7章:おひとり女子とブリフリ女子

 5年前、レンの両親は高松にあった一軒家を引き払い、徳島県に移住した。そのため実家暮らしのOLだった蓮は市内のマンションに引っ越す事になり、以来、ずっと1人暮らしを送ってきた。

 彼女が住む1LDKのマンション室内は殺風景だった。ニトリやイケアの広告写真のように、ミニマルな家具がシンプルに配置されているだけ。ただ室内のアチコチにあるフォトスタンドや額縁に入った写真だけが、部屋のアルジの人となりを示していた。


 最も多いのは記念写真であり、両親の移住先の近くにある吉野川で撮った家族写真や、さぬき市にある津田松原のビーチで高校時代のカレシ――例のやらせてあげなかったバレー部の主将――と撮ったものなどがあった。

 一風、変わった写真もある。それは、新聞から切り抜いたニュースフォトで、観葉植物と共にワゴンラックに置かれたガラス製の写真立てに入っている。

 ロシアとウクライナ、2人の大統領が握手する背後でドイツのメルケル首相が笑みを浮かべた写真であり、それは紛争が続いた両国の停戦合意を記念したものだった。

 最大の写真はリヴィングの壁にある縦1.5mの巨大フォトフレームに入った1枚であり、蓮にとって生涯最高の記念写真でもあった。


             それは木登りの写真だった。


 アメリカ留学時代、UCLAの卒業式、お祝いのシャンパンで酔っ払ったのを良い事に、蓮は学友7人と共に大学構内の庭にある大きなモミの木に登ったのだ。

 写真の中、1番高い地上8mほどの枝に登っているのは、腕周りが30㎝もあるカヌー部のジョッシュでもなく、タコだらけの指を持つロッククライマーのセシルでもなかった。

 それは蓮だった。

 彼女にとって、木登りは子どもの頃から大の得意にしていたものだった。写真の中、女子大生だった彼女はサーモンピンクのパーティドレス姿で満面の笑みを浮かべ、5月の新緑に覆われた枝の上に立っていた――まるで、世界中の何もかもを見下ろしているかのように。


                  *


 そもそも蓮が木登り上手なのは、高松の実家の裏庭に大きなカシの木があったからだ。全長10mほど、根元の幹はお相撲スモウさん3人分の腹回りくらいある立派なもので、高さ1mほどでアチコチに枝分かれしていたので子どもでも登りやすかった。大好きな祖父が喜ぶ事もあり、彼女は幼少期からそのカシの木によく登った。枝の数は多く、豊かな葉をつけていたので、木の上の方に行けばスッポリと身を隠せた。おまけに周囲は田園地帯だったので、人目を気にせず心ゆくまで木登りを楽しむ事ができた。


 思春期になっても、彼女は何か心を落ち着かせたい時には必ずと言っていいほど裏庭のカシの木に登った。その日その日でお気に入りの枝を決めては、そこにマタがったり寝っ転がったりした。田んぼから吹く風が起こす枝葉のざわめきや、小鳥のさえずりや虫たちの鋭い羽音、そして樹皮にマブタを当てると感じられる仄かな熱。それらと一体になっていると全てが忘れられた。反抗期の荒波にあった中学、高校時代も、彼女は1人、木に登ることで心を完ぺきにリセットする事ができた。


 海を渡って大学生活を送ったLAでも、木登りは続けられた続けられた。

 ある時、フェイスブックで〖ツリー・クライミング〗のサークルを知って以来、蓮は市郊外の公園でその仲間と集っては、装備のないボルダリング様式で園内の木に登った。多くの木が実家のカシの木と同じく根元で枝分かれした登りやすいニレの木だった。

 週末になると、彼女は大勢のリスたちの憤慨フンガイを買いながらも、樹上でLAの昼を穏やかに過ごしていた。

 数年後、20代半ばで日本に戻り、再び実家暮らしを始めてからも蓮は裏庭のカシの木に登り続けた。だが、両親が家を引き払った事で、あっけなくその機会は失われた。

 そこでLA時代のようにSNSで木登り仲間を探したが、近所の同好会のウェブで多くの愛好家のコメントを読むうちにやる気を失った。彼らは大抵、ダイエットやエクササイズのために、あるいは自己実現や仲間との親睦のために登っていた。


     そこで、蓮は自分がという事を考えた。


 幼少期から続けながらも、それについて真剣に考えたのはその時が初めての事だった。だが、どんなに考えても適格な言葉は見つからなかった。

 ただ、1つ明らかなのは、木に登って樹上に留まっていると、が感じられる事だった。それはとても言葉では言い表せず、身近な感覚でも置き換えられないものだった。1人枝の上で寝そべっている時、蓮はその流れをほとんど無自覚にこころの奥底で感じ、身を任せることができた。

