第23話「意地を賭けた戦い」

 魔女ヤヒュニアによって女の子となり、克巳から克美になった大津克巳。

 そんな彼女は修学旅行先である京都でゲーセンに向かったのだが、

そこに古垣怜央が現れた。

 克美はそれに戸惑いを隠せなかった。

「ひょっとして君もここを調べて来たの?」

「ああ。偶然だな。だが、相変わらずだなお前は」

「相変わらずって何だよ!」

 二人はお互いが意地の張り合いになり、口論を始めた。

「女の子の癖に恥じらいもない、服装も無頓着なんだからな」

 確かに、克美はそれなりに女の子らしい服装を着てきた。

 だが彼女は着こなし方が結構ぎこちない。

 見た目が悪いわけではないが、着慣れてないような雰囲気を出していたのだ。

「それが分かるのもすごいけどね」

「俺は父さんがファッション雑誌の編集でな。男性メインだが女性の服もそれなりに齧ってる」

「まあ、どうでもいいよ。君こそ口がうるさ過ぎるから」

「そう思うなら、このゲームで賭けをするのはどうだ?」

 怜央は近くにあった格ゲーを指差していた。

 それは最近妖怪におされ気味だが、未だ人気はあるキャラクターを題材にした格ゲーであった。

「賭け?何を賭けるの?ゲーマーの僕にゲームで勝てると思ってるのかな」

「お前がゲーマーだろうと、俺もこのゲームはそれなりにやりこんでいる」

「分かったよ。なら、僕が勝ったら『女の子の癖に』とかじゃなくてもっと優しい言い方にして」

 克美も怜央の口うるささはその性格ゆえだと感じていたため無下にもできなかったのだ。

「控えめだな。躊躇してるのか天然なのか……だが、俺は躊躇しない」

 怜央はそういうやいなやこう続ける。

「明日は完全自由行動だったな」

「集まるときは班ごとだけど、それがどうかしたの?」

「俺が勝ったら明日デートしろ」

 怜央の賭け金(金じゃないけど)に対し思わず克美はこう返した。

「いいよ。そのくらいの方が張り合いも出る」

「ゲームに精通してるからちょっと詳しい程度の相手に負けるわけない、といいたいのか?」

「それも含めて心理戦だよ。怒りに駆られた相手は案外脆いからね」

 そうして二人は格ゲーのコントローラーを握り、二人対戦を選択する。

 一ラウンド目は克美が優勢だった。

 彼女の操作するキャラクターは小柄だがスピードは早く、

ガードからのすばやい反撃で怜央の操る格闘家タイプのキャラを寄せ付けない。

 しかし二ラウンド目からは様子が変わる。

「そんな、掴まれるなんて!」

「君の動きは凄いが、セオリーに忠実すぎるんだ!」

 怜央は克美の動きを二ラウンド目にして掴んだらしく、その上を行く。

 さらにはパワーアップのためのゲージを効率よく貯め、三ラウンド目まで持ち越す。

 そして怜央は三ラウンド目開始早々にキャラをパワーアップさせたため、克美は押されてしまう。

 どうにか逃げきればしのげると逃げに徹しようとしたが、それを見越され必殺技を撃たれてしまう。

 克美はそれにより怜央が二ラウンドを獲得したため、負けてしまうことになった。

「そんな……」

「それじゃあ、明日約束どおりデートして貰うぞ」

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