第3話 手についてのイントロダクション
手は時にその人の履歴書となる。
その人の人柄、生活史。
傷一つない手、白く長い指-----確かにそれは美しいかもしれない。しかし、苦労を重ね、年を重ねた皹だらけ、皺だらけの手などもまた、重みがあり美しい。
手にはその人の精神状態-----感情が何より素直に現れる。
そして、祈りという名の形のないものの具象化の実現-----印。
印を組むことによって祈りは高まり、精神は無我へといざなわれる。
未知なる力を産み出す源。
そしてそれは創造し産み出すものでもある-----可能性。
創り出されたものは精神的表現。
手によって感情を伝える。
手は会話する、とめどなく。
たとえ口から発せられる言葉はなくとも、心を伝えることはできる。
モノを創り出し、モノを描く手。
何より繊細でいて何より力強い。
小さな手、大きな手。
細かい動作も大きな動作も全て、手の中にある。
人間、手に頼らずして為す術なし。
精神および肉体の活動状態においてつねに手は細かなあるいは大まかな動きを常に保ち続けている。
常に
手の活動により脳は発達してゆく。
人々は、二足歩行し、手というものが存在するようになり、道具や火を使うことを覚えた。
そして人は手の働きによって文化を築き文明を確立した。
常に陰と陽の両面を産み出しながら。
忌まわしくもあり輝かしくもある歴史。
その背後には常に手というものの影なる力が働いていた。
人類の歴史は手の歴史。
たった、二つの手。
これらが寄り集まり、確実に“今”というものを築いて行く。
その活動はとどまることを知らない。
そう、自らの落とし穴にはまり、
これが、滅びるまで一生ともに生きて行かねばならない手という名の相棒。
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