第2話 彼女(アリア・バレット)の正体

パープル・ミスト火災から数日、爽弥は何事もなく平和に学校生活を過ごしていた。

クラスメイトと話をしたり、食堂で昼飯を食べたり、放課後どこかに遊びに行ったり・・・・・。


――ジー・・・・・・。


「だ、誰だ!」

ただ、どこからともなく感じる、誰かの視線さえ無ければの話だが。


       ◇


「ったく誰なんだよー」

「どうかしたのか?」

爽弥は、幸助と二人で昼飯を食べるため食堂に向かっていた。

「いやさ。ここ最近、誰かに見られてるような気がしてさ」

「考え過ぎなだけじゃね?」

「そうなのかなー」

しかし、それは単なる考え過ぎではなかった。


「(爽弥様ぁ、どこへ行かれるというのですか!)」


柱の影から見つめる視線。それは、アリア・バレットだった。

「あんた、そこで何してんの?」

アリアに声をかけたのは、担任の鹿馬だった。

突然の声に、意識は爽弥から現実に戻る。

振り返ると、鹿馬と目が合ったアリア。

「い、いえいえいえいえいえ! ななななななな何でもないんですのよ!(馬鹿ですの!? 今、このタイミングで声をかけるなんて、馬鹿ですの!?)」

疾風の如く、アリアは走り去って行った。

一体、何をそんなに焦っているのかと、鹿馬は首を傾げた。

「ま、いいか」



「ハァ、ハァ、ハァ。最近は、走ることが、多いですわねぇ。ハァ、ハァ・・・」

アリアは、何も考えずに走り続けていたところ、屋上に出る扉の前にいた。

「この学校、屋上なんてありましたの?」

アリアは、引き戸を開ける。次の瞬間、襲いかかってきたのは他でもない「殺気」だった。



「なぁ、君。これから、ここを『燃やす』って言ったら...、どうする?」



落下防止フェンスに座る、若い男。

その男が開いた手に灯る、赤々と燃える火。

「なっ、能力保持者ホルダー!」

「そう。君と同じ、能力者」

しかし、アリアは臆することは無かった。

何故なら、彼女もまた能力者であるからだ。

「あなた一人くらい、私でも!」



「だぁれが一人なんて言ったよ」



真上から覗く視線。それは、三つ。

筋肉質な体の大男に、スタイル抜群な好青年、袴を着た侍男。

この場には、計四人の敵がいるということだった。

「チッ、見られちまったじゃねぇか。どうすんだよ」

「それは仕方のないことです。が、しかし。生かしておいても、こちらに得はありませんし」

「ならば、先に消すまでですなぁ!」

アリアは身構える。

「あなたたち何者ですの! まとめてかかってくればいいですわ! 私が全て相手いたしますの!」



接触拒否アンタッチャブル!』


       ◇


「ズドーーーーン!」


突然、大きな爆音と共に校舎が揺れる。

「なんだなんだ!?」

「地震!?」

「おい! 外へ、校庭へ逃げろ!」

次々と避難しようとする生徒。

その様子を、屋上にいる敵は見逃さなかった。


「ゴミは焼却処分なんだから、黙ってゴミ箱の中にいろよ」


炎使いの男は、炎を撃ち込むように地面めがけて放つ。

それによってできた、隙間の無い炎の壁によって生徒達は逃げ道を絶たれた。

「こ、これじゃ逃げれない!」

次に、上を見上げた生徒達が目にしたのは、

「あれは、なんなの!?」

「化け物か!?」

校舎の屋上に立つ、燃える『人』だった。


       ◇


「なんなんだぁ? こいつの能力は」

「誰も近づけないとは・・・・・・」

「攻撃すらも反れるんですなぁ」


アリアは、炎人間以外の三人を相手に戦っていた。

「み、見くびられては困りますわねぇ」

今、いくつかの攻撃を見て気付いたこと。

それは、彼らが火・水・木・電気を操る能力者であるということまでは確認できた。

しかし、敵の正体が分かったところで対処法は無い。

「仕方ありませぬなぁ、突破できないのであるならば、強行突破するのみでありまするぞ!」


神槌しんついっっっっ!!!!』


侍男の上空には、巨大な木の丸太が現れた。

そんなものを落とそうと言うのか。

そうなれば、校舎もろとも跡形も無く消し飛ぶであろう。

「う、嘘ですわ!? あんなもの、止められるわけないじゃないですの!」



「止められぬのなら、死ぬまでよ」



侍男の声に、先程まで無かった、否、感じられなかった殺意があった。

「ハァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!! 死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!」

