次の席の少女は、Hカップはあるだろうか、豊満な胸にセクシーな体のライン、むちむちのヒップでこれまでの少女達と比べると場違いに感じる紺色のビキニを身に着けた艶っぽい少女だった。白銀の髪を後ろに束ねてポニーテールにして、不機嫌そうに足をばたつかせている。

「スライムからオーク、盗賊団まで幅広い種族を相手に色々な意味で戦う、オスの匂いは香水代わり、陵辱系世界出身の18禁さんです!」

「その説明ってどうなのよ…。」

進行ちゃんに言われて意識したのか、自分の体の匂いを確認し、どこからか香水を取り出して吹きかける。18禁さんに睨まれた進行ちゃんは、いそいそと次の席に向かった。次の席の少女とは少し距離を置いて立つ進行ちゃん。席に着いていた少女は、鬼の面を被ってボサボサの黒い長髪、体には全身にボロボロの包帯が巻かれていて、破れて見えている部分には口やら目やらが生えていた。

「えっと…そ、遭遇者の生存率0パーセント、襲う側なのにヒロインとはこれ如何に。心霊、グロテスク、スプラッターなんでもござれのガチホラー勢、ガチ怖さんです!なお、ガチ怖さんは口が大変なことになっていて言葉を発せないらしいので、手元のフリップボードで筆談していただきます!」

震えながらチラッとガチ怖さんを横目で見る進行ちゃん。すると、ガチ怖さんは、辺りをキョロキョロ見回して、何かを探しているようだった。不思議に思った進行ちゃんは、恐る恐る声を掛けることにした。

「あ、あのー…。ガチ怖さん…?どうされました?」

頭を360度回転させて辺りを探しながらボードに何かを書き始めるガチ怖さん。書き終わったボードを覗くと、進行ちゃんは背筋が凍った。

■                                    ■

だ      か      て

  れ         み                る

       う             せ 

じ          き ょ         つ     め

  ょ             う            い

■                                    ■

意味が通るようにつなげると、「誰か見てる 状況説明」。初めはスタッフを指しているのだろうと思っていたが、ガチ怖さんは全く関係ない場所や中空ばかりを気にしている。青ざめながら進行ちゃんも辺りを注意深く見渡していると、不意に足を掴まれた。

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーー!!!!」

涙目で思い切り叫ぶ進行ちゃんにスタッフが机の下から顔を出して落ち着かせる。足を掴んだのは、進行を促そうとしていたスタッフだった。進行ちゃんは心を落ち着かせてカメラに目を向けて笑顔を作る。

「えっと、あはは。し、失礼しました!ガチホラー出身の方ということもあり、私まで雰囲気に飲まれてしまいました。では、次の方の紹介に移ります!」

そそくさと逃げるように進行ちゃんは次の席に向かった。次の席の少女は、長い白髪に血の気のない白い肌、三角頭巾を頭につけた全身死装束で足はモヤがかかったようになくなっている一般的に幽霊と認識できるような姿をしていた。ガチ怖さんとは違い、基本的に生きた少女のような雰囲気のため、進行ちゃんは緊張することなく彼女の隣に並んだ。

「最後は、七不思議の力で学校に閉じ込められた少年を助けるために、彼に助言を与えながら出口へと導く、幽霊ナビゲーター。世間話もそつなくこなし、少年君とも絶賛イチャイチャ中な幽霊少女。微ホラー世界のヒロイン、幽霊ちゃんです!」

「はいは~い。」

控えめに笑顔を作り、手をひらひらさせて幽霊ちゃんは拍手に応えた。全員の紹介が終わり、進行ちゃんは席に戻る。

「それでは、ゲストのみなさんの紹介をさせていただいたところで、早速最初のテーマに参りましょう!」

進行ちゃんの言葉に続くように、進行ちゃんの後ろ側にテーマ一覧が用意される。3つある内の一番上のテーマをスタッフがめくり始めた。


☆席早見☆

                 進行ちゃん


            幽霊ちゃん     女騎士さん


            ガチ怖さん     絵本ちゃん


            18禁さん      ツンデレJKちゃん


                 英語先生


☆☆☆☆☆


「初めのテーマは、幸せなとき!みなさんが各々の世界で幸せを感じる場面と言うのを語ってもらっちゃいましょう!!」

一つのテーマにつき3人に話を聞くというのがノルマであるため、進行ちゃんは出演者たちを軽く見回して3人を選ぶ。まず、番組進行的に事故を起こしやすそうなガチ怖さんを指名することにした。

