第6話 北の玄武洞(Ⅲ)
岩壁の上で睨みを利かせていたドラゴンが遂に動き始めた。刹那達に狙いを定めるように翼を振り上げる。
《小さき存在よ!吹き飛べ!》
岩壁の上で頭を垂れていたドラゴンが、片翼を大きく弧を描くように打ち払うと、空に暗雲が立ち込め、巨大な蛇のような幾筋もの稲光がバリバリと大地を焼き、まるで生きているかのように螺旋を描く旋風が三人目掛けて突き進んでいく。全てを薙ぎ倒すハリケーンのような風の刃が刹那達を襲った。
『キャッ!』
『くっ!』
『・・・!』
その爆風に必死で耐える三人だったが、ユナは数十メートル後ろに転がるように飛ばされ、刹那も剣を地に突き刺し耐えていたが、数メートル後ろに飛ばされ、鎧から露出した腕の部分を切り裂かれ血が滴り落ちていた。
暗黒騎士は両足を大地に踏ん張り、両手を体の前でクロスしなんとかその爆風を凌いだ。
『大丈夫!?ユナ!』
『はい・・なんとか』
吹き飛ばされたユナの方を振り返り、刹那は叫んだ。
ロッドを杖がわりにしてかろうじて立ち上がりながらユナは答えた。
爆風の刃によって切り裂かれたのか、真っ白なローブは所々引き裂かれ、血で赤く染まっている。
『ユナ!君は後ろに下がってるんだ!』
『でも・・』
『付け焼き刃のパーティーの上に、相手が悪すぎる!』
たった一度の攻撃でこの状況。力の差は歴然としていると刹那は思わざるを得なかった。
〈・・最悪の状況だけは避けなければ・・〉
だが、いくら考えても辿り着く先は最悪のシナリオ。
このままでは全滅もあり得る。暗黒騎士が言うように復活のルールも怪しい状況で無理は絶対に出来ない。
簡単に逃がしてくれるとは思えないが、一旦ダンジョンから脱出するべきかどうか迷っていた。
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