第11話 北の玄武洞(Ⅷ)

ユナの視界から暗黒騎士と刹那が消え、立ち上がることも出来ずにその場で俯いていた。


〈・・本当に、今の私に出来ることは・・〉


そんな無念にも似た思いを馳せている時である。近くの木陰からじっとユナを見つめる幾つかの視線、と言うよりも悪意のようなものを感じた。


そちらに視線を移すと、背は大きくないが、瞳孔が開いた目は大きく見開かれ、尖った帽子に太い棍棒のような物を持つ2体の魔物が今にも襲い掛かってきそうにゆっくりと近付いてきた。


『ゴブリン!?』


思わず叫ばずにはいられなかった。

決して強くはないが、群れで行動し弱った人間を襲って魂を喰らい価値のあるものだけを強奪する頭の良い魔物。


《旨そうな獲物だ!》

《ヒヒッ!》


その表情は醜く歪んで見えた。普段ならそれほど畏れる敵ではないが、ドラゴンとの戦闘で傷付き、魔力も殆ど尽きてしまったユナの今の状態では絶体絶命と言っても良かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る