第5章 Gパーティー結成!! いざ、大決戦へ!
─1─
「ライアスさぁ~ん。居ますかぁー? アリスで~す」
わたしはA・Fを起動ログインし、光を放ち輝きながらライアスさんの店内にある小部屋へと降り立ち。直ぐに扉まで移動し、コソッと静かに開け。いつもの笑顔で、店内を軽く見回しながら声を掛けたんだけど……何故か、そこには誰も居なかった。
「……どこかへ、出掛けてるのかなぁ?」
前回ログアウトする際、実は色々とありまして……悩ましくも、かなりショックな目撃をしてしまってはいたものの……でも結局のところ、わたしはライアスさんを信用し、装備品をそのまま全て預け手渡してあるので、今は困ったことに下着姿だったりする。
なので、ちょっと流石にこの扉から先へ出るのには、勇気がいる。
困り顔に、辺りをキョロキョロ見回していると。近くに、白い布切れが落ちてあった。
……ちょっとコレを、お借りしようかな?
わたしは、その布切れをヒョイと指先で摘み手に取り。身体の上から覆い、前の方を手でグイッと掴んだまま外からは肌が見えないよう身を包み隠した。
それから扉を開け、店内へと入る。でも直ぐに人気を近くに感じ、そこをソッと見る。
と……?
「……」
「……」
「……」
直ぐ近くの壁際で、ライアスさんと道具屋のボルテさんが小部屋側の壁にべったりと寄り添い合い。何故かバタバタと、その場所を奪い合うように押し合いへし合いして、陣取り合っていた。
「……あ、あのぅ~? そんなところで2人して仲良く、何をやってるんですかぁ??」
「──わ、うわっ! アリスちゃん、そっちに居たの!?」
「あ、いや!! 別に何をやっているって訳でもないんだがね! は、ハハ!!」
「…………」
どぉ~考えても、なんか怪しい……。絶対に、何かあるよね、コレ??
わたしは、そんな2人を半眼に見つめ。それから真剣な表情をして、そこへサッと向かい。イヤがる2人を、強引にグイッと押しのけ、その場所を確認する。
「……え? ──ぅわあああー!!」
そこには呆れたことに、小さな穴が空いていた。しかも貫通していて、その向こう側の小部屋の中が、覗き見れる。
つまり、コレって……まさかの覗き穴!?
わたしは余りのことに、その場で茫然とし、顔なんて真っ青。そのあと呆れ顔の半眼をして、2人を『ふっ……』と冷ややかに見つめ……大きく息をスーッと吸い、それから大声で叫んでやった。
「──だからもぅ、ライアスさん!! なんでこんなこと、やっちゃうんですかあぁあああぁああー!!!」
◇ ◇ ◇
「はぁ……なんか、切ない…」
「え?? 急にどうしたの? アリス」
次の日のお昼休み。
いつものように、学校の屋上で真中と2人してお弁当してたんだけど。急に昨日のことを思い出し、わたしはついついそう呟いてしまっていた。
「いや、もぅね……凄く信用していた人から裏切られた感が、かなりハンパなく凄くてさぁ~……なんか、もぅ泣ける…」
「あー……つか、ライアスさんの件?」
「そぅ、それ……」
装備品の匂いを嗅いでいた件は、流石に誰にもまだ言ってないんだけど(というか、流石に仮想世界のモノなので匂いなんかしない筈なのですが……?)。覗き穴の件は、やっぱり腹に据えかね、真中にだけは昨日のうちに愚痴っていた。
「実際のところ、見えてなかったとか見てないとか、必至になって言い訳していたんだけどさ。本当のところ、どうなんだか……もぅ信用なんて出来ないよ…。
確かにあの角度からだと、見えてなかったとは思うんだけど。問題は、そこじゃなくてさ。わたしずっと、ライアスさんってとても親切で良い人だなぁ~、って思って尊敬していたから。見た、見てない以前にさ、そんなことをしていたっていうのを知って、何だかもぅガッカリ……まぁ言い出しっぺは、ボルテさんらしくて、ライアスさんは単にノリで?だったらしいんだけどねぇ~」
「はは……幾らアバターだとは言っても、裸を見られるのは恥ずかしいよね?
しかもアリスの場合は、シンクロ率87%な訳だし」
「そ! そぅ、それもあるんだよねぇー……」
下着は着けていると言っても、下だけ。つまり上は、モロ…………ぐはっ!
しかも、あのゲームの運営会社は前々から変なところに力が妙に入っていて、専用スーツからの情報を見事に再現してくれている。
一度具合を鏡で確認した時なんかさ、「ぅわ! ほぼ、まんまなんじゃ?!」って驚いてしまったほどだったので……参るよ。
まぁ胸については『極振り』してあるので、ほんのちょっとだけ実際よりかは大きいけどね?
