第12話 北の玄武洞(Ⅸ)

漆黒の闇を切り裂く光よ、我が剣に宿りて敵を薙ぎ払え!


「雷帝」


風を切り裂き、目の前を凄い勢いで低空飛行するドラゴンに向かって、暗黒騎士は持っていた剣を上段から大きく降り下ろした。


空に散らばっていた切れ端の雲が集まり、黒く淀んだ大きな暗雲に成長していくように見えた。その隙間からまるで意思のある蛇のような雷、光の閃光がドラゴンに向かって何発も落ちる。


《!!》


ドラゴンは両翼でガードするがその衝撃に耐えられず、よろめきながらその場に踞り、暗黒騎士を振り返り睨む。その残忍な容貌は見るだけで命が凍えてしまいそうなほど冷たいものだった。


《貴様・・何者だ?》


『まったく・・そんなことを答えることになんの意味があるんだ?お前はこれから俺の手によってここで倒されるんだよ!』


ドラゴンに追い付いた暗黒騎士は、息一つ切らすことなく余裕とも思える皮肉な笑みを浮かべ答えた。


ドラゴンの翼は、先程の雷撃にジリジリと傷付き煙っていたが、それほどダメージを受けているようには感じられなかった。


その眼差しは、冷酷さと憎悪で暗く淀んでいた。

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