 流れの中にいると、こころが安らいだまま自由になれるように感じた。南米アマゾンにある大小無数の河はジャングルをバラバラに流れてゆきながらも、最後は1つの河になって大西洋に流れ込む。樹上で感じる流れとは、それとよく似ていた。すべての命あるものが、流れの果てにとてつもなく大きなものに温かく包まれるような、そんな感じにさせられるのだ。

 そんな思いに至ると、蓮は木登りを神聖化するようになった。これはもう、私にとって一生止められないタマシイの儀式なのだ。そう思うようになった。


                  *


 しかし、5年前、両親が実家を引き払ってまもなく蓮は木登りをやめた。実際、その終わりはあっけないものだった。

 実家のカシの木に登れなくなって以降、最初の1~2ヶ月は自然と恋しくなり、お酒の入った週末の夜に市内の中央公園に行っては、こっそり枝ぶりのいい木に登ったりもした。だが、まもなくその思いも冷めてしまった。登らない期間が自然と2週間、3週間と伸びてゆき、そのうちそれは無期限のブランクとなった。木に登りたいと思わなくなったどころか、普段あちこちにある木に目を止めることさえもしなくなった。


 蓮はワレながらアキれた。木登りを神聖なものだと思っていた自分は一体どこに行ってしまったのか…。だが、よく考えると、ごく自然な事のように思えた。

 樹上で安らいでいると感じられた、宇宙にもつながるようなあの流れ。前世にも通じているようなあの包容力。

 本来、そういうものはほんの数回、人生の節目節目に感じられればいいだけのものではないか。1人旅の最中とか家族の葬儀の間とかハードな挫折を味わった時とか。現実離れした、あの流れるような感覚とは、そういう時にだけ、こころに注ぐべきものなのではないか。本来、木登りとは私が日々必要としていたものではなかったんじゃないか。

 

 以降、蓮は木登りガールから一転、1年の大半を木の幹の中で眠るセミの幼虫のような人生を送るようになった。

 平日は会社が終われば自宅に直行。週末もまた、自宅で気ままな、。マンションで1人暮らしを始めて以来この5年、そんな日々を送り続けてきた。





                  ✿




 梅雨時の土曜の正午過ぎ、蓮は自転車で高松市内の近所のショッピングモールに行った。1階ユニクロの店舗テンポ前のソファでいると、1人の女が姿を現した。

 それは例の自殺未遂女子。

 会社の同僚のモエだ。

 少しピンクに染めたピッグテイルの髪。芥子カラシ色のブラウスにミニスカのオーバーオールを重ねたアラサー・ロリータファッションとでも呼べるお姿。

 モエは「お待たせ」と微笑んだ。

 と共に、人間国宝の名人が彫刻刀で彫ったような美しい二重まぶたが吊り上り、ホッペには子狐コギツネのヒゲのように愛らしい2本線のエクボが浮き上がる。


 もし神様が、この女の造形にかけた情熱の百分の1でも私に注いでいてくれていたら、と蓮は思う。私は今よりはずっとマシな人生を送れていただろう……。


 1週間前、モエは職場復帰した。1週間の心療内科への入院と自宅療養で元気を取り戻した彼女は、オフィスに戻ってくるなり問題なく職務をこなした。仲の良かった同僚たちはモエが出社しても冷たく当たり、仕事以外では彼女に話しかけようともしなかった。

 一方、蓮は事件前とまったく態度を変えなかった。職場ではモエに厳しい指示を出し、週末になると夕食に誘って最近の心境をたずねた。そういった日々を重ねるうちに、モエは蓮を心から信頼するようになっていった。


 モールショッピング後、蓮とモエはお気に入りの店に入った。創作和食で有名な抹茶マッチャ菓子専門のカフェだった。

2人でテーブル席を囲みランチを取った。ペチャクチャ話しながら、雑穀ザッコクどんぶりやニワトリのそぼろどんぶりを食べる。

 が、そのうち蓮は口にしたご飯をこぼしそうになった。

 モエが後2ヶ月で仕事を辞めると言ったからだ。

「ちょうど9月でタイミングもいいやろ」

 モエが子狐エクボを見せて言う。

「実はずっとやりたい事があったの。服飾の方に進みたいんよ。私、神戸の大学時代にちょっとモデルみたいな事やってたやろ。その時に何人かのデザイナーさんの仕事ぶりを見てたんやけど、その頃からアコガレがあってね。ここで思い切って、そっちに挑戦しようかなって思ったの」

 蓮は熱いお茶を飲んで、気分を落ち着かせる。

「もちろん親は大反対。30歳で結婚前の女が、何バカ言っとんやって。私が結婚する気なんかないわって言うと、父は家から出て行けって。そんなワケで、今は女友達の家に居候イソウロウしてて、いずれは3人くらいで格安のシェアハウスに住めればって思ってるの」

