第27話「スペードのQ」

 魔女ヤヒュニアによって女の子となり、克巳から克美になった大津克巳。

 そんな彼女は古垣怜央とのデートを終えた翌日、

伊賀啓介と共に変身してスペードのQのトランプ兵へと立ちふさがる。

「その斧を食らったらただじゃ済まないな……」

「だね。どうにか隙を見つけないと」

 克美がそういうとスペードのQはこう返す。

「無駄だ。私の斧捌きに隙などない!」

 そういって振り下ろされる斧には案外スピードがあり、

二人はとっさに身を引いてなければ切られていただろう。

「ハンマーと違って慣性がない……このままじゃジリ貧だ」

「分かってるけど、隙がない!近づいても啓介が斧を食らうだけだよ」

「くっ、どうすれば……」

 考えている間にも斧は振り回されていく。

 何とかよけるのが精一杯だ。

「どうした、にげてばかりでは何もできないぞ!」

「ごもっともだが……どうすれば!」

「斧を振った後にはどうしても隙ができる。けど、その隙は小さいから啓介が突っ込むと同時に切れる」

「その隙をどう使うか、だな……」

 そうこうしている間に斧の下ろされるパターンも変わっていく。

「このままだとかわしきれない……なら!」

 啓介は斧がもう一度振り下ろされるタイミングを見計らって全力で剣を投げる。

「でりゃあ……!」

 そしてそれと同時に走り出す。

「くっ、剣さえなければお前に負ける要素など、ない!」

 そういってスペードのQは剣をかわす。

「かかったな!この剣はお前がかわす前提で投げたんだ」

 すると啓介は投げた先で剣を取り、スペードのQの懐へと入り込む。

「しまった……!最初からそれが狙いだったか!」

「当たり前だ。このくらいは、ちゃんと計算している!」

 そういって啓介はスペードのQを切り裂いた。

「ぐふっ!?」

 そういってスペードのQは息絶え、他のトランプ兵同様消えていった。

「中々に強敵だった。もし突破口を見つけられなかったら死んでたのは僕達だろうな」

「スペードのJの時は状況に助けられたところが大きかったみたいだね。あなどってたよ」

 克美も啓介と同様、スペードのQの強さをたたえていた。

 一方その頃。

「スペードのトランプ兵も後二人か……」

「ええ。このスペードのAと、スペードのKが控えております」

「他のトランプ兵を差し向けるのは当面却下だ」

「それはどのような心積もりで?」

「もしスペードのトランプ兵が全滅したなら原因を探りたい」

「それが赤の女王様のお心なら……ですが、その心配は不要です」

「私やKのどちらかはかならずや異世界の守護者を打ち倒すでしょう」

「その意気だ。私も民の期待に押されここまで来たが、守護者が弱いなら私が正しいというだけの話だ」

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