第10話 北の玄武洞(Ⅶ)
攻撃を受けて傷付き、今にも意識を失いそうな刹那を冷たく見下すようにドラゴンは吐き捨てた。
《小賢しいガキだ!まぁいい。まずはあっちのクズ共を片付けることにするか》
両翼を大きく降り下ろし、紅い光がした方へとドラゴンは飛び立った。そのスピードは風を切り裂き大気が割れるような轟音を纏っていた。
『ちっ!』
飛び立ったドラゴンの後ろ姿を見つめていた暗黒騎士は軽く舌打ちをし、刹那達を尻目に後を追い掛けた。
『あともう少し・・』
溢れ出ていた血はゆっくりと止まり、傷付いた体が少しずつ回復していく。刹那の顔に生気が戻ってきた。
『ありがとう、ユナ』
魔法での回復は一時的なもので、言わば人間が持つ自主回復能力を強制的に高めて無理矢理回復させるものである。決して全快になるわけではない。刹那は痛む体をゆっくりと起こしてユナに礼を言った。
『刹那さん、分かっているとは思うけどこの回復は一時的なものだから・・』
『うん、分かってる。でも行かなきゃ・・』
刹那はユナの言葉を遮るように答え、ドラゴンと暗黒騎士が向かったダンジョンの奥へフラフラと歩き始めた。
その瞳には疾風のごとく飛び去ったドラゴンと、そのドラゴンを影のように追い掛ける暗黒騎士が映っていた。
その背中を追い掛けようと、懸命に立ち上がろうとするユナだったが、その力はもうユナには残されていなかった。
〈・・私に出来ることはもうないの?・・〉
ユナは自分自身の無力さに打ちひしがれていた。
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