「モエ、あんたなぁ」

 蓮がおしぼりでヒタイを冷やす。

「それは大変な決断よ。第一、会社辞めてどうやって生計を立ててゆくん? シェアって言ったってお金はかかるやろ」

「生活レベルを落とせば大丈夫よ。私、もう車も売ったし色んな保険も解約したし、今は月1万円でのヘルシーな粗食料理を勉強中。デザイナーには真剣に取り組むつもりだから、仕事は短時間のパートしかするつもりないしね」

「でも、現実問題、お金はすごくかかるんやろ。学校に通ったり何なりで」


「大丈夫、最近はネットがあれば大抵の事は無料でいけるんよ。パリにある有名な服飾関係の専門学校では無料のオンライン講義もやっててな。ウェブ動画を見るだけで一流の服作りが学べるんよ。

 それに多くの有名ブランドはウェブで一般に向けたデザイン・コンペを開いてて、プロへの門戸も開かれとるし。実は、私もう何着か服を作っとってね。ツイッターで知り合った地元のバイヤーさんに売って、高松市内のロフトでワークショップの一品にしてもらっとるんよ。とにかく今の時代、やる気さえあれば、お金なくても独学でも夢に挑戦できるんよ」

 蓮は目を丸めたまま、スプーンで雑穀米をつつく。

「モエ、一体、どういう心境の変化があったの?」

 それに彼女は無邪気に笑う。


           「私はずっとだった。

            最近、それがやっと分かったんよ」


「ブ、ブリフリ?」

「そう、つまりブリっこ半分、そのフリ半分っていう女子の事。これは心療内科の先生と私が一緒に思いついた造語なんやけどね。

 私、1週間入院してたやろ――まぁ、実際は療養所を兼ねた先生の自宅に居候イソウロウさせてもらってた感じなんやけどな。先生は薬の投与やら鑑定やらをする精神科医じゃなくて、対話で患者さんの心を直してくれるサイコ・セラピストでな。本当にお世話になったわ。で、先生と夢で見た話や連想ゲームや箱庭治療やるうちに、私、自分の事がハッキリ分かってきたんよ。

 私はずっとブリフリ女子やったんやって。つまりは、男や社会に都合のいいブリっこでありながら、そのフリをしてる女でもある。私は、その2つを使い分けてる女やったんよ。職場や男の前でカワイらしく振舞いながら、内心では私はそんなんじゃない、そういうフリをしてるだけやって思ってるような感じ。まぁそういうような女が、ブリフリ女子ってわけ」


 モエは蓮にスプーンを向けて、おどけた顔でクルクル回す。


「つまり、私って弱かったの。その上、弱くはないって自分で自分をごまかしていた。弱いのに強いフリして、本当の自分はいつか出てくるっていう根拠のない自信を持ってた。だけど、実際には何も変わらなかった。目の前にあったのは、いつもクダラナイ仕事や友達やカレシだけだった。

 そうこうしてるブリっこの方の私がどんどん大きくなって、本当の私が飲み込まれそうになっていって、その果てに自殺未遂が待ってた……。ふられた男はどうでもいいヤツだった。これまでの男たちと同様に薄っぺらいヤツだった。まぁ、それがブリフリ女子の実態。セラピーの先生によればそれは“自己ギマン型のナルシスト”とかいうやつで、自分で自分をだまして悪い方向に導いている分、1番タチが悪いものなんやって」


 それには蓮も吹き出し、抹茶カフェの一角が明るい笑い声に包まれた。


「だけど、現実問題」

 蓮はスプーンでモエを指す。

「デザイナーが、ものにならなかったらどうするんよ。一生、売れんかったらどうするん」

「そういうことはあまり考えんけどな。たとえ、そうなっても私は続けたいと思ってる。1人でも私の服を好きでいてくれる人がいたら」

「ちょっと待って。それじゃただの趣味じゃない」


 モエはピタリと静止して、国宝彫刻的な二重マブタで蓮をじっと見据ミスえた。


「レン、その言い方は良くない」

 彼女は1つ息をついて真顔で蓮を見つめる。

「お金にならんかったら、それは全て趣味になるん?

