─7─

 わたし達デッキパーティーは、昨晩最終的に攻め取った拠点へと光を放ち輝きながら降り立つ。そして直ぐに、みなが揃ったのを確認すると、柊一ランズがパーティーボイスチャットを使い、口を開き言った。


「状況を知らない者も居ると思われますので、今ここでお伝え致します。

我々はこれより、《ワイズヘイル城攻略》を目指します!! 

相手が相手なので、かなり困難で難しいことは承知の上ですが……北西アストリア陣営、勝利の為。また、我々最後の大決戦をより楽しむが為。思う存分に戦い、悔いなく次のニューワールドへと移行しようと思っての判断です。

どうか、これに協力して頂きたい!」

「「「にゃにゃん!!」」」


 デッキパーティー皆から、ギルド『黄昏の聖騎士にゃん』流の返事が返って来たので、わたし達はちょっと驚いたけど、何だか嬉しくなった。


 そうして、いよいよ大決戦最終日の開始だ!


「よし、いくぞ!!」

「「「にゃにゃん!!」」」


 わたし達は一斉に、南東ワイズヘイル城を目指し走り出す!!


 ワイズヘイル城は、ここから頑張って走ったとしても20分ほど掛かる距離にある。もちろんそれは、ゴッデスウィングを使っての話なんだけどね?

 通常なら、もっと掛かる距離。


 途中で幾つもの拠点の脇を通り抜け、ワイズヘイル勢のパーティーやソロプレイヤーをたまに見かけても、全部無視し。先へ先へと、突き進んだ。

 でも恐らく、その度に情報はワイズヘイル側に伝わっていると思う。


「到着してみたら、『大軍勢が待ち構えていました』なんて落ちがないことを祈りたいものだな」

「ハハ! でもその可能性は、十分有り得ますね?」


 アルトさんの言葉を受け、柊一ランズが笑顔でそう返していた。

 その話を耳にして、マーナが不思議顔に口を開く。


「つか、ワイズヘイルに所属するアクティブプレイヤーのほとんどが、アストリア領内からのスタートなんでしょう? 

だったら私達の方が近いから、今更、間に合わないんだよね?」

「ええ。ですが中央平原に居る軍なら、まだ間に合いますので、それを下がらせて来ることも考えられます」

「今更、ごちゃごちゃ言ってても仕方がないですよ! ワイズヘイル城に到着したら、とにかく手当たり次第に倒しまくって、NPC王を速攻倒すだけです!!

ね、アリス様♪」

「え? えぇ……ここまで来たら、もぅやるしかないよね?」


 今更ここまで来て、『やっぱり辞めました』は有り得ないと思う。例え無謀な作戦だったとしても、突撃するしかない。ここに至ってシャインティアへ引き返すのは、時間的にも距離的にももぅ有り得ない選択肢。

 だから、ちゃんと気を引き締めておかないと!


 その間にも世界チャットから流れてくる情報が、北西アストリア領内での大激戦を物語っていた。次々と流れる撃破情報が、絶え間なく続いている。誰が誰を倒した、誰それのデッキパーティー壊滅、など色分けされ分かり易く情報として流れている。それが途切れることなく流れ続け、今やおびただしい数になっていた。


「……これはある意味、まさに最終戦に相応しい戦いなのかもな? 

冬馬さんはもしかすると、この大決戦で確実な勝利を手にすることよりも。このゲームを最大限に楽しむことを優先し、選んだのかもしれない…」

「確かに……僕が同じワイズヘイルに所属していたら、思う存分アストリア城攻略を目指し、自陣営の城など構わずに突き進んでいたと思います」

「実際、『ワイズヘイル城には、構わなくていい』という指示を出しているそうですね? 

ならば、それも有り得ることかと」

「つか……そんな人を、私達はこれから倒しに行く訳? 何だかそう考えると、切ないかな」

「実は良い人……なのかなぁ? それってつまり、皆の楽しみを何よりも優先した、ってことになるんだよね?? 

策士っていうと、なんだかずる賢い人を直ぐに想像しちゃうけど……」


 アルトさんに柊一、それから天龍姫さんにマーナがそう言った感想をもらすのを聞いて。わたしは何だか、その冬馬さんて人と一度会って、話しを聞いてみたくなった。


 そんなことをふと思うわたしの様子を、アルトさんは困り顔に見つめ、口を開いてきた。


「……ああ、多分な? しかもオレ達がこんなところに居るということ以外、戦略的欠陥も見当たらない、見事なものだ。

敵ながら、つくづく感心するよ。

が、だからといって手を抜いたりするなよ、アリス?」

「──へ? あは、あはは♪ 流石にそれはないと思われ…」

「ハハ♪ 次のワールドでは是非、彼を味方にしたいところですね? まぁ、不可能に近いですが……」

 

「う~ん……それって、不可能なのかなぁ~?」

「アリス様っ! そんなことで気を緩めたりしたら、ダメですよ!! しっかりしてください、分かってますよね?」


「ぅわ、わ! ミレネさん、分かってますので……ごめんなさい!」


 ミレネさんに、わたしは思わず謝った。

 それを受け、「何も、そんな謝ることないです……」とミレネさんは困り顔に言う。


 そうこうしてる間に、ワイズヘイル城が見えて来た。

 流石に大きく、付近にはチラホラとソロプレイヤーの姿が見えた。

 が、デッキパーティーは見当たらなかった。


 これは、意外かも?


「まさか軍が不在とはな……城内に潜伏しているのか?」

「その可能性は、十分に有り得ますね……流石に防衛放棄はしないでしょうから」

「城外より、城内の方が優勢になるもんね? それでじゃないの??」


 城の4つある門の一つ西門前で一旦立ち止まり、わたし達はそこでグッと身を引き締めた。


「よし、いくぞ!!」

「「「にゃにゃん!!」」」


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