「では、まずは幸せとは程遠い環境に居るであろう、ガチ怖さんからお願いします!」

出演者たちの視線がガチ怖さんに向けられる。しかし、当の本人は紹介のときと同じように首を忙しなく動かし何かを探し続けていた。

「あ、あの、ガチ怖さん…?」

進行ちゃんの呼びかけに体がピクリと反応する。手元のボードに何かを書き始め、進行ちゃんに見えるように掲げた。

■                                    ■

か      しこ         よ

  ん      う             まれ

    じ

ょ                           て

   う                             不快

■                                    ■

「感情、思考、読まれて、不快…?えっと…??」

進行ちゃんが困惑していると、ガチ怖さんは面の口の部分からなにやら黒いモヤを吐き出した。モヤはスタジオの上部に留まり、不気味な赤い目がモヤの中で蠢いていた。進行ちゃんは彼女の指名を諦めることにした。

「あ、はは。えっと…どうやらお取り込み中のようなので、英語先生からお願いします!」

気を取り直して英語先生に声を掛けると、先生はウインクして答えてくれた。

「Ok ! Tom is younger than my aunt.」

出演者たちがざわつく。英語先生の意図している事が分からない様子だった。周りの様子に気付いて、英語先生は口を手で覆い、顔を赤くして再び話し始めた。

「Sorry ! Two eat ray boon guard suit bet she mat !」

んふふふふ、と照れくさそうに笑う先生。他の出演者に言葉が通じてない様子だったのでスタッフが用意した翻訳ボードに「つい例文がすべってしまった」と翻訳が綴られた。

「she our say dad town taught key were curry car rat caught cool hat cool sun letter talk key death nail !(幸せだったときは、彼から告白された時ですね!)」

頬に手を添えて恥ずかしそうに首を横に振る英語先生。恋話に食いついたのか、幽霊ちゃんが目を輝かせて先生に質問する。

「先生、告白の時のシチュエーションはどんな感じでしたか!?」

幽霊ちゃんに感化されてか、ツンデレJKちゃんもそれに続く。

「ついでに告白の台詞とか聞いてみたいかも。」

もったいぶるようにしばらく口に手を置いていた先生だったが、進行ちゃんに促されて、はにかみながら口を開いた。

「Are rate were search move eat full you know art circle dad town .(あれは寒い冬の朝だった。) car ray were what earn she no cart term own dark it take ...So low sallow art tact turn kind meet saw silk god non meat tie now !...to take ! Foooooo ! ! ! (彼は私の肩を抱いて…そろそろ温かい味噌汁が飲みたいな!…って!ふぅぅぅぅぅ!!!)」

「味噌汁とか定番だけど言われたいなぁ~。」

「肩を抱くとかやばそう。」

英語先生は恍惚と思い出に浸り、ツンデレJKちゃんと幽霊ちゃんは二人で盛り上がっていた。画面外の進行ちゃんのもとにスタッフが駆け寄り、耳打ちをする。スタッフが戻っていってから進行ちゃんは3番目のテーマを剥がした。

「みなさんちょっとよろしいですかー?えーと、本来ならば3番目のテーマとしていたものが、恋愛、だったのですが、類似テーマである上、英語先生の話題にも出てきたので、幸せなときもしくは恋愛をテーマとして進めていきたいと思います!では、続きをどうぞ!」

テーマは3つ用意されていたものの、番組放送中に使われるのは2つだけ、という方針だったため、この変更による番組への支障は一切なかった。再開の言葉を聞いて、18禁さんが眉をひそめて口を挟んだ。

「つーかさ、その手の口説き文句って、女の給仕は当たり前、みたいな固定観念入っちゃってるよね。私そういうの逆にイラッとするなぁ。」

「この程度でイライラしてたら、今頃ストレス過剰で寝込んでますよ~。この場合、味噌汁を作る=毎日一緒に朝御飯を食べる=結婚して同棲、ぐらいのニュアンスじゃないですかね~?」

