第3章 六大城攻略・女神イルオナ奪還大作戦!!
─1─
「……て言うかお前たち、更に百合度がパワーアップしてやしないか?」
「……そう、ですよね?」
お昼休み、学校の屋上へやってきた
わたしとしてはただ単に、
「つか……まさか妬いてんの? 2人してさ」
眞那夏が呆れ顔を見せ、2人にそう言ったのだ。
「──!? ば、バカ、眞那夏お前そんなことなんか!」
「……それはありますね。アリスをこのまま彼女に奪われ取られてしまうんじゃないかと心配ですよ、僕なんかは……」
「……」
わたしは柊一のその言葉を聞いてちょっと驚き、それから頬を赤らめ、何だか申し訳ない気分になり、それとなくソッと眞那夏から離れようとした。が、
「残念でしたぁあー! アリスはもう私のだから、あなた達には渡しませーん。べぇーだぁ♪」
と、
──うわっ、わ! 今のめちゃめちゃ可愛い!!
そんな眞那夏が、なんだか急にキュンと愛おしく思え、わたしもついその胸に再びしがみつき、その優しくて甘い薫りに誘われ癒やされながらゴロニャン♪となる。
眞那夏も頬を赤く染め、そんなわたしの頭をニコニコとしながら優しげに撫で回してくれた。
「──ま、まさか! お、お前ら遂に、“イクとこまでいった”ってことなんじゃ……」
「──え?」
「──へ?」
「……なるほど。この尋常ならぬ仲良さ。そう考えた方が、色々納得できますからね?」
「いや、いやいや!」
「ない、ないない!!」
このまま放っておくと話が在らぬ方向へと向かいそうだったので、仕方なくわたしは眞那夏から少しだけ離れた。
……といっても、ほんのちょっとなんだけどね? 大体50センチくらい??
ごめん、よく見たら10センチでした……。
「それはそうと、今晩行われる《決戦》の方針がまとったから報告しようと思うのだが……お前たち、聞く気とやる気の方は一応あるか?」
「……
それはもしや、慣れ、って奴ですか?
だとすれば、そろそろ人間性が疑われ始める頃合いですから、気をつけた方が良いかと思いますよ?」
「そうそう! 三雲のそういうところ、ぜひ直して欲しいな!!
……せめてさぁ~、そのぅ~……柊一と同じくらい?」
まぁ理想は、アルトさん……なんだけどね?
でも柊一もどこか知的なところとか、なんとなく素敵なんだよねぇー。
わたしはそれとなく頬を赤らめそんな柊一を横目に見つめ、意味深に言い繋いでみた。でも間が悪く気づいて貰えなかったので、ちょっと残念に思う。
わたしって、つくづく運がないなぁ……。
まあもっとも、仮に気付かれこちらを見つめられたとしても、わたしのことだから結局は目をサッと背け何事もない振りをして、自分のそんな気持ちを悟られ気づかれないよう誤魔化すんだろうけどさぁ?
「お前たちは……鬼か?
直すのは別にいいけど、それで直したらこのオレと付き合ってくれるのか? アリス……それだったら直してもいいぞ?」
「──は?! それとこれとは話がまた別だと思われるのですが……!!」
わたしは唖然とする。
だって意味がわからないし。その言葉、柊一からだったら凄く嬉しいんだけど……三雲からだと、なんか微妙なんだよねぇ~……。
そもそも三雲が最近わたしに興味示してるのって、つまりはアレなんでしょう? 単にわたしの“身体”だけが、目的だからでないの??
このスケベ! 下心、見え見え過ぎ!! そんなのサイテーだよ!
悪いけど、わたしにはまだそういうのって絶対無理だからさ、他を当たってください。わたしはまだ、ロマンチックな普通の恋愛をしていたいの!
プラトニックラブが、今のわたしの理想形なんだから。
「つか。ごめん……さっきの三雲くんの言葉って、イヤミだったの? 私にはちょっと……よくわからなかった」
「あ、それはね! 眞那夏の心が純粋だから、だと思うよ!!」
「ちょ、ちょっと待てぇーい! それはつまり、オレの心は汚れている、とでも言いたいのかよ? アリス……」
「そこは確認するまでもなく、つまりはそういうことなのだと思いますよ?
