第30話「スペードのA」

 魔女ヤヒュニアによって女の子となり、克巳から克美になった大津克巳。

 そんな彼女は琴美の勧めでプレゼントとしてロールケーキを買う。

 だが、その前にスペードのAが現れる。

「ロールケーキは置かせてもらうよ」

「そうしておけ。何なら家まで帰って冷蔵庫に置けばどうだ?」

「必要ないよ。双剣使いだって聞いてるし、スペード最強の兵士なんだよね?」

「その通りだ。私を倒せば当面赤の女王の侵攻は無い」

「なら。やるしかないね、啓介!」

「ああ、分かっている!」

「「マジカル、オンステージ!」」

 すると二人は光に包まれる。

 克美にはまずガラスの靴が履かされ、啓介には金で柄を装飾された剣が持たされる。

 そして光が衣服へと変化する。

 克美の衣装はシンデレラらしく、青いお姫様らしいドレスへと変化していく。

 啓介の衣装は王子様らしく、ファンタジックな衣服へと変化していく。

 そして光が収まると、二人はダンスを踊るように動いた後でこういう。

「「異世界より現れし尖兵よ」」

 まず克美がこういう。

「シンデレラに与えられし力を」

 そして啓介がこういう。

「姫を守りし王子の力を」

 二人は再び息を合わせてこういう。

「「恐れぬのなら絆の剣を見よ!」」

 そして啓介は即座にスペードのAへと踏み込む。

「今までのトランプ兵を倒してきただけはあるな。だが!」

 スペードのAは片方の剣で啓介の剣を防ぐ。

「っ!?」

 啓介はとっさに身を引いた。

「ほう。私の狙いを読み解くとはな」

「片方の剣で防いだなら、もう片方は攻撃用だろ?」

「ここまで戦ってきたのは伊達ではない、ということか」

 克美はただ見ているしかできなかった。

 スペードのAが剣を振り、啓介がかわす。

 啓介が剣を振り、スペードのAが受ける。

(頑張ってというのが普通。でもいえない。なんでだろう……)

 もしかしたら、と克美は思う。

 いや、だが後一歩が踏み出せない。

(ロールケーキは手でも持ち歩けるけど……)

 すると克美はあることを思い浮かぶ。

(持ち歩き……そうだ!)

「啓介、あの時みたいに剣を投げれば!」

「そんなことしても、あの剣で俺の剣は防がれるぞ」

「あの剣に向かって投げればいいよ。二つの剣を持ち歩くには注意がいるからね」

「なるほど。とりゃあ!」

 すると、スペードのAはこういう。

「くっ!?軌道が狂う!」

「今だ!」

 啓介はそういって剣を取り、スペードのAを切り裂く。

「これで終わりか。だが悪くない。強い奴に出会えたからな」

 そういってスペードのAは消えていった。

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