第12章 ジェミニの章 パートⅢ

ジュニアが青龍メリクとジェミニに対し攻撃している所へ、

アンガスとギルタブの兵団とシャウラ王女一行が近づいてきた。

ヨウフェーメー「皆様!あの少年が一連の災害を起こした人物のようです。ご兄弟があの災害の中心から救った御人は、彼の父親だそうです。」

馬車を止めて外に降りる一行の目に映る光景は、どちらの味方をしたら良いのかを躊躇させた。

カシミール「ジェミニ!!それじゃさっきここに居た子が家の子?!」

先程までジュニアが寝ていた場所に目を動かし、皆は空中にてジェミニと青龍メリクを攻撃しているジェミニの息子に目を移す。

ラム「そうなるな。でも、しかしだ。何処から対処するべきか」

アルレシャ「ラムは青龍から運命の石を取り返すのでしょ」

ラム「ああ、だが、しかし今となっては何故それが必要なのか」

シャウラ王女「どうなっているんだ。ジュニアが災害の元凶だと?!」

アンガスとギルタブの兵団は、災害の源であるジュニアに向かって一斉攻撃を始める。

しかし、青龍メリクとジェミニの精霊使いの力が強く、アンガスとギルタブの兵団は、ジュニアに近づくことも出来なかった。

アクベンス「これはひどい。誰が味方なのか。シャウラ王女、ご兄弟の兵団を一時城へ撤退させたほうが良いかと」

シャウラ王女「運命の石の力が増している今、脆弱な精霊の力では太刀打ちできないか。兄上達!」

アンガスとギルタブの兄弟は、シャウラ王女と話し合い、ジュニアと青龍メリクとジェミニの戦いに巻き込まれないように退却を開始した。

レグリー「でも変ね。青龍とジェミニさんは自らの運命の石を持っているから強い力を引き出せるのは分かるけど、カシミールの息子さん達はどうしてあんなに強いの?キッド君も誰よりも強いけど」

プレア「そんなの関係ない!親子で戦い合うなんて変よ!私が止める!キッド手伝って!」

ラム「青龍は俺が引きつけておく。アルレシャ、サポート頼む!」

プレアとラムが走り出そうとした瞬間、彼らの持つ運命の石が全てキッドの精霊の袋に吸い込まれていった。

シャウラ王女「何をしている。キッド。君の父親と兄弟が争っているのにふざけている場合か!運命の石を返せ!」

キッド・ジュニア「返さない!運命の石は僕が全て譲り受ける!」

シャウラ王女ら一行からキッドだけは少し距離を取って離れた場所に居た。キッドとジュニアの声がシンクロする。

ヨウフェーメー「シャウラ王女。ジェミニさんの息子さんは、この子の精霊です。彼が操っているの。あの時、彼を復活させた時の違和感はそういうことね」

この戦場で自由に動けているのは、ジュニアとキッドと青龍メリクとジェミニだけだった。他のメンバーは金縛りにあったかのように動くことが出来ないでいた。

アクベンスもシャウラ王女もアンガスとギルタブの兵団を返してしまったことを悔やんだが、遅かった。とは言え、仮にここに居たとして精霊を操る力に長けたキッドの手を煩わすことが出来るかは疑問が残った。

キッドは近くにある石の所有権をすでに手中に納めていた。

彼には特殊な力があった。目に見た精霊の石は彼の物になる。

幼いころからの特殊能力で、それは他の誰にもない特別な力だった。

僕だけが持つ特別な力だ。

ジュニア「メリク!足元の石を僕に!」

キッド「ちっ、近づきすぎた!」

キッドは舌打ちをして、悔しがる。

リブラの石を奪い取ろう必死になりすぎ、ジュニアを不用意にジェミニの石に近づけすぎた。

青龍メリクはジュニアが離れるよりも早く、足元にあるジェミニの石を蹴りつける。

青龍メリクに蹴られたジェミニの石がジュニアの心臓にめり込んで突き抜けると、浮遊力を失った体は地面へと叩きつけられる。

地面に落ちたジュニアを青龍メリクが踏みつけようとした所へ、ジェミニが石の壁を作りその攻撃を防いだ。

ジェミニはジュニアの元に駆け寄り、素早く治癒の精霊を呼び出し手当てを始める。

飛び出したジェミニの石は、キッドの元に風の力で流される。

ジュニアの治癒をしている所へキッドが風に乗り襲いかかるが、青龍メリクがキッドを尻尾で払いのけると口から炎を吐き浴びせかけた。

ジェミニの迅速な治癒のお陰で、ジュニアの傷口は直ぐに塞がり息を吹き返す。

体が軽い。やっと僕に戻れたんだ。もう好きにはさせない!