幽霊ちゃんの反論に、まだ何か言いたそうにしていた18禁さんだったが、場の雰囲気が悪くなりそうだったので、口を噤んだ。ホッと胸を撫で下ろした進行ちゃんは、話を切らさないようにツンデレJKちゃんに話題を振る。

「告白の台詞も受け止め方も人それぞれってことでしょうかね。ツンデレJKちゃんは、英語先生の話に食いついていたみたいですが、ご自身が告白されたりとかありますか?」

「は!?な、何で私に聞くの!?べ、別にそういうのないから!…あいつから欲しいぐらいよ…。」

後半、小声でポツリと呟いた一言を幽霊ちゃんは聞き逃さなかった。目を輝かせながらツンデレJKちゃんを見るその瞳に、墓穴を掘ったと気付いたツンデレJKちゃんは、慌てて幽霊ちゃんから目を逸らした。しかし、幽霊ちゃんは逃げを許さない。

「あいつって、誰ですか~?も・し・か・し・て、紹介にあった幼馴染君ですか~?」

「ななななな!?そそ、そ、そんなわけなな、な、ないでしょう!!な、なんで私があいつのことを!!!」

熟れたトマトのように顔を真っ赤にして、ツンデレJKちゃんはあたふたしている。その様子を見て、幽霊ちゃんは意地悪そうにケタケタ笑っていた。二人のやり取りを横に、女騎士さんが何かを思い出しながら笑みをこぼした。

「幼馴染か。やはり、一番身近な存在が、一番愛しい人物なのだろうか。」

「おねーさんもおなななみさんとなかよしさんなの?」

絵本ちゃんが折り紙を折りながら女騎士さんに聞く。絵本ちゃんの様子に、進行ちゃんは再び釘付けになっていた。女騎士さんは、絵本ちゃんに優しく微笑み答える。

「そうだな。貴族や自他国の王子からも求婚されたが、縁談は全て断った。ふと気付くと、幼少時代を共に過ごしたあいつの顔がふと浮かぶんだ。」

今度は寂しそうに微笑む女騎士さん。絵本ちゃんは話がよく分かっていないようで足をパタパタさせながら作った蝶で遊んでいた。女騎士さんの話を聞いていた18禁さんが舌打ちする。

「せっかくの玉の輿縁談なのにもったいない。幼馴染なんて思っているほどの男じゃないわ。権力や暴力に負けて約束なんてどこ吹く風。久々に再会したと思ったら他の女を家に連れ込んで…。」

18禁さんは再び大きく舌打ちをする。彼女の言葉に納得しかねる女騎士さんは身を乗り出して反論した。

「お前の幼馴染がそうであろうと、少なくとも私の幼馴染はそんな軽い男ではない!信念を持ち、己の言葉に責任を持って最後までそれを完遂する。あいつはそういう男だ!」

幽霊ちゃんの相手をしながら話を耳にしていたツンデレJKちゃんも口を挟む。

「そうよ!そもそもあんた、幼馴染を信用してないからそういうことが言えるんじゃないの!?信頼関係が薄かったからそうやって裏切られて…」

「彼に告白した翌日、村をオークが襲撃。彼は私を守ってくれると信じていた。」

ツンデレJKちゃんの言葉を遮り、18禁さんが俯いて話し始める。

「私は彼との愛を疑わなかった。彼に手を引かれながら、村からの脱出を試みた。でも、後ちょっとのところでオークに囲まれて…そしたら彼、どうしたと思う?」

18禁さんが顔を上げて笑う。その目には光が灯っていなかった。

「私をオークの方に突き飛ばして、一人で村から逃げていったのよ?」

一同、沈黙。ツンデレJKちゃんも女騎士さんも悲しい顔をしながら18禁さんの話を聞いていた。

「それからオークに陵辱されながらも私は彼のことをまだ信じていた。きっと助けを呼びに行ったんだろうってね。でも、半年経っても、一年経っても、結局彼は現れなかった。オークの信頼を得てから隙を見てなんとか逃げ出した私は、王都まで走った。王都に着いて、最初に目にしたのが、逃げ出した彼が経営する風俗店だった。店の入り口に立っていた彼は楽しそうに妻であろう女と女が抱く子供に笑顔を見せていたわ。」