振り落とされた巨大な丸太。

迫り来るその恐怖に為す術は無く。ただ、全力で防ぐしかなかった。

「く、来るがいいですわ! 接触拒否アンタッチャブル 拒絶リジェクション!」

「ゴォォォォ!」と風を切る凄まじい音と迫力で槌は迫ってくる。

攻撃が当たるまでのたった数秒間が静寂に包まれ、アリアには長く感じられた。

巨大な槌の移動、敵の動き、瞬きの速さ――目に見える全てが、手に取るように分かった。

それ故に得る、『確信』。

アリアは覚悟を決めた。

目を閉じ、迫り来る槌に立ち向かう覚悟を。


――私、ここで死ぬかもしれませんが、やるだけやりますわ!


突如、遅くなっていた時間の速さが元に戻る。

すると、息を潜めていた音が静寂の中から徐々に現れ出す。


「終わりですぞおおおおお!!!」


――ガシャーン!


そして、巨大な槌はアリアの能力効果範囲の壁を破壊する。

その瞬間、周囲を土煙と衝撃波が襲う。

「邪魔者は消した」、そう侍男が確信しようと顔を上げた時だった。



「・・・・・・どういうことですかな、これは!?」



明らかにおかしかった。

攻撃は確実に当てたのにも関わらず、校舎へのダメージはゼロ。

そしてもう一つ・・・・・・。


「・・・・・・」

「何が、起きたぁ・・・」

「彼女がやったのかい?」


「私の、私の『神槌』が、消えたですとぉ!? んな馬鹿な事があるものかぁ!」


そう、巨大な槌が瞬く間に消滅したのだ。

一体、誰の仕業なのか。彼女とは考えにくい、ならば、他の誰かが土煙の向こうにいるということになる。

徐々に晴れていく土煙。

すると、向こうに見えるたのは、巨大な槌を消したしょうたいだった。



「君達さぁ、うちの部下に攻撃当てようなんざ、ふざけた真似はやめなよ?」



「貴様ぁ、何者だァ!」

突如現れた正体不明の新たな敵に、侍男達は身構える。



「何者かって? これを見せれば、あらかた見当はつくよねぇ?」



土煙の中から現れたのは、黒いスーツの女性だった。

その女性は、アリアを抱えつつ襟についたいちいの葉の形をしたバッジを見せて叫ぶ。

「私はァ、公安局執行機関の者だぁ! 貴様等を捕まえに来たぞぉ! よろしくぅぅぅぅぅ!」

男達には、先程までの余裕の表情は無く、苦い顔を浮かべる。

「面倒なのが来たな」

「面倒? そうだねー、君達からしたら面倒くさいかもね」

侍男は振り返り、炎人間を見る。

「兄者! どうしまするか!」

「どうするもなにも、この場に単独でいるってことはBランク以上の執行官だ。そんなのを相手する時間は無い」

「仕方ないですね」

「チィ、撤退かぁ」

炎人間は、手に火を灯してその腕を一振りした。

すると、公安局の女と炎人間達との間に炎の壁ができた。

「なっ、逃げるのか!」

炎人間はニヤリと笑う。

「逃げる? まあ、そうなるな。これはリーダーの戯言の一つ。これを完遂する必要性は微塵も無い。ならば、死を考えてまで貴様と交戦するつもりは無い」

二人が向き合った瞬間、両者の殺気がぶつかり合い空間を揺らす。


「あ、そう♪ 賢明な判断だ」

「次に会う時は、消し炭にする」


炎人間達は姿を消した。


       ◇


「う、うぅ...」

アリアは目を覚ました。

目に見えるのは天井、左を向けば白いカーテンと風に揺れて時折見える窓。

どうやらここは、学校の保健室のようだ。

寝返りを打とうと、右を見たときだった。

「ッ――!」

大きい桃のような尻が鎮座していた。

「お! やっと起きたか!」

その正体は、炎人間達を退けた公安局執行機関の女だった。

由奈ゆなさん!」

「おおお! 覚えていてくれたのか!」