ジュニア「精霊を解放しろ!」

ジュニアの一言でみんなの硬直は解かれた。

カシミール「キッド!どうしてこんなことを!」

キッド「理由なんかない!運命に決められた道だっただけだ。これは僕の道だ」

キッドは青龍メリクを風の力で吹き飛ばし、カシミール一行が居るところまで吹き飛ばした。青龍メリクの巨体が馬車を破壊する。

プレア「止めてキッド!精霊!」

キッド「無駄だよ。みんなが動けるようになっても、精霊は自由に操れない。僕が制御しているんだ。精霊達!」

精霊レオと精霊キャンサーがキッドの前に壁のように立ち塞がると、ジェミニとカシミールに炎と水の攻撃を浴びせかけた。

アクベンス「くっ!俺の運命を操りやがって」

レグリー「ダメ!私も負けそう……」

レグリーが精霊の石を使いプレアに水泡を放った。

アクベンスも精霊の石で火の玉を作るとシャウラ王女に投げつける。

シャウラ王女「アクベンス!何をする!」

プレア「レグリー!ちょっと何するの!」

ラム「これなら固まっていたほうがまだマシだったな……」

キッドが運命の石の精霊を操ると、その運命の石を持ち手とする人もまた操られた。

戦いの場は誰が味方なのか分からないほどに、精霊が入れ替わり立ち替わり攻撃者を変えて襲いかかる。それぞれに仲間を攻撃することもなく防戦を強いられていた。

青龍メリクとジェミニ、ジュニアのみがキッド本体への攻撃が行えていた。

時にアクベンスやレグリー、ラムやアルレシャがジェミニやジュニアや青龍メリクの間に立ちふさがり、キッドを守るように立ち塞がる。

プレアやカシミールやシャウラ王女やスピカやヨウフェーメーも例外なく操られてはキッドに対するジェミニらの攻撃を防いでいた。

キッドは同時に操られても2体までだった。

それはどんなに抵抗しても防ぎようがなくプレアは泣き崩れながらもピーシーズを解き放って戦いに巻き込まれた。

キッド「リブラの石を俺に渡せ!」

キッドの目当てはあくまでもリブラの石だった。

ジェミニ「お前には渡さない!」

操られている皆を何とかしなくっちゃ。

僕が、僕にしか出来ないんだ!

キッドがジェミニに攻撃を集中させている時に、ジュニアが青龍メリクの後ろに隠れてキッドに近づき、精霊の袋を取り返す。

ジュニアは精霊の袋を開き精霊の石をばらまいた。

ジュニア「みんな!自分の運命を捕まえて!」

風の精霊の力が竜巻を巻き起こすと、運命の石は天高く舞い上がりキッドの体にめり込んだ。

オデコに自身のジェミニの石がめり込み、右手にレオの石、左手にキャンサーの石、右足にトーラスの石、左足にピーシーズの石、右肩にスコーピオの石、左肩にカプリコーンの石、右膝にアクエリアスの石、左膝にヴァーゴの石、そして胸にサジテリアスの石だ。

アリエスとリブラの石がキッドの手元にはまだ存在していない。

それらの石は青龍メリクの胃の中とジェミニの精霊の袋に納められている。

キッド「お前らの運命も全部俺のものだ!」

右手に炎、左手に水の玉を握りしめ、右足は風に乗りジェミニへと攻撃する。

ジェミニ、青龍メリクを除く全員「止めて(ろ)!」

キッドは空中で十字架に縛られたように動きを止めた。

キッド「ぐぉっ!嘘だ!僕が……僕が逆に!」

キッドが無理やり動こうとする度にメキメキと肉と骨が軋む音が辺りに響く。

カシミール「お願い止めて!それ以上無理したらキッドが……壊れちゃう。お願い止めて!」

左肩の拘束が外れ、キッドの左肩だけが暴れだすと左足の力も弱まり左半身は左手を残してもがき始める。

プレアは泣き崩れて立っていることも出来ない。

レグリー「プレア、カシミール!まだダメよ」

キッドの拘束が解かれる前に青龍メリクがキッドの体に尻尾を振り下ろし、地面に叩き落とした。

キッドは青龍メリクの足の下にそのまま踏みつけられる。

カシミールとプレアがキッドの名前を叫ぶが、キッドの耳には届いていなかった。

ボロボロになったキッドの体から、それぞれに運命の石を取り戻し、スピカが生の石の力でキッドを治癒する。

キッドのジェミニの石はジェミニが持ち、力を抑止した状態だ。

青龍メリクがアルレシャ同様に人形になると、アリエスの運命の石をラムに渡す。

メリク「交換だ。そして再び会うことがないように」

各自運命の石を相対する運命の石の持ち主に返し、再び会うことがないよう旅立っていった。

カシミールとキッドはレグリーとプレアと元の街に帰り、その後4人は別々の街を目指した。

ジェミニとジュニアはキッドの石を守り力を抑止しながら誰もいない山ごもりへと戻っていった。

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