─5─
「……はぁ、なんか泣けるなぁ~。毎度毎度のことなんだけど、自分が凄く情けない」
次の日のお昼過ぎ。
わたしは近くの公園で真中と合い、愚痴を聞いて貰っていた。それで思わず、ため息をついてしまう。
「ンー……でもさ、アリスはよく頑張ったと私は思うよ?
フェイトさんもランズベンルナントさんも、そう言ってたし! だから、もっと自信をもって!! ね?」
「……ぅん。実際、わたしがどれくらい貢献できていたのか、よく分からないんだけど。ランズベンルナントさん……太一の作戦が全て上手くいって、イルオナさんをまた取り戻せたのは、ホントに良かった!!
お陰で来週の《大決戦》が、なんだかとても楽しみになったし♪」
「だよね!」
わたしと真中は、そこで互いに微笑み合った。
そう。結果としては上々で、わたしもそれがあるから心救われている。ギルドのみんなからは、心配メールが沢山来ていたし、『新・隠しスキル発掘おめでとう!』コールも驚くほどたくさん来てた。
つくづくギルドの仲間みんなからわたし、支えられてるんだなぁ、って凄く感じた!
わたし、ギルド『黄昏の聖騎士にゃん』みんなのことが大好き! 感謝の気持ちで一杯。本当に、頑張って良かったぁと思った。少しでもみんなの役に立てて、その笑顔を見られて、ついでに自分の存在価値も感じられて、自分でも不思議なくらい凄く嬉しいって感じてる。
「それよりも今回また凄いスキルを発掘して、それが世界チャットから情報として流れて来た時。私ね、みんなと北門に居たんだけど、あの時は凄く興奮した!!」
「あはは♪ でしょ? でもまぁ実のところ、同じく今回もたまたまなんだけどね?」
あの組み合わせには、何かが隠されているだろう、とは思ってはいたんだけど。まさか召喚系のスキルだとは、思いもしなかったし。アストガルド・ファンタジーには存在しないと思われていた召喚系が、実は存在していることがこれで判明されたことになる。
きっとまた、さぞや攻略厨の人たちも大忙しになりそうだよ。
何とも、ご苦労なことで……。
わたしはそんな攻略厨の人たちの苦労をふと想像し、思わずその様子がどんなもんかと妄想するなり、苦笑ってしまう。
きっと検証のため、運営が喜ぶ重課金をやるんだろうなぁ? そう思って。
そのあと真中を見つめ、気持ちを切り変えて微笑みながら言った。
「でもそのお陰で、召還術士を育てている他の人たちと、ほんの少し差を付けられたかな?と思う。
あとは来週の大決戦まで、わたしのチート力がなんとか持続してくれることを祈るのみかな。
残りの課題としては……簡単に倒されないよう、これからは気を付けること、だよね??
は、ハハ……はぁ…」
何せ、連続で同じ人からやられてるからね。と言っても次の大決戦では、あの大弓のミレネさんは、わたし達と同じ勢力の仲間となって他勢力と共に戦うことになるので、逆にとても頼りになるお方になる訳でありますが。
「ん、ぅん……言いにくいけど、アリスの装備悲惨過ぎるもんね?
今回また、装備品壊れたでしょ? リフィルも、もう無いようだし……」
──ぐは!!
「ま、まぁ……それについては、確かに言い返せないのでありますが……は、ハハ……」
「──あ、うわ、そっかぁごめん!! 今の流石にちょっと傷ついたよね!? またヴォルガノたん倒すの一緒に手伝うからさ、お願い今の許して、アリス!!」
「あ、うん! ありがとう真中、気にしてないから大丈夫だよ♪」
わたしは苦笑いながら、そう返した。
真中はそれを聞いて、ホッとした様子を浮かべている。
まぁ本当のことを言うと、傷ついてはいるんだけどさ。真中も悪気があった訳じゃなく、これって結局のところ本当のことなんだもんね?
だってさぁ、わたし自身そこはずっと気にしていたところなので……。
わたしは真中に気づかれない程度で、小さくため息をつく。これはあくまでも、自分自身に対してのため息。
もっと強くなりたい……そう思って。
だけど問題は金策、って言うよりもリフィル対策かな?? 今の装備を維持するだけで、いまや凄く大変だもんね……?
実をいうと、昨晩は鍛冶屋のライアスさんのところではログアウトしていない。『毎回ログアウトする時には必ず寄るように』って言われてはいたんだけど……流石に今回ばかりは、無理だった。
だって、あの悲惨な装備品の状況を上から下まで見たら、流石のライアスさんも腰を抜かすだろうなぁ?と思ったし。何よりも、頼ってばかりでは申し訳ないなぁと思って。
装備の修理は、ヴルガノたんの討伐をやって、それで何か良い素材が出て来た時に、頼むことにする。
その間、装備はボロボロなままで悲惨だけど。でもまぁ、仕方ないよね?
「……それよりもアリス、これみてみ!」
「え? なになに??」
「アクセスがほら、凄く伸びてるよ!!」
「──わ、うわっ! でも、なんで??」
『なろう』でのわたしの作品へのアクセスがまた増えていた。
実はあれ以来、更新もせずの完全放置。それというのも、作品への酷評とか誹謗中傷メールの数々で流石のわたしもイヤになり、ブロックにブロックを重ね、遂にはもう覗くのさえも辞めていたんだけど……完全にアクセス衰退状態だったわたしの作品へ、何故かまた異常なアクセス数が殺到していた。
が、一瞬嬉しくなったけど、コレって……よくよく考えてみたら、つまりはあれなんだよね?
「アリス、どうしたの? 余り嬉しくないみたいだけど……」
「は、ハハ……コレってきっと、あれかなぁ~?と思ってさ」
「え? あれって?? なに??」
「だからほら、またスキル発動条件とかバカみたいに書かれていないかチェックしに来たのではないかと思われ……」
「……ああ、なるほど!! そっか…そういうこと、なんだ……」
「まあ、そんなもんですよ、わたしの作品なんてさ」
あれだけの酷評や誹謗中傷の数々を頂いた身と致しましては、流石にいまの自分の作品が現在どの程度のものなのかくらいは悟れちゃうもの。
そう思いながら、わたしは『なろう』の画面を呆れ顔に遠目に見つめていた。
すると、感想が一つ入っていたことに気づく……。
わたしは、なんとなくそれを開いて「まあ、どうせさぁ~……」という思いで、半眼に眺め見た。
『とても面白かったです! 続き、楽しみにしています。どうか、これからも頑張って下さい!!』
「……」
「アリス? 今度はどうしたの?? なんか…泣いて……ない? 悩み事があるなら、直ぐ言ってよ! 遠慮なんて要らないから、ね!!」
「うん……真中、心配してくれてありがとう。いつも、とても感謝してる。
でもね……今回はちょっと、ちょっとだけ…嬉しいことがあっただけだから、大丈夫だよ♪」
「嬉しい……こと?」
「……ぅん。わたしみたいな、『底辺なろう作家』にとっては、凄く……ね」
こういうのってきっと、沢山の感想や評価を当たり前のように貰えている人には分からない気持ちなのかもしれない。だけどわたしは、たったその一言の感想に心救われた気がして、思わずスマホを胸に優しくそっと抱き、心からその人に対し感謝し、涙を浮かべていたんだ──。
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