「それは覚えていますわ、私の恩師でありますから!」


――タタタタタタタタ・・・・・・。


廊下を誰か、いや複数の人間が走る音が聞こえる。

それは、こちらへ向かってきて、扉の前で止まった。

「あ、アリア、さん? お、同じクラスの空門爽弥です。は、入ってもいいですか?」


――・・・・・・?


どういうわけか、入室の為に爽弥は許可を得ようとしている。


――何をそんなに迷うことがあるのか。ここは保健室、許可を得ずとも無断で入ってくればいいではないか。


アリアはそう、心の中で思っていた。

「あっ」

由奈が何かを思い出したように、扉へ向かっていく。

「ごめんごめん、入っていいよー」

由奈が扉を開けると、爽弥と綾音が入ってきた。

そんな中、扉の表に掛かっていた何か板の様なものを由奈が外している。

そこに書かれていた文字が目に入った瞬間、アリアは青ざめた。

「な、何なんですのそれはァ!?」

そこに書かれていた文字とは、



『現在お着替え中♥ 入ったら殺しますわぁ♥


                アリア・バレット』



「な、ななななななななななな何ですのぉぉぉぉぉぉぉそれぇぇぇぇ!」

アリアは、その板を奪い取ろうとベッドから出ようとした時、ベッドから転げ落ちた。

「痛っ!」

「いやー、誰も入って来ないようにするには、これが一番かなーって。てか大丈夫?」

由奈は舌を出し、片目をつぶる。

「『てへペロ♥』、じゃないんですのよぉおおお!」

由奈は、「まあまあ」とアリアを宥める。

しかし、アリアにはとてもショックだったらしく、涙を流してベッドに潜った。


       ◇


「それで、僕らを呼んで話って何ですか?」

爽弥達は、アリアを探して保健室にきたのではなかったのだった。

「それじゃー、自己紹介からいこうか! 私は、公安局執行機関執行官の巾兼はばかね由奈だ! よろしく!」

「よろしくお願いします」

「ど、どうも・・・・・・」


――執行機関。

公安局四大機関の一つで、主な任務は、裁判機関が課した受刑者の刑の執行。

他には、監視、暗殺等々を行う暗躍機関である。


由奈の力強さに気圧される爽弥と綾音。

しかし、その明るい雰囲気もここまでと言うように、由奈は落ち着き、静かになる。

「さ、本題に入ろうか。今、君らと話している理由、分かる?」

爽弥と綾音は顔を見合わせるも、見当がつかなかった。

由奈には、首を横に振って答える。

「ま、本来なら知る必要が無いから、知らないのが当たり前。だけど、事態はそんな柔なことを言っている場合じゃなくなった。だから、単刀直入に言わせてもらう」



「君を『監視している』、ということを」



全くもって話が見えない。

何故、自分が監視されなくてはならないのか、見に覚えがない。

法を、規定を、ルールを破った――そんな覚えなど万に一つも無かった。

「別に、法を犯した訳じゃない。ただ、裁判機関によって『危険因子』として判断されたっていうだけ。」

「危険、因子!?」

「そう、危険因子。本来ならば、適切な措置に基づいて君を処分するんだけど、今回は特例でね。見に覚えが無いとは言わせない、今までに何度かあったはずだ。常識を逸脱した、普通では考えられない『超常現象』が」


爽弥はここ数日間を振り返る。



――獣男を負傷させるほどの力。


――強盗の持ってた銃の消滅。


――異世界人の出現。



「まだ、記憶に新しいだろう。こういう事象は君の周辺でのみ多く発生している。この事を察知した裁判機関が、君を公安局の監視下に置くと決めた。まずこれが、君を監視する一つ目の理由。そしてもう一つは、君が狙われているということ」

