─3─

 その後も、Gパーティーについての簡単な説明と、今回の戦略案などの説明が続いていたけど……わたしにはちょっと難しくて、なんだか眠くなる。



「今回の戦略戦術指揮担当は、山河泰然さんが たいぜん殿とワシが務めさせて頂く予定にゃり。各Gパーティーリーダーについては、各々選出し決めて貰い、後で報告の方を頼むにゃ」


 《大決戦》は、金・土の2日間。夜21時から23時までの2時間ずつ、2回戦に分けて行われる長期戦。

 ざっくりと勝敗ルールを説明すると、4大勢力の各居城を出発点とし、広大なフィールド上に点在する拠点をより多く獲得した勢力が勝利となり、順位が決まる。

 最初は、本拠地となる城以外全て空白地となっているので、攻め取り易いんだけど。取った拠点を守る防御側には、防御特典が入るので、配置させておけば防御戦で有利になる。

 要するに、空白地を最初にどれだけ効率よく取ってゆくかが勝敗に大きく影響を与える、っていうこと。


 また、取ったあとの防御。または、相手拠点を強奪する上で、如何にGパーティーを上手く運用し、的確な配置を行うかが、これまた大事となる。何しろ相手勢力にも同じような核となる組織パーティーが今や当然のように存在しているので、決戦よりも遥かに広大なフィールドを駆け回るにしても、戦略ミスを犯すとそこまで遠過ぎて、その距離次第ではもぅどうにもならないことが過去の事例として多々あったからだ。



「今回も問題となるのは、南東のワイズヘイル。力関係も拮抗している上に、なかなか厄介な策士があそこにはいますらからね……」

「薔薇の騎士団、GMフェイルモード殿と戦略参謀の新道冬馬しんどう とうま殿にゃりな?」


 新道冬馬……。

 話には度々聞くけど、Gパーティーに選ばれることなんてなかったので、今までは余り意識して考えたこともなかった。

 ここ北西アストリアでいうところの天山ギルドのような存在だと思えば簡単かも?



「毎回思うにゃりが……先の先をよく読む上に、見事なまでの人たらしにゃ。今回も既に外交戦でかなり取り込まれているようにゃので、かなり参っておる……」

「今回は、開幕戦不利からのスタートになりそうですか?」


「ぅむ……誠に申し訳ないことにゃりが、そこは覚悟して貰いたいにゃ…すまぬ」

「『戦いに於ける勝敗は、その開戦前の外交戦でほぼ決している。なので、いざ開戦が始まったら勝とうが負けようが悔いなく、みんなそれぞれに思う存分楽しもう!』というのが、彼の得意とする持論ですからね? 言うだけのことはあります」


「彼自身は対して強くないし、地雷なんですがねぇ……ではそろそろ、ワールドリセット対策の件に移りたいと思います」



 わ、ようやくキタ!



「今回のワールドリセットについて、運営側が配置にランダム性を取り入れたのは、皆さんご存知のことだと思います」

「要は、弱小勢力ユーザーサイドからのクレームに対する対応策として運営側が出した打開策が、勢力配置をユーザーが選べない《ランダム配置》とすることで、『勢力バランスを取る』というモノにゃりな?」


「つまりこれを逆手に取れば、《勢力的に弱い》勢力を『第一希望』としておけば、希望通りの勢力に比較的配置され易くなるのではないか?」

「……早い話、やってみなくては分からないにゃのにゃが。何もやらにゃいで、このまま指をくわえ結果をただ待つよりは……マシ、ということにゃで」


 それって……。


「つまり……確実ではない、っていうこと??」

「モチロン、それはそうですよ」


 わたしがポツリとそう零し言うと、ミレネさんが直ぐに反応して吐息混じりに教えてくれた。


「なにしろ今回のワールドリセットは、初めてのことなので。運営側の公式アナウンスから色々と憶測して、今回の対応策を考えてはみましたが。結局のところ、どうなるかなんてまだ誰にも分からないんです」

「……でも、それでも何もやらないで居るよりは随分とマシでしょう?」

「それは、そうなのですが……」


 期待が大きかっただけに、ちょっと残念に思う。

 わたしは元気なく俯いた。


 そんなわたしの手の上に、隣に座る眞那夏がそっと手を重ね合わせ「きっと大丈夫だよ、アリス!」と囁いてきた。

 わたしはそんな眞那夏を見つめ、「そうだよね!」と笑顔で返す。


 結局のところ、成るようにしかならないし、成功することを信じてやってみるしかないからね?



 その後、最終的にどこの勢力を選ぶかについては、ワールドリセット前日となる6月29日の月曜日に通達する旨を告げ解散となった。



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