ー8ー

 炎のエレメント・女神イルオナが居る城は、数多くのプレイヤーたちから襲撃を受けていた。


「こりゃ、もはや防衛不可能か……」

「ならば代わりに、水のエレメントでも襲撃しちゃうとかどうよ?」


「今からじゃ、とても無理でしょ? 距離的に遠すぎますぜ、旦那。時間だって、残り少ないし」

「ならば、もうここをやるしかない、ってことよね?」


「……そうなっちゃうのかな?」


 アルトさんとランズさんが状況を見て即座に話し合い、もう答えが出た様子だ。


「よっし! 今から、奴らをなぎ倒しに向かう!! 

アリス、補助と《例のやつ》お前のタイミングで任せるから頼んだ!!」

「は、はい!!」


 同時に、ギルドチャットへ『ダメ元で仕掛けてみる!』と報告された。


 と、ほぼ同時に!



「『黄昏の聖騎士にゃん♪』の底力見せてやるだにゃー!」



 GMの猫パンチさんのちょっと笑えるいつもの掛け声のあとに、「「にゃにゃにゃー♪!」」」とギルドメンバー全員がそう乗りで書き込み、総攻撃が瞬く間に開始される。


 その見事なまでのギルド連携に、わたしは凄い感動を覚えた。


 わたしはアルトさんの傍で他プレイヤーからの攻撃をかわしつつ、マーナからも守られながら、城内部へと突き進んだ。少しでもみんなの役に立ちたい! そんな思いが強かったと思う。

 既に城内にある防御柱の殆どは破壊され、女神イルオナは包囲されていた。それでもイルオナは、相変わらず冷徹な余裕の微笑みを浮かべている。


 ──が、次の瞬間。

 彼女の胸に剣が突き立てられ、彼女の口元から血が流れうめき声を苦しげに上げていた。


「うへ。相変わらず、リアル過ぎ……それでいてイルオナさん、相変わらず色っぽい…」

「アリス!! 《例の奴!》」


「──あ、はいっ!」

 わたしは急ぎ白と黒の二つ魔法を同時発動させ、上級召還術士スキル〈フェルフォルセ〉を唱えシェイキングし、《ステルス・ホールド》をアルトさんに向け、訳も分からず放った!


 見ると、グランセルという名の上位ランカーへと向かって、アルトさんは突撃をしていて、間もなくその姿は掻き消える。


 グランセルは動揺し、やはり他のプレイヤー同様に剣を手当たり次第振り回す。

 が、次の瞬間その脇腹にまたアルトさんの長剣が突き刺さり抉られクリティカルとなり……グランセルは絶叫をあげながら、その場から消滅した。


 見事だ!!


 同時に攻略・厨の人たちも、余りの見事さに「おお!」と歓声をあげている。



「アルトさん、凄い!! すごいよ、今の!!」

「アリス、! 気をつけて!!」


「……え?」

 次の瞬間、わたしは胸に痛みを感じた。


 なんだろう?と思い見ると、わたしの胸に弓矢が深々と突き刺さっている。

 そのわたしを狙い撃った相手を、ふと口元から血を流し見つめるも間もなく。更にまた数本の弓矢が、連続でわたしの胸に突き刺さり抜け、装備品が大破し、耐久度0大破消滅……。と同時に、上半身の下着に僅かばかり残るほどの裸にも近い姿となって……わたしは間もなく……口と腹部から血を多量に流し、そのリアルな痛みと恥ずかしさに耐えきれず、涙を流しながらも膝を落とし……その姿は崩壊消滅した――。

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