第11章 アクエリアスの章 パートⅢ

突然、アルレシャが苦しみだす。

アルレシャ「熱い!熱い!」

地面に体をこすらせながら、まるで体についた炎を消すかのように暴れだした。

シャウラ王女「ラム!アルレシャに何をした!アルレシャ。あつっ」

シャウラ王女はアルレシャに近づこうとするが、アルレシャの体の周りは灼熱のごとく熱い蒸気を発している。

アルレシャの口から炎が燃え上がると、体を炎が包み込んだ。

炎の中から羽の生えた蛇が姿を表し、上空に舞い上がる。

悲鳴にも似た甲高い鳴き声が、炎を身にまとったワイバーンから発せられた。

ラム「あれが本来のアルレシャの姿だ」

精霊レオが青龍メリクに投げた炎が、間違えてアルレシャにぶつかると、アルレシャはシャアアアアと蛇が鳴らす喉の鳴き声で精霊レオを威嚇した。

それを見たアクベンスは精霊レオを引っ込め、手元に自らの運命の石を取り戻した。

シャウラ王女「ダメだ!アクベンス!すまない!うわぁーーー」

シャウラ王女の叫び声とともに、精霊の石がはじけ飛んだ。

今まで押さえつけていた精霊の力がシャウラ王女の力で制御できなくなって力に押し倒された。

シャウラ王女の持っていた運命の石は、サソリの姿に変わり地中へと姿を消した。

アクベンス「あれが暴発しなかっただけ良かったと思うしかありませんね。皆吸い込まれて消されていたかもしれません」

アクベンスはそっとシャウラ王女を肩に担ぎ抱き起こす。

シャウラ王女「私の運命の石は何処へ行ってしまったのか」

アクベンス「恐らく近くに居るのでしょう。シャウラ王女の運命の石もおそらく近くへ、アルレシャ殿が戦っているうちにあの者たちと合流しましょう」

上空では青龍メリクとワイバーン・アルレシャが戦っている。

力の差で青龍メリクの方が力が強いのだろう。ワイバーンは押されていたが、レグリーの解き放っているキャンサーがワイバーン・アルレシャを上手くサポートしていた。

体が燃えているワイバーン・アルレシャにレグリーの精霊キャンサーの水が大量に浴びせられると、ワイバーン・アルレシャは地面にゆっくりと降りて人の姿へと戻っていった。

地面には濡れた体のアルレシャが裸のまま横たわっている。

私は自分の着ていた服を脱ぎ、人の姿に戻ったアルレシャに服を差し出した。

精霊キャンサーは青龍メリクを攻撃し二人を擁護する。

ラム「アルレシャ、行こう」

ここに居ても青龍メリクの攻撃が飛んでくる。二人は急いで距離を取りカシミール一行がいるところまで走った。

既に先行しているシャウラ王女とアクベンスの後ろに近づく、シャウラ王女一行がカシミール一行と交わる時、地中からサソリが姿を表し一行の間に立ち塞がる。

シャウラ王女「邪魔をするな!」

精霊スコーピオ「弱い者よ。私はお前に操られなどしない」

シャウラ王女「なんだと!」

精霊スコーピオは、カシミールに尻尾の毒針を向ける。

精霊スコーピオ「お前の運命の石を受け取れ!」

カシミール「私の?じゃあ、私が持っている運命の石は一体?」

カシミールの持つ運命の石が光を放ち、精霊スコーピオの前に立ち塞がる。

精霊カプリコーン「戻れ!」

精霊カプリコーンは、白いトラの姿に身を変えて精霊スコーピオを踏みつける。

その白いトラの怒りの形相は他の運命の石を持つものにも向けられた。

精霊カプリコーン「力のバランスが崩れる!皆、帰れ!」

精霊スコーピオ「何を今更!」

精霊スコーピオは、その場で暴れ精霊カプリコーンを吹き飛ばした。

青龍メリク「はっはっは。これは面白い。精霊同士で暴れておる。これは見ものだな」

キッド「静まれ!精霊!」

ビクッと硬直し、精霊カプリコーンと精霊スコーピオは動きを止めた。

その声に青龍メリクも反応する。

メリク「こ、こいつか!」

青龍メリクの動きも精霊キャンサーの動きも封じられた。

皆の視線がキッドに集まる。

カシミール「せ、精霊を離して。キッド」

カシミールの運命の石である精霊スコーピオが押さえつけられたことで、その持ち主であるシャウラ王女やカシミールらの動きも束縛されていた。その力は運命の石の持ち主たちの呼吸や心臓の鼓動すらも止めていた。

母親の苦しそうな顔を見たキッドは、集中していた力の紐を解き精霊たちを解放した。

キッドは我を忘れて精霊の力を封じていた事に気がついたのは、母親が目の前で呼吸を整えて倒れ込んでいるのを見たときだった。

キッド「ごめん。お母さん」

精霊を引っ込めていたアクベンスやアルレシャやラムには影響がなかったが、レグリーとシャウラ王女にも同様のダメージが加わっていた。

青龍メリクにも大きなダメージが加わり、精霊の力が弱まったためその大きな巨体はフクロウ大にまで縮小し、地面に伏せっている。

ジュニアの足も止まり、倒れ込んでいた。

ラムとアルレシャがジュニアの体を支え起こすと、シャウラ王女を抱きかかえるアクベンスの元へと近づいた。

カシミール一行とシャウラ王女一行の間には、シャウラ王女の手から飛び出した精霊スコーピオの運命の石が、元の石に戻り地面に落ちている。

アクベンスは、その石を拾い上げるとシャウラ王女の精霊の石を入れる袋に閉まった。

シャウラ王女一行は、カシミール一行と合流を果たした。

その合流地点に、小さなキャンプ地を作りテントを張る。

青龍メリクは、シャインに運ばれその場から姿を消した。

スピカ「君は今何をしたんだ」

スピカがキッドに詰め寄る。

キッド「分からない。無我夢中で……」

精霊を解放していた、カシミール、シャウラ王女、レグリーはテント内に横たわり休息している。ジュニアも長い間の青龍メリクとの戦いで疲弊していたためか疲れ切ってその隣で休息している。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る