─6─

「ふぁ……もう朝かぁ~…」


 次の日の朝目覚めたあとも、カテリナさんがあの時にふと見せた冷ややかな視線が、わたしの脳裏の中で微かに残りなかなか消えずにいた……思わずため息をついてしまう。

 そして次に気になったのは、眞那夏まなかのことだった。「まだ怒ってたら、どうしよう……」そう思って。

 

 二階の部屋から下へと降り顔を洗っている時にも、朝ご飯をもりもりと食べている時にも、歯を磨いている時にも、そして学校へ今こうして向かっている間さえも……ふとしたことで、2人のことが交互に思い出し、不思議と頭の中から離れてくれない。


 そうして学校の教室へ到着し、わたしはため息と共に机の上へ鞄をおく。



「よっ! アリス、おはよ~ん♪」

「……」


 眞那夏まなかがわたしの机の上に軽く手を乗せ、まるでいつものような笑顔で明るく挨拶をしてくれたのだ。

 わたしとしては思ってもみなかったことだったから、心はたちまち躍る。



「──お、おはよーっ! 眞那夏ッ!!」

「昨日の夜はホント、ごめんねー? A・F入れなくてさ……。流石に昨日はまだそんな気分にはなれなくて……でも、もう吹っ切れたし、私なりの答えも一応ね、昨日のうちに出したから。安心してよ、アリス」



 ……答え?



「それって……どんな?」

「……どうしても、聞きたい?」


「……ぅん」

 そりゃあだって、気になるよ! そんな言い方をされたらさぁ~っ……。


 だけどわたしは内心、凄く怖かった、心臓の鼓動が自然とバクバクと鳴るのがわかるほどに動揺していた。

 昨日のカテリナさんの件もあったし、わたしはいま自分に自信がなかった。だから怖かった、怖くて堪らなかった。でもそれでもここで眞那夏の本心をちゃんと聞いて置かないと、生涯後悔する気がしたんだ!


 眞那夏はわたしの返事を聞くと、何故かちょっとだけ顔を背け、照れ臭げに言う。



「何があっても……私はこれから先、ずぅっーとアリスのそばに居る、って決めただけ」


 え? って……。


「どんな時も?」

「そう!」


「何があっても?」

「当然!」


「今のチートスキルが無くなったとしても? 狩りとかで足手まといになったり、迷惑かけたとしても??」

「つか、そんなモン当たり前でしょう? 私はただアリスとこうやって傍で一緒に居るだけで、もう十分楽しんでんの! だからそんなの、全く関係ないよ」


「………」

 その瞬間、昨日の夜に起きたカテリナさんとの出来事が、わたしの頭の中からスッ……と静かに消え去ってゆくのを感じた。

 わたしはそう言ってくれた眞那夏に感謝し嬉しくなり、それなのに情けないけど、次第に涙ぐんでくる……。


「生涯?」

「うん」


「永遠に?」

「ああ!」


「……。たまにわたしが我が儘言ったとしても?」

「──え!? あー……いや、ンー…それについてはアリス……そのぅ~出来たらでいいんだけどさぁ~、一度一緒に改める方向で考えてみることにしない?」

「……」


 わたしは冗談のつもりでそう言ったのに、眞那夏まなかは困り顔をして真面目にそう返してくれた。

 わたしはそれが可笑しくて思わず吹き出し小さく笑み、それからそんな真中の胸に軽く頭を乗せ、昨日のことで凄く悩んでいた自分自身がまるでバカらしく思えるほどに、今は心が落ち着き、目尻に涙を溜めたままこう零す。


「……ごめん。我が儘は言わないことにする……。

だから眞那夏お願い、出来るだけでいいから、無理しなくてもいいから、これから先もわたしの大切な友達として……ずっと、ずっとわたしの傍に…居て」

「……」


 眞那夏まなかは最初驚いていたが、間もなくそんなわたしを軽く抱き寄せながら微笑み。それから頭を優しげに撫で、そして静かに確かに確実に頷き、同時に一言だけ、そっと優しくこう言ってくれた。



  『──うん』




──────────────────

 第二章 《デュセオルゼ=ヴォルガノフス討伐!》 おしまい。


 本作品をお読みになり、感じたことなどをお寄せ頂けたら助かります。また、☆☆☆評価やコメントなどお待ちしております。


 今後の作品制作に生かしたいと思いますので、どうぞお気楽によろしくお願い致します。

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