「狙われている!? 僕が!?」

「ああ。詳細は知らされていないが、君を狙う組織がいるとのことだ。君の安全確保のための監視が一つ。計二つの理由によって君を監視している」

話の始めから、内容全てを把握できたわけじゃない。

けど、事の重大さはなんとなくではあるものの大体掴んだ。

まだ、いくらか疑問は残るが、聞いても期待できる答えは帰ってこないであろう。


――キーンコーンカーンコーン♪


下校のチャイムが鳴る。

「もうこんな時間か。まだ話したいことがあったんだけどな、仕方ない。ところで、明日って暇?」

「はい、特に予定は無いですけど」

「私も」

「それなら明日、雨谷駅東口のサンバースコーヒーに10時ね、それじゃ」

由奈は、アリアを抱えて帰っていった。


       ◇


――翌日

「やぁ、待ったかい?」

昨日の帰るときと同じように、由奈はアリアを抱えて待ち合わせ場所に現れた。

「アリアは、寝てるんですか?」

「いや、違うよ♪」

「違いますわ、寝てなんかいませんわ!」

アリアは、垂れていた頭を上げて反論した。

「アリアは由奈の玩具おもちゃだから♪」

「私は玩具おもちゃじゃありませんのよ! 家を出ようと玄関開けた瞬間、目の前に突然現れてこの状態ですのよ! これじゃぁ、連れ去り、誘拐、犯罪ですのおおお!」

アリアの叫びに、周囲の人たちの視線が突き刺さる。


「なんだなんだ?」

「今、誘拐とか言わなかったかしら」


「ありゃりゃ」

「由奈さん、早く行きましょう。この視線は、やばいです・・・・・・」

爽弥達四人は、サンバースコーヒーの店内へ入り、席に着いた。



「さあ、昨日の話の続きをしよう。まず、昨日の話の中で、質問てある?」

アリアには、ケーキを奢って黙ってもらった。

「僕は、どのように監視されているのですか?」

「なに、そんなこと? もっとさー、『どんな組織に狙われてるんですか?』とかさー、『由奈さんはどんな人なのかもっと知りたいです!』とかさー、グイグイ来るんじゃないの~?」

由奈は、残念と言わんばかりに肩を落とした。

「ま、いいけど。方法は簡単、君のそばに監視官を置く。ゲーセンでの公安局職員然り、このアリア然り」

爽弥と綾音は目を丸くした。

この少女――アリアは、クラスメイトの一人だと思っていた。

しかし、そんな人物が自分を監視していたとは思いもよらなかった。

「アリアは、執行官なのですか?」

「そうだよー、うちの部下。ただねー、監視する役目を担ってるのに、まともに動けないからねー。それで、説教しに学校に来てみれば昨日の事件だったって話」

そういうことか、アリアが来て以来感じていた視線――それは、そのまま彼女だったということ。

確かに、相手に感ずかれる様では、秘密裏に監視している意味が無い。

もしこれが、テロリスト相手であれば行方を眩まされているであろう。

由奈は話を続けていた。


「それにしても、良かったね昨日は。私がいなきゃどうなっていたことか」


――どういうことだ?


「私がいなかったら君ら、死んでたよ♪」


なんだろうか、この圧迫感。目の前から感じる、威圧感とは違った今にも吹き飛ばされてしまいそうな『重圧』。

爽弥は、この感じを覚えていた。


――あの時、獣男と目を合わせた時と同じ。


しかし、隣にいた綾音は身震いをしていた。スカートを両手で握り、手や腕に汗をかいている。

「だ、大丈夫か?」

綾音は縦に頷くも、大丈夫そうには見えない。

「すみません。お手洗いに行ってきます」

綾音は席を立って、トイレに走っていった。

それを見届けると、由奈は話の続きを始めた。

「ごめんごめん。ただね、これからは君も、君と仲の良いあの子や他のクラスメイト。君が関わった全ての人達が『標的』になりかね・・・・・・」

由奈は口を止め、顔色を変えた。


「伏せろ!」


――ズダーン!

