ー4ー


「さあ-! 早く帰って、A・F! A・F♪」


 学校での部活動を終え、わたしは家へと帰ろうと急ぎ足に下駄箱へと向かっていた。


 因みにわたしが入ってる部活は、名ばかりの文芸部で、部員はわたしを入れてもたったの5人だけ。やってることも皆んなバラバラで。マンガだとか小説をただひたすらに読み漁ってるだけの人も居れば。マンガとかイラストを描いてる人も居る。


 文芸部なのに、マンガとかイラスト?と思うかも知れないけど。部員が少ないので、部費確保の為にこうなった訳。


 それに、絵を書ける人が居たら、表紙とかをお願いして描いて貰えることもあるので、これが意外にもお得なんだよねっ!


 ただ、パソコンが型落ちの1台しかないのが、どうも微妙らしくて……。度々パソコンがフリーズするから、イラスト専門の人がそれでいつも嘆いてる。


 因みに、わたしもマンガと小説を読み漁って、自分の作品制作に生かそうと努力だけはしているつもり。

 でも結果は……『底辺ネット投稿作家』という有り様なのでありますが…。

 


 チャラリン♪


 丁度靴を履いていたところへ、スマホの着信音が鳴った。

 なんだろう?と思って確認すると、LINEに『新着あり』の表示がされていた。


 んで、タップして更に誰だろうと確認すると、顔はイケメン、でも性格微妙な草川三雲からだった……はぁ~っ。

 正直なところ、そのままスルーしたい気持ちで一杯だけど。そうすると、あとでしつこく絡まれるのが落ちなので、仕方なくタップし、内容を半眼ながらも確認ポチッ☆


『アリス、お前。A・F、やっていたよな?』


「…………」

 わたしはそれを見るなり、眉間にしわを寄せ、即座に返信してやる。


『やってるけど、それがなに?』

『お前、噂の補助スキルのこと、なにか知ってるか?』


「……」

 これはきっと、《ステルス・ホールド》のことだと思う。でもこれは、ギルド内の極秘情報だから、教える訳にいかない。

 それに、こんな有力な情報をこんな人に教える訳がない。


『なにそれ? 悪いけど、知らないでちゅー』

『ちゅー? なんだよそれ、相変わらず可愛い奴だなぁ~お前は』


「──ぅわ、がはっ!」

 わたしは不覚にも、頬が真っ赤に染まった。

「なっ、なにを……急にッ!!? はっ、恥ずかしいヤツだなー!」

 とか独り言いながら、顔は真っ赤なままなんだけど……。


『昨日さ、気になる小説があるって、アリスにそのこと言っただろ?』

『へ? あー、ぅん。言ってたね?』


『その小説の中に、この補助スキルの有効性をモロに描いた作品があったんだ』

「…………」

 や、ヤバイなヤバいぞ、それっ! 間違いなく、わたしだあ~っ。やっぱり草川三雲にあれ、読まれてたんだ?


はギルド内の者、それも信頼できる一部の者にしか知らされていないだからさ。それで念のため、確かめてみたんだよ。

なにせ、ニックネームがお前と同じ“バカ丸出し”な名前だったからな』


「──ば、バカ丸出しって! ちょっとひどいなぁーっ、それはッ!!!」



 ……っていうか、あれ? 待ってよ…。



『まさか、草川くんさ。ギルド《黄昏の聖騎士にゃん》に所属していたりする?』

『ああ、所属してるよ。

一応これでもオレ、そこのだし』


「……か…んぶ?」

 今まで知らなかった。これは、眞那夏まなかも知らない情報だと思う。


「て言うか、アリス。お前いま、自分で墓穴掘ったよなぁ? バぁ~カ。

ギルド名確認した時点で、アウトだろ? 

今のなら、特命係の右京さんじゃなくても気づけちゃうレベルだぞ。しかも意外に、うそが上手ときた……。

今までオレ、お前のこと、お人好しでバカ正直な奴だと思っていたのにな……。感心もしたけど、同時に、呆れさせられもしたよ」

「──え?」


 後ろを振り返ってみると、草川三雲がスマホ片手に立っていた。

 しかも、このわたしのことを呆れ顔で半眼に見つめているし。微妙に怒ってる?? もう泣きそう~……。


 わたしは間もなく、草川三雲から勢いよく詰め寄られ『壁ドン!』された!?


 草川三雲の息づかいが分かるほどの、至近距離。普通なら、色々と期待なんかして、どきドキ・ドキリとしちゃうシーンなんだろうけど。相手が相手なので、単に冷や汗を掻かされただけなので参るよぉ~……。


「あの小説を書いたの。アリス、お前だろ?」

「……は、あはは…──はひっ!!」


 わたしは顔面蒼白になりながら、苦笑いつつも素直に告白した。



 いあいあ、まるでロマンティックなんてモンじゃなかったんですからあ──っ!!

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