第11章 アクエリアスの章 パートⅡ

スピカ一行の元にアルキバが生の石を持って戻ってきた。

アルキバ「ほら、これがお前の運命の石だ。後それから、レグリーさんって居るかい?」

アルキバは一行を見渡しながら、スピカに運命の石を投げつけた。

レグリー「私だけど」

アルキバの前にレグリーが一歩前に出る。

アルキバ「あんたの持っている運命の石を返せと、傲慢な男が俺に言ってきたぜ。まあ、どうするかはあんたが決めな。それから、カシミールさんって言ったっけ、あなたの探しているジェミニの石を持つ者なら、こっちに向かってるぜ。ここで待ってれば、現れるだろうよ」

アルキバは何かに追われでもしているかのように、後ろを振り返り遠くの空を警戒してキョロキョロしている。

アルキバ「おっと、これ以上の長居はゴメンだ。約束は守ったからな」

アルキバはそそくさと来た方向とは逆の遠くの空へと消えていった。

レグリー「カシミール!良かったわね♪すぐに会えるわ」

レグリーはカシミールに向き直り、カシミールの両肩を掴んだ。

カシミールの目がまっすぐとレグリーを見つめている。カシミールだけではなく、スピカやプレアも心配した顔を伺わせていた。

レグリー「何?みんなして変な顔して、アルキバの言ったこと?私の運命の石は私の石じゃないの。返して欲しいっていうのなら返してあげてもいいのよ」

カシミールはレグリーにされたことと同じように両肩を掴んだ。

カシミール「レグリー。大丈夫?」

運命の石が本人のものじゃない。カシミール一行にとってこれは衝撃的だった。今まで自分の石だと信じて大切にしてきた石がまさか他人の物かもしれないのだ。

プレア「どうして今になって、私の石も自分のじゃないの?私のはどこ?もしかして、この石が壊れたら誰か他の人が死んじゃうの?どうして生まれた時にこの石だったの?」

プレアは思わず自分の運命の石を手のひらに乗せ、思い切り握りしめて座り込んだ。

これまで信じてきた自分が自分では無かったんじゃないかという戸惑いを隠しきれずに震えている。

カシミールとレグリーはそっとプレアに寄り添い声をかける。

カシミール「プレアはプレアよ。運命の石が違ってもいいじゃない。いつかきっと自分の元に返ってくるわ。私のも私のではないかもしれない。でも、ずっとやって来れたもの。あなただってやれるわよ」

レグリー「そうそう、カシミールの言うとおりよ。私を見なさい。自分に必ず会えるは、そしてそれが運命の瞬間。大切な時間になるはずよ。私が自分の運命の石と出会って、あなたが産まれたの。プレア、あなたが産まれたのよ。私とあなたの父親は、運命の石をそれぞれ持っていたの、引き合うように結ばれて、そして離れたは色々あったのね。今、彼には自分の運命の石が必要みたい。だから私は手放すわ」

レグリーはそう言うと、運命の石を机に置き、「精霊」と優しく語りかけた。

小さな炎の精霊レオは姿を現す。

精霊レオ「遂にこの時が来た。時期にお前の本来の石も帰って来る。彼が解き放った。彼の意思はここにある。だから私はここから離れるわけにはいかない。ここに災いの火種がある限り、彼はここへやってくる。もう時期ここに来る」

