第4話 北の玄武洞(Ⅰ)

ダンジョンの入口は不気味なほど静まりかえっていた。

この奥でドラゴンとの死闘が繰り広げられているなど想像もつかないくらいに・・


『本当なのか・・』


刹那はドラゴンが出現したという現実に疑問を感じていた。


『いや、ドラゴンが出現したのが事実だとしても、でも何故なんだろう。どうしてドラゴンが・・』

『確かにおかしいですよね。V・W・Gは始まったばかりのゲームなのに・・もしかして・・システム上のバグ?』


ダンジョンの奥へと歩を進めながら、刹那とユナは各々が感じる疑問を口にしていた。


『どうやら・・それを考えてる余裕はなさそうだな』


暗黒騎士はダンジョンの奥を睨み、そう呟いた。

その視線の先に、岩壁の上で得体の知れない巨大なドラゴンが獰猛な瞳でこちらを睨んでいた。今にも襲いかかってきそうな雰囲気だった。


三人はその姿に恐怖、戦慄を覚えた。


ドラゴン!!


「グ、グ、グルーー!!

ヴォアーーーッ!!!」


その叫びは大地を震わせ、翼のひと振りは嵐を巻き起こす。口から吐かれる焔は全てを焼き尽くす地獄の業火と言われていた。


『くそっ!!』


恐怖を振り払うように、刹那はドラゴンを睨み、ゆっくりと腰の剣を抜き、暗黒騎士は二本ある背中の剣の片方を抜き放ち身構えた。


ユナはそんな二人の後ろで、両手にロッドを固く握りしめていた。その両手が恐怖に震えているのを刹那は見逃さなかった。


『どう戦う?』


暗黒騎士は剣を片手に肩にかけ刹那に尋ねた。その瞳をはっきりと見ることは出来なかったが、この戦いを楽しんでるような抑揚のある声音に思えた。



『戦うというよりは、まず皆を助け出すことを最優先にしなければ』


刹那は抜いた剣を両手に構えた。

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