─4─
「いよいよ、今晩かぁ~」
金曜日のお昼休み。
いつものように、眞那夏と一緒して他愛もない話をやっていたんだけど。急にそのことを思い出し、ポロリと零してしまった。
「だね! あとはGパーティーとしての役割を無事に果たし、見事勝利で最後を迎えたいかな?」
「うん、うん! だよね! そうなるよう、頑張ろう!」
「よっ! アリスに眞那夏」
「何だか2人して楽しそうですね?」
そこへ、いつものように草川三雲と柊一がやって来た。
「やっほ! 三雲に柊一♪ 今ね、いよいよ今晩から始まる大決戦への意気込みを、眞那夏と語っていたところ」
「ハハ! まあ、やるだけのことはやった訳だし。あとは成るようになるさ。
とにかくこれで、最後なんだから。アリスと眞那夏は、お互いに楽しむことを最優先させたら、それだけでいいよ」
「と言っても、Gパーティーに選ばれた2人としては、内心そう気楽にもしてられないのでしょうけどね?」
わたしは柊一からのその言葉を受け、眞那夏と互いに顔を見合わせ肩をすくめ合い。それから2人に軽く笑みを浮かべ、言った。
「それらも含め、今晩は思いっ切り楽しむつもり!」
「つか、なかなか無い機会に恵まれたもんね? アリス」
「だよね! 楽しみつつも頑張るから、見てて!!」
「ハハ! それを聞いて安心したよ。それからな、アリスにとってはとても良い知らせがある。な?」
「ですね♪」
三雲と柊一は、そこでお互いに顔を見合わせ微笑み、わたしを見つめてきた。
「良い知らせ……って?」
「ワールドリセットで、ギルドが今度解散されるだろ? それに伴い、この前のメンテナンスでギルド管理画面から操作可能な新しい《機能》が幾つか増えていたんだよ」
新しい、機能??
「その一つが、『ギルド資産の分配』です。うちのギルドが持つ総資産は、3000万リフィル以上もありますから。大変な額が配当可能です」
うっわ、それメチャ凄い!!
「但し……分配金は、ギルド貢献度に応じて自動配当されるので。このままだとアリスの配当金が少ないことになる……」
「──ぐは! そ、そうだよねぇ……世の中、そんなに甘くはないようで…」
「だけど、アリスのギルド貢献度は誰が見ても、確かなものです。問題は、運営側にあるんですからね?
例えば、決戦に於いても補助でみんなに貢献しているアリスには、システムとして何の見返りもない。毎回の報酬にしても、その為に少ない。大変、不条理なものです」
「あ、つか。私もそれはいつも感じてた。お陰でアリス、いつも貧乏だもんね?」
──ぐは!
いやまぁ……わたしが貧乏なのは、そればかりが理由ではないのですが。確かに貰える報酬は、毎回控えめだったかも?
「という訳で、些少かも知れないけど。ギルドメンバーに今少しずつ掛け合い、協力してくれる人達を募ってるところだから、楽しみにして待っていてくれ!」
「基本的に、全員に協力してつもりなんですがね?」
「え? あ、あの! ちょっと待って、そんなの別にいいよ……。何をやろうとしているのか、よく分からないけどさ。わたしなんかの為に、そんな無理なんかしなくても……確かにありがたいとは思うけど、思ってはいるけど。最後の最後になって、ギルドの皆に迷惑はかけたくないし……」
何をしてくれようとしてるのか、分からないけど。少なくとも、わたしの為に何かやってくれようとしてるのは分かったから。
「誰も、迷惑だなんて思ってませんよ、アリス。これはギルドとしてのアリスに対する、感謝の気持ちです。
今まで裏方として頑張ってくれた、君へのね?」
「これは、ねこパンチさんの意向でもあるんだ。
『アリスには、何か最後にお返しがしたい』ってな。だからつべこべ言ってないで、その時が来たら素直に受け取れ。な?」
「つか。それがどういうのかよく分からないけど、私もモチロンそれに参加するね!」
「ハハ! 助かるよ、眞那夏♪」
三雲は明るく笑いながらそう言った。
だけど、わたしは……何だかこれで、本当に皆との縁が切れてしまうような気がして、どこか切なく寂しかった。
でも、その気持ちは確かにありがたいと思うし、感謝だ。
「……うん、わかった! 眞那夏も、ありがとう!!」
わたしは満面の笑みを、そんな3人に向けた。
今は、今を精一杯に楽しもう!! 結果もまだ出てないのにクヨクヨしてたって、仕方がないからね?
そう思って!
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