第23話
暗闇のコンテナ置き場に、突如爆発が起きる。
豪炎が曇り空を紅く染め、炭色の黒煙が天空へと向かって上って行く。
「ハアアアアアアアアアアッ!!!」
「セエエエエエエエエエヤッ!!!」
コンテナ群の中で2人の女性が唸り声を上げ、互いの得物をぶつけ合う。
その2人は言うまでもない、シエラとベティーナだ。
シエラは真っ赤な髪をなびかせ、鋭いトカゲ目を暗闇に光らせながら【ドラゴンズ・アーム】を振るう。
ベティーナも【ナパドゥ・チトー】のチェーンソーを機動させ、片目を潰されたハンデがあるとは思えない俊敏な動きでシエラと相対する。
踊るように噛み合う魔装具と魔装具、共鳴し合う閃光と火花。
そんな中、
「シエラ、退がれ!」
男の声が響いた。
それに呼応するかのように、シエラはベティーナから離れ、コンテナの影に隠れる。
途端、【CIS ウルティマックス100
コンテナの影から姿を現した七御斗が撃ったのだ。
「ッ!」
ベティーナは弾幕から逃れ、すかさずコンテナの影に身を隠す。
【生命の石】を失った彼女は、以前のように防御魔法を展開出来なくなっていた。
ベティーナが隠れた後も、七御斗の機銃掃射は止まない。
しかも
ベティーナは左脚から【ストーガー 水平2連
ベティーナはコンテナから銃だけ出して撃つ。
しかし狙って撃っているワケではないので、七御斗にはかすりもしない。
そして機銃掃射により弾を切らした七御斗は、【CIS ウルティマックス100
「くっ、逃がすか!」
逃げる七御斗を見たベティーナは、得物を追う豹が如く七御斗を追う。
しかし
コンテナ群が囲う開けた道を、真っ直ぐに走り続ける。
七御斗は逃げる最中、
「こちら
さも独り言のように、無線に向かって言う。
『上々だよ
七御斗の無線機の向こうで、PCモニターを見ながら春が言う。
上空の無人偵察機が戦況を鮮明に映し出し、確かに第3の眼として機能していた。
「よし、予定通りプランAで行く。アイツがポイント
『了解。巻き添え食わないでよ』
七御斗は春との通信を終えると、突如道を曲がる。
ベティーナから見ればコンテナの向こうに姿を隠した形だ。
「どこに逃げたって……!」
急ぎベティーナも七御斗の後を追い、七御斗が曲がった道に入る。
しかし道に入った瞬間、彼女は足を止めた。
何故なら――――――彼女は見てしまったからだ。
道一面に設置された、大量の
「しま――――ッ!」
ベティーナは、反射的に腰のポーチから宝石を取り出す。
そして上空からベティーナの動きを見ていた春は――――――
途端――――――設置してあった大量の
もし当たれば、人間など言葉通り〝ミンチ〟にされてしまう。
「――――ッ!!」
しかし――――――無数の鉄球がベティーナの身体を引き裂くよりも早く、彼女は取り出した宝石を地面に叩き付けた。
そして宝石が割れた瞬間、宝石を叩き付けた場所から、突如分厚いコンクリートの壁がそそり立つ。
ベティーナの宝石魔術である。
地面のコンクリートを、身を守る壁へと変えたのだ。
「ハァ……ハァ……ハァ……!」
間一髪。
ベティーナは息を荒げながら冷や汗を垂らす。
もしここが罠だらけの場所だと分かっていなかったら間違いなく反応が遅れ、身体をバラバラにされていたであろう。ベティーナはそう思った。
しかし安堵したのも束の間――――――
「デヤアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
ベティーナの背後のコンテナの上から、シエラが現れる。
シエラは【ドラゴンズ・アーム】を振りかざし、ベティーナに襲い掛かった。
入り組んだ場所を最大限に利用した、隙を与えぬ縦横無尽の攻撃。
これぞ七御斗の考えた戦法であった。
「クッ!」
再びベティーナはシエラと白兵戦にもつれ込む。
その様子を、七御斗はコンテナの影から見守っていた。
「こちら
七御斗はコンテナの影に隠してあったバッグから【シグアームズ SIG556
『って事は…………俺の出番だな』
正樹が暗視スコープを覗いた体勢のまま、七御斗に答える。
「ああ、プランBだ。頼むぞ」
『しっかりやんなさいよね。ビビんじゃないわよ』
七御斗に続き、春も言う。
『だ、誰がビビるかよ。俺を誰だと思ってやがる。俺は前年度IPSC総合2位の、越前谷正樹様だぞ? 的を目の前にして、ビ、ビビるワケねえだろうが』
勇まし気に正樹は言い返す。
だが言葉とは対照的に、その声は少しだけ脅えているようだった。
無線機の向こうにいる七御斗達には分からなかったが、この時、銃を握る正樹の手はカタカタと震えていた。
正樹は、本当はまだ怖かったのだ。
人に向けて、銃を撃つという事が。
七御斗は正樹の声から、彼の心情を察する。
「……正樹、お前――――」
『俺は、大丈夫だ。お前は自分の心配をしろ、宿敵』
正樹は余計な心配はさせまいと、気丈に言って見せる。
その言葉に、七御斗もこれ以上彼の心情に土足で踏み入りはしなかった。
「……分かった。お前を信じるよ、正樹」
『へっ、当たり前だ。大船に乗った気でいろって』
正樹はいつも通りの声色で軽口を叩く。
そして震える手に力を込め、【バレット M82A1
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます