第25話「遊園地のあれこれ」

 魔女ヤヒュニアによって女の子となり、克巳から克美になった大津克巳。

 そんな彼女は古垣怜央と賭け麻雀、もとい賭けゲームをしたのだが負けてしまう。

 そのままデート当日になったのだが、

克美は思った以上にデートへ備えようとする自分自身に戸惑いを見せていた。

 そして朝飯の時間。

「悪いけど、今日は一人で巡りたいんだよ」

 それに対し飯塚琴美はこういう。

「どうしてなの?せっかくの修学旅行なのに」

「まあ、そういう時もあるさ」

 そういったのは伊賀啓介だった。

「確かに普段から私達は親しいから、一人っきりになりたい気持ちは分かるわ」

「琴美はこういう機会が二度と来ないと思ってるの?」

「貧乏なあなたには無理よね」

「それをいわれたらぐうの音も出ないけど……でも、またいつか来れると思うから」

 克美はそういって集合場所である入場ゲートから走り出していった。

 そして人気小説をモチーフにしたゾーンに入るための整理券を取った上で、

近くの広場に彼女は腰掛けていた。

「ほう。やればできるじゃないか」

「まあ、僕も女子と縁がないわけじゃないからね。着こなしはちゃんと見れるよ」

「今僕って……」

「と、デートだし女の子した方がいいわね」

 克美は女子と縁がないわけではないので、口調も真似できないわけではないのだ。

「ちょっとスイートビール買っていいか?」

「別にいいわよ。あたしも気になってたし」

 スイートビール。正式名称ではないがこの名称で呼んだ方がいいだろう。

 要は子供でも飲めるビールであり、ゾーンのモチーフとなる小説にでてくる飲料なのだ。

 ちなみに、味のほうは激甘なのでそういうのが嫌いな人はまずく感じるらしい。

「さすがに朝早くからそこそこ並んでるわね」

 克美が乗ろうとしていたアトラクションには既に列ができていた。

 とはいえ早朝なのでせいぜい45分待ちである。

 逆にいえば早朝でなければ余裕で120分は並ぶのだ。

 そして並び終わり、アトラクションに乗り込んだ克美達。

「キャー!」

「凄い迫力だ。克美が叫ぶのも分かるな」

 ちなみに克美はトランプ兵との戦いを経験してきたので嘘泣き、もとい嘘叫びのはずだった。

 しかし、である。

(何だか分からないけど本当に怖さを感じる……トランプ兵の時と違って傷は受けないのに)

 それが女の子としての怖さである、ということに克美は気付いてなかった。

「どうだった、克美?」

「いや、実際凄かったわ。正直少しびびったもの」

「それじゃあ、次はこのレストランだな」

 そうして克美達はデートを順調に過ごし、そのまま駐車場へと向かう。

「楽しかったか?」

「まあ、思い出にはなったわ」

 克美は怜央にそういってから別れた。

「ふう、後はみんなと合流して何事も無かったかのように振舞わないとな」

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