 その人が自分の一生をかけて取り組んでる事でもただのお遊びになるの。

 知ってる? 世界的に有名なデザイナーでも、大抵はそれが売れるかどうか分からん段階から服を作り始めるんよ。つまり、表現の世界では、プロでも最初はボランティア精神から始めるものなんよ。

 私がモードの道に進むんも、第一にお金のためやない。それは何よりも私自身が着たい服を作りたいから。私が世界一だって思える服ができて、そしてそれを気に入ってくれる人が1人でもいたら、そこが1つのゴールになるんよ」


「でも、そういうのって結局、自己満足やん。だって仕事やないんやもん」

「そりゃ何でも仕事になった方がいいよ。だけど、見返りが約束されてない中で何かに心血を注いでがんばる事も同じくらい大切な事やない?それはすごくトウトい事やと思う」

 モエはテーブルに両手を伸ばして、蓮の右手をギュっと握った。

「レン、1つだけお願いがある。

 今の趣味って言葉、何か夢を持ってる人には絶対言うたらダメやで。私はまだ駆け出しやしズブトい性格なんで、大丈夫やけどさ。傷つく人は傷つくと思う。

 レンみたいに仕事が出来る人が、お金にならん事を無意味やって思うんはよく分かる。だけど仕事にならんでも、それに全てを捧げている人もいるの。仕事人と夢追い人ってさ。全然違う人生を歩むもんやけど、それでもお互いを尊重しあうべきやろ」





                 ✿




 夕方、蓮はマンションに戻り、週日にやり残した仕事を始めた。ペーパーファイルが積み上げられたデスクにつき、書類に目を通しながらキーボードをパンチする。だが全く調子が上がらず、そのうちPCをスリープさせ自身も机に突っ伏した。重ねた両腕に頭を乗せ、横目でデスク脇の書棚を見る。下の台にある花瓶にはスイセンの切花が生けられ、ラッパ型の黄色い花びらは今にも陽気な音を出しそうな程に瑞々ミズミズしい。


 横には分厚い法律書や司法試験の対策本がズラリと並んでいた。蓮はそれらを見るなり反射的に目をそらし、机の上で手の平を開いた。

 先の抹茶カフェでモエに握られたその手には、まだ温もりが残っているようだった。〝趣味〟

 そう言った事についてモエから注意された後、蓮は素直に頭を下げて謝った。モエは笑って許してくれたが、その笑顔が鮮明に記憶に残っている。それは自信に満ち溢れていた。彼女がどれほどデザイナーを目指す自分の未来に希望を抱いているのか、それが、ありありと伝わってくる晴れやかな笑顔だった。

 もしかすれば。

 蓮は机に突っ伏したまま思う。

 いつのまにか私はあの子に追い抜かれたのかも知れない。セラピーを受ける事で本当に一皮向けて強くなったようだ。

 そう思い、書棚のスイセンの花びらを見つめる。

 人の心って花の成長に似てるな。じっと見ていてもちっとも変わらないけど、長い目で見ればそれは変わっている。人が感じ取れない恐ろしくスローで長い時間の中で確実に花開いてゆくのだ。

 彼女は書棚に手を伸ばし、一冊の法律書をつかんだ。数ヶ月前買ったものだが、これまでほとんど読み進める事はなかった。


                 *


 蓮が法律の勉強を始めようと思ったのは半年前。ある県会議員に勧められ、司法書士資格の取得を目指すようになったのだ。

 キッカケはある仕事をしたことからだった。

 長年、地元イベントの企画に携わっていると、自治体の実態を知るようにもなる。町おこしや観光客誘致には、県庁や市役所が予算を出してくれる事もある。だが、蓮はその手のオファーをするたびに不満を覚えてきた。その予算――地域振興費――自体が、あまりにも少なかったからだ。そこで、自治体の予算編成が気になった。


 私たち、市民のお金がどこに流れていってるのか。県庁ウェブで調べると、大半が公務員の内部でグルグル回っているだけという事が分かった。人件費とか総務費とか議会費、またはマネーゲームに費やす投資支出。それらが歳出の半分以上を占め、それだけが景気動向に関わらず、何10年も変わらず毎年ピッタリと同じ額、県民の税金から徴収チョウシュウされていた。


 蓮はある時、そういった不満を口にする機会を得た。地元の議員さんと一般の高校生たちが、社会問題についてディベートするシンポジウムを計画し、サンポート高松の会議場で開いた時のことだった。

 終了後、蓮は参加してくれた女性県会議員に、県の予算について不満をもらした。すると、その安田という名の40歳の若々しい議員も同意し、もっと辛らつな財政批判を口にした。すっかり意気投合した2人は、その後夕食を共にした。

 蓮は、安田議員に触発ショクハツされた。女ながら県政を変えるという野心に魅了され、そうして 自分もそんな目標を持ちたいと思うようになった。


 そもそも蓮にはそういう夢があった。アメリカのUCLAに大学留学したのはジャーナリズムを学ぶためであり、LAでの就職先も政治社会色の濃い総合カルチャー雑誌を扱う出版社だった。