わたしは柊一の言葉を聞いて、「うんうん」と力強く両腕を組み当然とばかりに大いに頷いてやる。
そうそう、三雲は大いに反省なさい。
そもそも誰それ構わず好意を寄せるとか、余りにも軽過ぎなのよ。
わたしはそう思い、三雲を半眼に見つめる。
まぁ……お互い友達として居る分には、このままでも別に構わないんだけどさぁ~。
そのあと三雲は深いため息をつき、話を始めた。
「まあ、いいや……。
今回の《決戦》での目標は、『女神イルオナの奪還』に決まった」
「え?」
わたしと眞那夏は、三雲の言葉を聞いて驚いた。
「なんでまた、イルオナさん??」
「そぅ……だよね。どうせなら、『水のエレメント・女神シェリル』のとかの方が新しいし、同じ攻略するにしても楽しめたと思うけどな?」
「ああ、もちろんそう言う意見もあったが。前々回手に入れた女神イルオナの『炎属性』の関係で、装備を『火系強化』したギルドメンバーが結構多くてな。
しかも次回が《大決戦》というのもあるから、ここは合理的に考え、そういうことに決まったんだよ」
言われてみるとなるほどで、わたしと眞那夏はそれで互いに見つめ合い、肩をすくめ納得する。
「情報を見る限り、《ステルス・ホールド》を使えるのは、まだアリスだけみたいだから。ここは何が何でも他のギルドよりも先回りして、確実に奪還しておきたい。
だからアリス、今回も頼むよ」
「ン、うん!! 頑張る!」
「アリス、今回も私が守って上げるから安心して!」
「わ、ありがとう
「あはは。つか、気にしなくていいよ♪ 前回みたいなことにならないよう気を張って守って上げるからさ、おま任せあれ!」
わたしはそれを聞いて、今にも真中に恋しちゃいそうになるほど全身真っ赤に染まる。
そして真中の手を真剣な表情でサッと取り、満面の笑みで何気に素早く抱きつく──!
「……いや、二人でまたそうやって楽しんでいるところすまないが。実はそのことについてなんだけど……今回のパーティー編成で、真中には“他のパーティーへ移って貰う”ことに決まったんだ」
「──え?」
「──は?」
わたしもショックだったけど、眞那夏は更にショックな表情をしている。
「つか。それって……どういうことなの? 三雲くん」
「だよね……急過ぎて、意味がわからないのですが……?」
「いやな。カテリナの奴が、どうしてもアリスと同じパーティーに入りたがって来てさ」
……カテリナさんが??
だけどカテリナさんは、わたしのことを嫌っていたんじゃ……?
そうこう思っていると、ランズこと
「眞那夏が、どうしてもパーティーから外れたくない、ということであれば。この僕が、代わりに抜けても構いませんよ。
どうしますか?」
「……」
柊一……それって、優しすぎだよ。
わたしは少しだけ寂しく思い、つい俯いてしまう。
ギルド補佐ということもあり、これはきっと事前に話し合いは既に出来ていたのだと思う……。三雲と柊一がその時、何か確かめ合う様子が窺えたから。
だけど眞那夏に対するそれは、あくまでも優しいものだった。気を使ってくれてのことなのだというのは、直ぐにわかる……でも、
どうしてカテリナさんがここで出てくるの?!
わたしには、それこそ意味がわからない!
「つか……気を使ってくれてありがとう……でも、ギルド全体のことを考えたら、私が抜けるのが筋だし。そうするのが最善だと思うからさ……」
「──ま、待って!! そんなの、おかしいよ! そもそも眞那夏が抜ける必要なんか、ないって!! そのままでいいよ、抜けなくていいから!
大体、三雲も柊一もどうしたの? だってこんなの……変でしょう? そんな納得の仕方しないで!!
こんなの絶対、おかしいよ!
そもそもカテリナさんと、今までパーティー組んだことなんかなかったのに。急にこんなの、変だよ!!」
「……ばか。ついこの前、黒龍狩りでパーティー組んだのをもう忘れたのか?
お前その時に、世話になっただろ、アリス」
……た、確かに、そうだけど。
でも、納得なんかできない!
「カテリナ
何せ、アリスの“チートスキル”があれば、個人ランキング入りも期待が高まりますから……」
あ! ……それって、つまり……。
「まあ、要するに……“そう言うこと”さ。
これにはGMのねこパンチさんも言い返せなくてな。随分と困ってた。
アリスと眞那夏にはかなり申し訳ないことになってしまったと、お詫びもしていたよ。ゲーム内通知に、その件でお詫びメールがもう届いていると思うが。そう言うことだから、ねこパンチさんを責めないでやってくれ。
……頼むよ」
三雲らしくないほど、本当にすまなそうに軽く頭を下げていた。
それを見つめ、わたしはもう何も言えなくなる……。
隣に居る眞那夏のことが心配になり様子を窺うと、眞那夏もそこは仕方なさそうにため息をつき、困り顔にも笑みを浮かべている。
「アリス、これはもう仕方ないよ。つか、私の分まで、頑張ってきて!
私も、他のパーティーでギルドのために、少しでも貢献して頑張るからさ!」
「……」
……今は個の時代だと、昔、誰かが言った。個の主張は、基本的に尊重されるべきであるのだとも。
だけど、これもそれに当てはまるのだろうか……?
だってこれだと、言った人ばかりが得をする。
本当に良い人は、損をしてしまう。
そんなの何か……何かがおかしいと、わたしには思えてならなかった……。
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