─8─

 ワイズヘイル城内には、呆れるほど簡単に侵入出来た。


 城はどこも同じ造りで、豪華な装飾品や壮大な建物内の造りが見事! 討伐対象であるNPC王は、ここの3階にある謁見の間にいる。そして冬馬さんが居ると思われる戦略室は、この1階中央階段を昇りきった2階奥の最深部にある。

 彼はきっと、今でもそこで戦略を練っているのだろうなと思う。そう思うと、凄い緊張感が身体中を走った。


「……行こう」

「は、はい!!」


 注意深く周りを見渡したけど、やはりデッキパーティーは居ないみたい。城内だとレーダーマップが使えなくなるので、ハッキリとは言い切れないけどね?


 そうして、わたし達が階段まで差し掛かった時だ。突如として敵部隊が周囲から現れ、わたし達を取り囲んでくる!?


「ハハ……そりゃ、そうだろうな?」

「分かり切っていたことでしたが。何とかここは、切り崩しましょう!!」

「……でも、何だかおかしいですね? 

とにかく、参ります!」


 天龍姫さんはそう言うなり、敵部隊へと早速向かって職種ジャンプし、懐に飛び込むなり華麗に大スイング一閃! そのまま連続スキル発動で、相手を倒しまくっていた。

 先ずは、わたし達が居る1階の敵を掃討する感じみたい?

 その流れを読み、わたしも遅れ急ぎ《ゴッデスウィング》を発動し、次のスキルを準備していた。

 が、


「確かにおかしいな? ここに居る奴ら、みんな格下ばかりだ」

「……ですね」


 アルトさん達も天龍姫さんに遅れ参戦しながらも、不信顔にそう零す。


「例え格下だとしても、この数、油断は大敵だ!! 全力でやらないと!」

「そぅ、だよね……?」


 わたしはミレネさんの言葉を受け、迷わず《ファルモル》を発動し、ターゲットスコープから集団を狙い撃つ!


 あっさりと彼らは倒れてしまう……わたしなんかよりも余程ヒドい、地雷かも?


 だけど、2階や3階を中心とした守りが依然としてかたいので、この階段を上がるのはどうも簡単そうではない。

 

「これはまさか、時間稼ぎか……?」

「だとすれば、本当にこの位の戦力しか、今は居ないのかもしれませんね?」

「だったら、迷う間でもない! アルト、全力で一気にこのまま陥落させよう!!」

「……その前に、少し冬馬さんに直接お会いしたいですね?」

「「「──!?」」」


 天龍姫さんの何気ないその発言に、思わずみんな立ち止ま利考え込んでしまう。

 が、


「……くだらないね。そんなことをしている間に、アストリア城が《陥落》されたら、どうする気だ?」

「え?」


 カテリナさんから言われ、世界チャットを確認してみると。ワイズヘイルの軍勢が大挙し、アストリア城内へ侵入していると伝えられていた。


 これは確かに、かなりヤバいかも……?


「そうですね……ここは思い切った手に出る時なのかもしれません」

「あ、バカ待て! 無理をするな!!」


 天龍姫さんはそう言うなり、職種スキルで大ジャンプし2階へと独り降り立ち、空かさず大スイング一閃し。そのまま連続スキルで、敵を倒しまくっていた。

 わたし達もそれで慌て、2階へと駆け上がり参戦する。


 が、流石の天龍姫さんも攻撃を幾らか受けたらしく。苦しげな表情を見せ、血を流しながらも険しい表情を見せ戦い続けていた。

 そしてその天龍姫さんの胸に、弓矢が着弾?! 更に足にも、数発着弾!!


「──くっ!!」


 天龍姫さんは、そこで膝を落とした。それを狙い、敵部隊は一斉に襲い始めてくる!

 が、アルトさんとランズ、そしてマーナが天龍姫さんを守り、逆に相手を押し切った。


「バカ! 幾ら格下でも、この数だ!! 下手すれば、やられるぞ!」

「つか、私達も居るのに! 自分だけ無理しようとしないで、遠慮なく頼ってよ!! 仲間でしょっ!」

「マーナの言う通りですよ、天龍姫さん」

「……」

 天龍姫さんはそこで小さくふっと笑み、立ち上がる。


「仲間とは……とても良いものですね? わたくし、初めてそのことを知った気がします…」

 言うと、天龍姫さんはようやくいつもの優しげな笑顔を見せ、それから次々とスキルを発動し。再び凄い勢いで、2階に居るワイズヘイルのパーティーを倒しまくる。

 わたしもそれを見て、ほぼ同時に動き、魔聖水を次々と使っては《ゴッデスウィング》と《ファルモル》を発動!


 それから僅か数分にして、2階のワイズヘイル軍勢は壊滅。

 あとは……3階だけだ!


 だけど不思議と、3階からは敵部隊の気配が感じられなかった。

 先ほどの戦いの中で、ミレネさんが射て倒しまくっていたけど、まさかあれで全滅したとか? 


 わたし達は警戒をしながらも、3階を目指し階段を駆け上がり、その先を遠目に見つめた。


 そこには……NPC王と、1人のスラリとした男の人が立っていた。その顔立ちは色白で、とても綺麗で凄く優しげで……思わずドキリとする様な微笑みを浮かべ、こちらを静かに見つめている。


 しかも、シンクロ率76%って!?



 わたしがそう思い驚く中、その人はそれこそ優しげに語りかけてきた。



「……まさか、こうも早く。ここまでやって来られるとは、流石の私も計算違いでした。いや、本当に参りましたよ…」

「お前……まさか、新道冬馬しんどう とうまか?」



 ──え? この人が……?!



 わたしは驚き、その人を改めて見つめた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る