「つか。なんかね、男の人もそこは同じらしいよ?」
「て言うと??」
「だから、長さとか形だとか……つか、そのぅ~大きさ、とか……?」
「──!!」
「お前たち、何の話で盛り上がってんだ?」
「「──ぅッわ!!」」
いきなり後ろから、草川三雲がそう話し掛けて来たので、びっくりした!
隣には柊一も居て、にこやかな笑顔を浮かべている。
この様子から言って、話の中身は聞こえてなかった?と思うけど……なんとなく真中と2人して、顔を見合わせ、全身真っ赤になってしまう。
「それはそうと、運営からの告知、2人はもう見ましたか?」
「「え?!」」
あ、そうだった!
そういえば今日、A・Fを運営しているグリーンモバイル社が重要な告知をすると発表していたのを、今になって思い出した。
「ごめん! 忘れてた!!」
「つか。というと、2人はもぅ確認済み? どんな内容だったの??」
「あぁ……やはり『ワールドリセット』についての知らせだったよ」
「日程は、《大決戦》後となる6月30日火曜日、午後2時をもってワールドリセットされる。
だから僕たちは事実上、その前日となる月曜日までが最後ということに……」
「そ、そっか……そぅなるよね…」
……予想はある程度、していたんだけど。現実として突きつけられると、思っていた以上に心がチクリと痛むのを感じてしまう。
「じゃあ、もう残り一週間切ったってこと?!」
「あぁ、そうなる。しかも、やはり選択出来る勢力はあくまでも希望であって、希望した勢力に配置することを約束するものではない、と……ご丁寧に追記説明までされてあったよ」
「……」
「……アリス、大丈夫ですか?」
わたしの顔色が悪いことに気づいて、柊一が心配してくれたみたい。
「あは、ハハ……大丈夫! ただね、ちょっとだけ寂しいな、ってなんか急に感じちゃってさぁ…」
「つか……私、アリスと別勢力になったら、もぅこのゲーム引退しようかな…」
え?
「だってさ、考えてもみてみ! 次にアリスと同じ勢力になれる可能性があるのって、来年だし。でも来年の春からは、受験勉強始めなきゃならないから、A・Fやれるのってそこまでの間だけだし。だったらもぅこのまま続けてても、余り意味が無いのかな?ってさ」
「……そぅ、だよね…そうなるよね?」
「まぁ、余りそう気を落とさないでください。まだバラバラになるとは限りませんから。
それに、有効かどうかはまだ計りかねますが、対応策も一応考えてありますので」
「あぁ、例のアレか? しかしそう上手くいくのかオレには疑問だな」
「例の……って?」
わたしなんかは、まるで見当もつかない話だった。
隣の眞那夏も、キョトンとしていた。どうもわたしと同じみたい。
「詳しい所は、今度の《大決戦》後に改めて皆に伝える手筈です」
「と言っても、運営側がいう『ゲームバランスを取るため』と言う告知内容を逆手に取り、仮定しての策だから。上手くいくかどうかは、実際にワールドリセットされてからのお楽しみ、って感じなんだけどな?」
逆手?
「つか、どうする訳??」
「ぅん……ごめん柊一、なんか今ひとつ話がよくみえない…」
わたしがそう言うと。柊一と三雲は顔を見合わせ、肩をすくめている。
「まあ今は、その策の成功率を少しでも上げる為、手を打っているといった感じです」
「その為の情報収集を、相当苦労してオレ達もやっているから。上手くいったら、チューの一つくらい頼むぜ、アリス! な?」
「──そ、それとこれとは話が……!」
わたしは途中までそう言い掛かっていた、んだけど……。
「……あ、ほ、本当にそれで上手くいくのなら…………頬に軽く、とかなら…………別に、いいょ…」と小さな声で繋げ、頬を真っ赤に染め俯き言い換えた。
それでまた来年まで、みんなと一緒に楽しめるのなら……そこまでイヤって程でもないし…そう思って。
だけど2人は、そんなわたしを困り顔に見つめ。それから三雲が、わたしの頭の上に軽く手を乗せ、「ばぁ~か。そんなの冗談だから、なにも心配なんかするなよ」と慰めるように優しく言ってくれた。
なんだかそれが不思議と、アルトさんと面影と重なった気がして……わたしの心が少しだけ、ふわりとなり頬が赤く染まる。
そう言えば口調なんかも、どことなく三雲とフェイトさんは似たところがあるんだよね?
「取り敢えず、今晩は運営からの告知についてギルドメンバーみんなと軽く話し合いたいし、《大決戦》へ向けての会議も予定されています。
2人とも、出来たら参加してくださいね?」
「うん!」
「絶対、参加する!」
「と言っても、今夜はほぼ雑談メインで、あとは大決戦でのパーティー編成仮案が『天山ギルド本営』より届いているから、その配布と確認・承認作業程度なんだけどな?」
「あはは! 雑談も楽しみだよね? アリス!」
「うん! 凄く楽しみ!!」
今のギルドに居られるのはもう残り僅か、これからの1日1日が、わたしにはこの時とても大切に思えていたんだ。
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