どんよりとしたオーラを背負いながら、小さく笑い声を漏らし続ける18禁さん。触れてはならない心の闇が番組の印象を悪くすると感じ、進行ちゃんは次のテーマに移ることにした。


「えー、まだまだ話題はありそうですが、そろそろ次のテーマに移ろうかと思います!次のテーマは…こちら!」

「つらかったこと」と書かれたテーマが映し出される。さっきのまんまつらかったことじゃん、と幽霊ちゃんの笑い声を聞きながら、進行ちゃんはテーマを考えたスタッフの浅はかさを恨んだ。

「えっと…あはは、さ、先程18禁さんの悲しいエピソードを頂いたばかりですが、他の方にも何かお辛い経験があったかと思います。その辺をお聞きしていきましょう!」

進行ちゃんが真っ先に目を向けたのは、絵本ちゃんだった。18禁さんからの流れを正常に戻してくれそうなのは、この地に舞い降りた天使しかいない、と鼻息を噴きながら絵本ちゃんに笑顔を向けた。

「まずはつらいこととは無縁に見える絵本ちゃん、いかがですか?」

絵本ちゃんは、用意してもらったボードにお絵描きしながら満面の笑みを進行ちゃんに向けた。進行ちゃんの鼻から赤い液体が滴り落ちていく。

「んーとね、おはなさんがね、あめざーざーだとかなしいんだって。おはなさんがしょんぼりだとわたしもしょんぼりだよー。」

曇り空の下で泣き続ける花の絵を描きながら、絵本ちゃんは体を左右に揺すっていた。悲しい出来事も癒しに変えてくれる彼女の一つ一つの仕草に、進行ちゃんは再び我を忘れていた。進行ちゃんを余所に女騎士さんが口を開く。

「花といえば、私は花のモンスターの蔓で動きを封じられ、私を人質に仲間たちが傷つけられた時が一番辛かったな。植物モンスターの割には卑劣な相手だった。」

当時を思い出しながら頷く女騎士さんの言葉に、再びダークサイドヒロインが口を開く。

「その程度で一番辛いとか片腹痛いわ!あなたは植物モンスターの本当の恐怖を知らない!」

両手で机をドンと叩き、18禁さんが立ち上がった。彼女の目は先程までとは一転して、怒りに燃えたぎっていた。

「植物モンスターはね、3種類の体液を有しているのよ!普通の消化液、服だけを溶かす溶解液、そして女を発情させる媚薬液!このうち後ろ二つの液は女の子にしか効かないというご都合主義の謎仕様!身動きが取れないのをいいことに、裸にして発情させて嬲って苗床にして…」

握り拳を震わせながら18禁さんは悔しそうに目を瞑る。席を立って彼女の側に寄っていった英語先生は、背中越しに興奮する彼女を抱きしめて落ち着かせた。18禁さんの怒声に我に返った進行ちゃんは、すぐに話題を振りn

「ぴぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃががががーーーーーーーーーー!!!!」

「ちょっ!?が、ガチ怖…さん?い、いきなり叫んでど、どうかしましたか…?」

「あ、ガチ怖さんね~、探していたものを捕まえた、って喜んでいるよ?」

「ゆ、幽霊ちゃん、彼女の言葉が分かるんですか!?」

「そりゃあいちお、人ならざるもの同士ですし~。」

「だったら初めから通訳してくださいよ!…あ、スタッフさん。…え?もう終わり?は、早くないですか!?…え?あ、分かりました。」

「Mow own worry death car ?(もう終わりですか?)」

「そうみたい…ね。」

「ええと、この後の野球中継が早めに始まることになりました。選手たちの試合前独占インタビューをお送りするので、番組はそのままで!それでは、異世界たちの本音、次回もどうぞよろしくお願いいたします!それでは、さようなら!!」


                            異世界たちの本音 終

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