 安田議員との出会いは、蓮が元々持っていた政治熱に火をつけた。

 イベントプランナーとして働くうち、彼女は独創的なアイデアが現実の壁に阻まれる事を何度も経験していた。

 有名なロックバンドにオファーされて駅前でミュージック・ヴィデオを撮る企画を出したら、街の治安が乱れるとして却下されたり、ボーイスカウトのサマーキャンプに知的障害児を招こうとしたら健常児の安全が保障されないと退けられたり、ハワイアンのダンスグループと刑務所での慰安イアン公演を進めていたら、囚人には扇情センジョウ的すぎるとダメだしされたりした。


 そういうことがあるたびに蓮は、自治体という名の権力にイラだった。そして、イベント会社の職場ではそういう事で一緒に戦ってくれる同僚は1人もいなかった。

 だが、安田議員は違った。シンポジウムで知り合って以来、何度か食事を重ねる中、彼女は蓮の抱くそういう不満にも大いに共感してくれた。


 蓮はその場で思い切って告白してみた。

 今の仕事にはやりがいがなく、議員のように世の中を直接変えるような仕事がしたい。

そう、打ち明けると安田議員はそれをとても喜んでくれた。

 政治への第一歩は法を知る事だ。彼女はそう言った。勉強して司法書士になれば議員事務所での仕事にもつけ、実務が学べる。もしその気があるなら、将来私の所に来てもいい。ゆくゆくは私のように地方選挙に挑んだっていい。アメリカ留学もした猪熊イノクマさんは議員になるにはピッタリの経歴の持ち主だし、イベント会社で培ったコミュニケーション能力は選挙の地回りで生かせる。


 そこまで議員に言われた事で、蓮のこころは大いに揺らいだ。政治の道に進もうかと本気で考え始めたのだ。32才という年齢は新たなチャレンジをするのに最後のタイミングだと思えたし、何よりそういう欲が出てきたのだ。


                *


 それから半年たった今、蓮の中の政治熱はすっかり冷めてしまった。

 モエと別れてマンションに戻り、夢を語る彼女に触発されて、どれくらいか法律書をめくったが元の書棚に戻した。夕方、持ち帰りの仕事書類に溢れ返ったデスクに突っ伏し、ぼけーっとする。

 私もモエの言うなのかも知れない。彼女は1人そう思う。

 世の中に不満を持っているフリをするだけで、実際には世の中にこびるブリっこ女子的な生き方しかできていない。何しろ、机に座って法律の勉強をする事にさえ抵抗を感じている。そんなささやかな変化にさえビビっているのだ。


 それに較べて安田議員のすごさはどうだろう。今、日本の女性たちの多くがヒモノか主婦かパートタイマーになる中、堂々とキャリア道を歩んでいる。

 もちろん女性が仕事に希望を抱いていたのは大昔の話であり、現代の賢明な女子たちは隅から隅まで欲深い男どもが作り上げた社会に愛想をつかしている。私だってセクハラやらパワハラやらで男社会の苦しみをさんざん味わってきた。

 けれど、安田議員はそんな現状を充分承知していて、だからこそ政治という表舞台に立って世の中の仕組みを変えたいと言っていた。そんな彼女の中央突破的なカッコ良さに魅かれ、後に続きたいと思った。


 けれど、と蓮はため息をつく。

 どうしても、だらだらとモヤモヤと現状維持を続けようとしてしまう。どうも法律家への転身をとてつもなく大きな変化だと思い込んでいる自分がいるようだ。

 真剣に法律の勉強を始めたら、自宅で気ままなおひとり女子ライフが失われる。また仕事も手につかなくなり、失業して生活にも困るようになるんじゃないか。さらに、司法書士試験にでも落ちようものなら、全てに絶望してもしや自殺でも……。


 そこで、蓮は自分の頭をゴンとたたく。

 何てオクビョーなんだろう。何て被害妄想なんだろう。私は政治家になって世の中を変えたいと思っている。けれど、今のOL生活が変わるくらいなら死んだ方がマシだとも思っている。何て矛盾。何て不合理。まるで子供だ。虫歯で甘いものを禁じられた少女が「チョコが食べれないなら、私、死んじゃう!」とママを脅しているようなものだ。ちょっとした変化を過剰に受け止め、死を賭けてまで今までの自分にしがみつこうとする……。自分が弱いのも分かってる。間違ってるのも分かってる…、けど、どうしようもないのよ。


 蓮はロッキング・チェアを後ろに倒した。のけぞった姿勢でいると、1人の女性が横目に見えた。デスクの脇、観葉植物が並ぶワゴンラックの中、ヘデラの長いつる草に半ば絡まるようにフォトスタンドが置かれている。


              アンゲラ・メルケル。


 写真の中、ロシアとウクライナの両大統領が握手する様を、彼女は満面の笑みで見守っていた。まるでヤンチャな兄弟の仲直りを見つめる母親のように強く厳しく、そして慈愛に満ちた眼差しで。