突然の銃声。

店内にいた客や店員は一目散に逃げ出す。店内に残ったのは爽弥達だけになった。

急に静寂がやってくる。

「由奈、さん?」

問いかけに返事の無い由奈。

もしやと思い、顔を上げて由奈を見る。

そこには、顔を青ざめた由奈がいた。

「由奈さん!」

「あ、危なぁー(私を狙っていたのか?)」

由奈の目の前、眉間の数ミリ手前で止まっている弾丸。

由奈は、自分が生きていることを実感し、ぺたんと力が抜けるように座り込む。


「私をお忘れになって? 御師匠様」


弾丸を止めたのはアリアだった。

「サンキュー、アリア」

すると、アリアは目線を由奈から反らし、弾丸を放った犯人を見る。

犯人の姿は、爽弥には見覚えがあった。


黒いレインコートを着て、黒いハットを深々と被ったあいつだ。


「あなた、何者かは知りませんが現行犯ですの! 反射リフレクション!」

宙に浮いて止まっていた弾丸は、速度を取り戻し、元の軌道を戻っていく。

しかし、男は瞬間移動にて、それをかわす。

そして、瞬間移動の移動先は爽弥の真後ろだった。

「標的、空門爽弥ヲ排除スル! ライ・テリア!」

ハットの男は両腕を掲げると、光の円を作り出す。

「排除スル!」

「させるか!」

光円の真下の空間に穴を造り出す由奈。

光円より放たれた光線は、穴へと吸い込まれる。

「・・・・・・あんたさぁ、ハァ、ハァ。質が、悪いね。私の心臓が驚いてるよ、はは」

由奈は今にも死にそうに、肩で息をするほど息切れを起こしている。

「私だってさ、能力持ってから半年も経ってないわけぇ、よっと! ちょっとくらい、ハンデくれてもいいんじゃない!?」

由奈は手を広げて前に突き出す。すると、手の前には再び穴ができた。

「お返しだ! ディメンジョン・ポケット 返却リターン!」

掛け声と共に、穴から放たれたのは光線。

しかし、ハットの男はそれも避けて、この場から姿を消した。

「くそっ! 逃がしたか」


「(今のは何!? なんで弾丸が宙に浮いてたの!? それに光る男!? 宙に穴!? もう訳が分からない!)」


綾音は、ハットの男が現れてからの一連の戦闘を影から見ていた。

由奈は、ポケットから端末を取りだし、どこかへ連絡する。

「もしもし、巾兼です。今しがた、ポイントA-δ-3にて、例の組織と思われる人物と交戦、取り逃がしました」

端末の音量が大きいため、通信相手の声が聞こえる。

年齢は、三十代くらいだろうか。

「逃がしてしまったのは仕方ないとして、重要参考人は無事か?」

「はい、負傷無しです」

「そうか。先程な、近隣住民から通報があってな、既に警察は向かっている。詳しいことは、そこで頼む」

「了解しました」


       ◇


連絡から数分後、公安局の車両が数台到着した。

車両から降りてくる職員は、由奈に向かって敬礼をする。

「お疲れ様です! 巾兼特級執行官!」

「はい、おつかれ~」

由奈は、気の緩んだ敬礼で答える。

職員達は、敬礼が済むと現場を調べ始めた。爽弥達は、店の外のベンチで休む。

「大丈夫?」

「はい、大丈夫です」

「私も」

綾音も見た感じ元気そうだった。

それにしても、物珍しさに集まった野次馬の数には驚く。

軽く数えても三百はいないだろうか。

その大人数が、現場へ立ち入らないように止めているのは人ではなく、ロボット。

確かに、この人数は人では抑えきれないだろう。

徐々に、マスコミも集まり始める。

そこへ、公安局の車両が一台やってくる。

爽弥達の前で止まり、助手席から一人の公安局員が降りてきた。

「あ、浦口捜査官」

「浦口ではない、戸口だ。 あんなノー天気と一緒にするな」

公安局の捜査官だった。

「初めまして、空門爽弥君。私は、戸口誠とぐちまこと。公安局警察機関の捜査官をしている。少々、君と話がしたいんだが公安局まで同行願えるかな?」



『君の家に居候してる、異世界人二名について』




To be continue.

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