精霊レオは自らを宿す運命の石を飲み込み、皆へ外へ出るように呼びかけた。

外に出るとスピカ一行の目の前に水の壁が立ちふさがる。

体の大きくなった青龍メリクが水の壁にぶつかり、距離を取って高い空に舞い上がった。

メリク「くそっ!邪魔な壁め」

精霊キャンサー「危ないところだったな。お前の運命の石を手放すなよ」

水の壁から運命の石が飛び出し、レグリーの手の中に収まる。

精霊キャンサーの形に変わると水鉄砲を青龍メリクに打ち付ける。

精霊キャンサー「アクベンスの最後の指示は守った。レグリー、次はあなたの支持だ。さあ、どうする」

精霊キャンサーはそう言うと、姿を消した。

それと入れ替わるように、精霊レオが青龍メリクの前に陣取り炎の攻撃を始めるが、その姿はまだ弱々しく小さい。

レグリー「精霊!出てきて!応戦を手伝って!あいつはなにもの?」

精霊キャンサーは再び姿を現し、青龍メリクの進行を阻む。

精霊キャンサー「その男が持つサジテリアスの石を欲している」

精霊キャンサーは、スピカを爪の先で指した。

先程、アルキバが持ってきた石だ。

精霊キャンサー「その石は生の石さ。別名、不老不死の石とも言われている」

カシミール一行は皆、スピカを見る。

スピカ「何だよ。全部俺が悪いみたいになってるじゃねえか。俺は自分の運命の石を取り戻しただけだぜ」

カシミール一行を払いのけるようにスピカは一歩後ずさった。

攻撃は激しさを増しつつも、攻守変わらずせめぎ合いが続いていた。

メリクは空高くにホバリングし、レオとキャンサーの攻撃をゆるゆるとかわす。時折、丸太を空中に製造し投げ捨てるも、レオの炎とキャンサーの水圧で砕け散っていた。

精霊レオの体が見る見るうちに大きくなると、そこにシャウラ王女一行の姿が見え始めた。

そこに大きな砂嵐がシャウラ王女一行とカシミール一行の狭間に竜巻となって発生する。

その砂嵐は激しさを増し、辺り一面はレオの炎とキャンサーの水と混ざりながら濃い霧を作り、視界を遮った。

シャウラ王女「何が起きてる!」

シャウラ王女は竜巻が作り出す暴風にたまらず馬を手放し地面に着地する。アクベンスやアルレシャ、ジュニア、ラムもそれに続き馬を降りて吹き飛ばされないように座り込む。

ラム「運命の石が集まりすぎたようですね。全ての石がここに集まりました」

シャウラ王女「お前!さては知っていて!」

風に舞い上がる砂が目に入らないように手をあてがいながらシャウラ王女はラムを一瞥する。

ラム「アルレシャ、シャウラ王女。時は成りました。今お持ちの運命の石を手放してください。そして、自らの本来の運命の石を手にする時です」

風と煙と霧はその勢力を強めている。

アルレシャ「ここに私の運命の石もあるの?」

シャウラ王女「貴様!図ったな。何のために!竜巻など飲み込んでくれるわ!精っ!!」

暴風の中ジリジリとシャウラ王女に近づいていたアクベンスがシャウラ王女の肩を掴む。

アクベンス「お止めください!シャウラ王女。今それは出してしまうと制御できなくなります」

思わずアクベンスの腕に力が入ると、シャウラ王女は痛っ!と顔を歪めると、アクベンスは申し訳ございませんと頭を下げた。

しかし、その腕力のお陰でシャウラ王女が精霊の力を召喚することに失敗し、この場を更なる混乱から退けたことは誰の目にも明らかだった。

アルレシャ「私はピーシーズの石を手放すわ。精霊。あなたの主人に還って私の石を連れ戻して」

アルレシャが石を放り投げると竜巻の中に吸い込まれた運命の石は、風の中を泳ぐ魚となってピーシーズは雲のようにゆうゆうと泳ぎ、プレアの元へ到着した。

プレアの目の前にピーシーズが泳ぐ。

精霊ピーシーズ「さあ、あなたの運命の石を受け取りなさい。そして、トーラスの石を手放すのです」

プレアは言われるがままにピーシーズの石を受け取り、トーラスの石を手放した。

トーラスの石は、砂埃を上げながら竜巻の中央を力強く走り抜けアルレシャの目の前で止まる。

目の前の霧は晴れ渡り、強い風は消し飛び竜巻と砂埃はこの場から消えていた。

精霊トーラス「さあ、あなたの運命の石を受け取りなさい」

アルレシャは、トーラスの石を手にした。

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