                  ✿




 小雨が降る金曜の午後、蓮は1人、車を走らせ坂出サカイデ港まで行った。高松の会社から30分の道のりだった。埠頭フトウを通ると、雨雲の下で海はどんよりとニゴっていた。少し開けた車窓から入ってくる空気が心地よい。梅雨の匂いと瀬戸の潮風が体の中で絶妙にブレンドされ、なぜだか妙にエロチックな気分になる。これからハンサムなカウボーイと会うからだろうか。蓮はハンドル片手に1人そう微笑む。


 向かう先はフラウリー家の賃貸マンション。例によって外国人観光客向けのPRヴィデオ作りのため、今朝、取材のアポを取りつけていた。彼女はすでにマックの映像編集ソフトで5分のVを3つ作っていた。それを県庁ウェブと自社『XYZ』のHPに貼り付け、それからユーチューブにアップし、自身のツイッターにも貼りつけ、親しいフォロワーにはリツイートしてもらった。

 成果はまずまずだった。栗林リツリン公園や山越ヤマゴエうどん店など、香川の名所で撮った事もあり、そのVは多くのアクセスを得た。彼女の同僚など、仕事関係者たちからの声も温かいものだった。


 坂出港近くの住宅区にあるマンション。蓮は車でそこに着いた。7階建てのそれは黒ずんだコンクリート造りで築20年といった趣。屋上にはサビの目立つ給水タンクがあり、ベランダ側の壁には色あせたエアコンの室外機が20個ほどズラリと並んでいた。辺りに人気はない。駐車場の来客用スペースに車を停めると、蓮はマンションに入った。階段で3階に上がり、表札がない空き家のような一室のチャイムを鳴らす。


「He~~~y, Ren, Come in」

 ドアを開けたオーキッドは、蓮の肩を叩いて招き入れた。寝ぐせのついたグレイヘアに無精ひげ、服はダボダボした灰色スエットの上下。その様はまさに日曜日のお父さんであり、何かもうすっかり日本人化しているようだ。

 マンションにはオーキッドだけがいた。

 2人の娘は共に学校。3人で住むには少しせまい2DKの間取りだが、綺麗に整理整頓されていた。娘たちが共用する洋間にはシングルハーフのベッドがあり、2人仲良くそこで寝ているらしい。マンスリーマンションで備え付けの家具が多く、私物は服や食器など細かなものだけだった。

 

 今回のPRヴィデオは一家の生活リポート。アメリカ人滞在者が、ここ香川でどんな日常生活を送っているのか。ダイニングのテーブルで、蓮はそんな質問を始めた。まず、地元の中学に通うジャスミンについて。

「どうも、お気に入りの先生が出来たようだ」

 オーキッドはそう語る。

「数日前には、家に4人も友達を連れてきたよ。ハワイ出身のバイリンガル少年もいて、学校ではジャスミンの通訳をしてくれているそうだ」

 彼は頭をかいて言う。

「そう言えばローズマリーには、ボーイフレンドが出来たらしい」

 それには蓮もカメラ片手に大口あけて、Oh my God!


「とにかく、姉妹どちらも日本が気に入ったようだ。それには本当に驚いてる。私はかなりの親日派のつもりだったが、実際来てみると私が取り残されてしまったようだ」

 オーキッドは眠そうな目つきで視線を上に向けた。その先にはキッチンの壁にかけられたハート型のフォトフレームがあった。一家のポートレイトだ。


     「3ヶ月前、私の妻が死んだ。ある悲惨な事故があって」


 蓮は驚いてカメラを下げたが、彼は「No, no, go on」と笑って撮影を続行させた。

「それには私も娘たちも打ちのめされた」 

彼はグレイヘアを神経質にかく。

「そんな時、私は日本への短期滞在を思いついた。それくらい思い切った変化がないと、新しいスタートが切れないと思ったからだ。もちろんそれは私のワガママな希望で、娘たちの理解が得られるとは思っていなかった。最初は1人で行く事になるだろうと思っていた。

 だが2人の娘たちは共に賛成してくれた。

 おそらく、弱りきった私に配慮してくれたのだろう。日本で新しい生活を始めた方が、ダディーは早く立ち直れるのかも知れない。きっと、そう思ってくれたのだろう。2人の娘は私よりタフだった。日本に来てから、ずっと悲しいそぶりを見せる事もなく、日々たくましく生きてきた。私は、その姿に背中を押されたよ。そして、何よりここカガワの人々との交流が、私たちを元気づけてくれたんだ」


 取材後、オーキッドは蓮に家族のポートレイトを見せた。花々が咲き誇る自宅の庭を背景に家族全員が並んで写っていた。去年の夏に撮られたものらしい。オーキッドと妻――赤毛で童顔のフレンチ系の女性――はユカイそうに体を寄せ合い、その前に娘たちが並んで座っていた。

