第19話「京都への道のり」

 魔女ヤヒュニアによって女の子となり、克巳から克美になった大津克巳。

 そんな彼女は伊賀啓介と共にスペードの6とスペードの5のトランプ兵を倒したのだった。

 そしてその翌週、克美は修学旅行へ向かおうとしていた。

「トランプ兵はどうなったの?」

 母親の疑問ももっともだ。残る絵柄のトランプ兵は来ないまま今日まで来たからだ。

「そのことなら、スペードのJがご丁寧に手紙を寄越してきてたよ」

「カタログギフトで着替えも用意したわ。楽しんでらっしゃい」

 克美は今、青いブラウスに緑色のスカートを着用していた。

 少しでも女の子らしくして、母親を安心させたかったからである。

 そして彼女は学校へと向かう。

 修学旅行先である京都へはバスで向かうからだ。

「新幹線じゃなくてバスなのか。予算ケチったな」

 そういったのは大原佑輔だった。

 それに対し飯塚琴美はこういう。

「その代わりホテルはあの地球儀があるところの近くよ」

「本当か!なら、あの人気小説のアトラクションにも優先して入れるよな?」

 そういったのは啓介だった。

「チケットや入場確約券もあるし、待ち時間は待たずスムーズに入れそうだね」

「さすがに、三時十五分になったら集合らしい。その後もすごいけどな、克巳」

「どうしてなの?」

「なんとあの女性しか居ない歌劇団の劇が見れるんだ!」

 それを聞いた琴美はこういう。

「開場は四時半。ということは遅くても十分前に着くわね」

「宝塚って普通にいえないの?」

「克巳、そこはノリだ。実際大丈夫かは知らん」

 そこで佑輔はこういう。

「駄目だってならそこは伏せればいいだけだろ」

「見も蓋もないなおい」

 啓介がそういうのに対し、克美はあることに気付く。

「この引率、もしかして……」

「まさか!?」

 すると引率がこういう。

「私はスペードのJ。だが安心してくれ。このバスをジャックしたりはしない」

「ジャックだけに、か。上手いことをいうな」

 啓介がそういうと引率、もといスペードのJはこういう。

「折角の修学旅行だ。戦うのは休憩時間辺りにするつもりだ」

「それまではゆっくりくつろいどけ、ってことか」

「そうした方がいいね、啓介。こんな狭いバスの中でやりあうわけにもいかない」

「確かに、勝ったとしてもバスを下ろされるしな。ここはお言葉に甘えよう」

「ああ。私も引率は頼まれてやってるし、私の代わりとなる引率者は京都に居るだろう」

 スペードのJがそういうと、先生がこういう。

「折角の旅行で通報はできない……スペードのJも考えたわね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る