 しかし、それは3人だった。あとの1人は親類か友達なんだろうか。そんな蓮の思いを察したように、オーキッドが言った。


          「その真ん中のコも、私の娘なんだ」


 下唇をかみ、空ろな視線を彼女に向けた。

「つまりね。事故で死んだのは妻だけじゃなかった。私のもう1人の娘、15歳で3人姉妹の次女。彼女もまた妻と共に事故で死んでしまったんだ」

 蓮はあまりの事に手で口を押さえた。

 ポートレイトの次女は、鮮やかな長いブロンド、サテン地のマリンブルーのワンピに身をくるみ、愛らしい表情で正面を見ていた。オーキッドは、蓮にフォト・アルバムも見せた。家族写真の多くに、亡くなった娘さんが映っていた。


 それらを見るうちに蓮は彼女の美しさに気づかされた。ジャスミンとローズも充分に可愛いが、彼女と並んでいると、正直うっすらとカスんで見える程だった。どのアングルでもどんな表情でも美しく、まるで映画の子役や雑誌モデルのようだった。

「彼女はとても美しかったのね」

 蓮はそう言って、彼女の名前を聞く。

「彼女はロー、ロ・リータ」

 オーキッドは無邪気な笑みを浮かべる。

「ロリータ、ずいぶん古風な名前ね」

 すると彼は笑って、ノーノー、それは愛称なんだと言う。

「前に言っただろ、私の家系では全ての子供に花の名前が与えられる」

 そう言って、オーキッドは蓮を真正面から見つめた。


「彼女の名は。つまりレン、私の死んだ娘は





                 ✿




 そこは、海と河が出合う場所だった。坂出港近くにある岸辺。そこでは、大きな堤防に挟まれた綾川が高架橋をくぐって海に流れ出ている。河口にある砂の浮島では多くのカモが羽を休め、浅瀬にいるアオサギは川魚を狙い長い脚で慎重に歩を進めていた。堤防では初夏の大掛かりな草刈が終わったばかりで、無数の小鳥たちが緑の隠れがを失った昆虫をついばんでいる。

 海側には石油コンビナートがある。坂出港の中央にあるそれは鉛色の鉄塔を何本も突き出した機械仕掛けのお城といった様子だ。煙突のケムリが作り出したように6月の夕空は重いグレーで、海に浮かぶ瀬戸大橋も白く霞んでいた。


 海と河が出会う場所。蓮とオーキッドは、堤防からその岸辺に降り立った。夕刻が近づいた頃、彼が「ちょっとジョギングしよう!」とアメリカンなノリで彼女を誘ったのだ。浜辺では多くの人々が座り込んで潮干狩りをしていた。オーキッドは日ごろからよくこの辺をジョギングするそうで、快走後に眺める瀬戸大橋は格別だと言う。

 一方、蓮は正直、気乗りしていなかった。残業があったので夕方、社に戻るつもりだったが、ちょうどそんな時、社長の神埼からこんなEメールが送られてきた。


    〖イノ!今回も早退OK。わが社は社外恋愛も大歓迎!(^^)!〗


 蓮が気乗りしない理由は、やはりオーキッドの娘、ロータスが自分と同じ名前だと知らされたからだった。

 ロータスとは日本語でハスの花を意味する。彼女はそれに大いに戸惑トマドった。フラウリー一家が自分の中に深く入り込んでくるのを感じた。正直、それは居心地の悪いものだった。

 個人的に深入りしないという条件つきであれば、彼女は人に対して好意的だった――というか大の人間好きとも言えた。だが、その人が実際、自分のこころに深く入り込んでくるとなると話が違った。そうなると、彼女は決まってこころに壁を作ってしまうのだ。


 2人で水切りを始めたのは夕陽が海に落ち始めた頃。

 どうにかして私的な話を避けるため、蓮がそれを始めたのだ。平らな石を川に水平に投げやり、水面上をポンポンと跳ねさせる。その様に、オーキッドは目を丸めた。どうもユタ州では一般的な川遊びではないらしく、蓮がやり方を教えた。

 大の大人2人で岸辺に立ち、石を投げ続けた。スエット姿のオーキッドは時に無邪気な少年のようにはしゃぐ。パワーだけはあるが要領が悪く石は跳ね上がらない。一方の蓮は子供の頃から大の水切り名人で、投げる前に独特のスナップをきかせ水面に次々とサークルを作り続けた。そのうちオーキッドが言った。


「レン、君は誰か大切な人を亡くした事はあるかい?」

 彼女は首を横に振った。

 また、始まったのかとビクビクしながら。

「そうか、君は幸せだね」

 彼は、カウボーイフェイスの眉間ミケンにシワを寄せる。

「何か大きな事故や悲劇。そういったものは実はすごく長い時間を経て起こるものでもあるんだよ。ハプニングというものは、誰もが突然起こった事のように思う。だが、実はそれは一瞬の偶然だけで起こった事じゃない。それはものすごく長い期間をかけて準備されたものでもある。だからこそ、それには驚異的な破壊力があるんだ」


 オーキッドは海の向こうを見つめた。コンビナートの工場群と瀬戸大橋は夕焼けに染まり、海は満潮に入って2人のいる岸辺をどんどん削っている。


「何年も前、日本の北部地域でM9の大地震が起こり、そして大ツナミが来たね」

 彼は言う。

「ニュースによると、あれは4百年の地殻チカク変動が元になっているらしい。マグマの力によって海底で重なり合った巨大プレートが少しずつズレていき、ある時、下側のプレートが跳ね上がったんだ。4百年とは、人間の感覚からすればすごい時間だ。とてつもない準備期間だ。だからこそ、その地震はとてつもない破壊力を発揮した。そして大勢が死に、遺族の多くは一生涯、ナゲく事になった。時々私は思う。私の家族の悲劇もそういうものだったんじゃないかと」


 彼は岸辺の石に座り、暮れゆく夕陽に眠そうな目を向ける。


「私の妻と娘は、プッシャー(麻薬密売人)に殺されたんだ」

 その言葉に蓮は驚き、彼を強い眼差しで見つめた。

「その日、そのプッシャーはストリートで麻薬をさばいている最中に現行犯逮捕され、警察署にパトカーで連行された。しかし手錠はなかった。後で警官が言うには、逮捕時には無抵抗で以後もおとなしかったからだそうだ。また腕がひどく痙攣ケイレンする疾患シッカンを持っていたので車内では手錠を許してやった。

 しかし、その温情が悪夢を招いた。パトカーが署に到着するなり、プッシャーは隣の警官の銃を奪い、車内で2人を射殺。車から出た後も署内で周囲の警官と銃撃戦を始めた。そして…」

              「JESUS!!!」


 彼は衝動的にそう大声を上げた。浅瀬にいた多くの水鳥たちが、水面下からクロコダイルの急襲を受けたかのように一斉に空に舞い上がった


「不運にも、そこに私の妻と娘も居合わせたんだ。妻が運転中に他の車に当て逃げされたので、それを報告するために警察署に着いた所だった。そこで2人はプッシャーが撃った銃の流れ弾に当たり、その後、搬送ハンソウ先の病院で死んだ。他にも3人が犠牲になり、最後は警官によって、そのくそったれのプッシャーも射殺された」


 オーキッドは大きく深呼吸した。そして言う。


「私が住むソルトレイク・シティーには、全米一の軍需産業、ロッキード社がある。おかげで日々、ステルス戦闘機やバンカーバスターを積んだ巨大な軍のトラックが道路を走っているのが見れる。私の家の近所では、小さな子供でも一目見でそんな兵器の名称を言い当てる事もできる。また、近くには全住民の銃所持が義務づけられた町もある。

 私は時々思うんだ。

 私の家族の悲劇も、そういう土地だからこそ起こった事なんじゃないかって。アメリカという国には長年に渡って何らかのユガみが生じている。ちょうど巨大地震の前に何百年もかけて起こる海底の地殻変動のように。だからこそ、それはとてつもない破壊力を秘めている。災害や銃乱射やテロとは、全てそういうものなんじゃないだろうか。結果、被害者の遺族たちはずっとそれを重荷として背負わされることになってしまう」


「だけど、人生って…」

 蓮はそう言う。

「哀しみと共にあるものじゃないかな。だから、悲劇が起こったからといって、決して悲観的になる必要はないと思うの。それを受け入れて、なお強く生きる事だってできるんじゃないか…」

 彼女はそう言いながら、何か空々しさを覚えた。

 ただ模範解答を出しただけという感じ。それは相手の悩みへの切実な対応ではなく、むしろこれ以上、長話しされないために出した適当な解決策のような。彼女は自身でもそう感じざるをえなかった。


「確かに、その通りかも知れない」

 オーキッドは夕空に目を細めたまま言う。

「だけど、もしその悲劇が、もしそれが…」

 彼はグレイヘアをかき上げ、頭を振って長髪をバサバサと揺らした。


 その時、蓮はフイに直感した。

 もしかすれば、その先にある言葉は。そう思うなり、彼女にはそれが真実味を帯びて感じられた。これが女の勘というものだろうか。それともただのナルシストな思い込みなのだろうか。


 オーキッドは肩で大きく息をして、視線を下に向けた。そうして、ソーリーと言って口を真一文字にして笑った。

「OK, that's enough, Let's Go Home」

 もちろん、その言葉に蓮はホッとした。

 そしてもちろん、ホッとしたなどという言葉では、その瞬間の彼女のとてつもない解放感を表す事は到底できなかった。

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