第七話 エルヴィラとの鍛錬
「おい! キョウヤ! 暇だから何か遊びの提案しろ!」
部屋で寝ていたキョウヤは、突然の来訪者に腹部をのしかかられる。強い衝撃を受けると「うげっ」という情けない声を漏らした。
無防備な所を襲われ、一気に目が覚めたキョウヤは、左右に少しだけ揺った小さな尻尾が揺れるのを目に映すと、腹部に乗っかる人物に非難の眼差しを向ける。
その人物の正体は、やんちゃで少年のような性格な少女のニコルである。
視線を受けたニコルは、キョウヤの非難の眼差しなど気にした風もなく無邪気に笑っていた。
そして、ニコルの他にも申し訳なさそうな顔をするシゼルと、なぜかキョウヤを目の敵にするロイク、いつもの澄まし顔のダリルが部屋の中に入ってくる。
「お、俺に何の用だ?」
若干不機嫌な声色でニコルに問うが、ニコルは無い胸を反らして「ふふん!」と偉そうに腕を組んで言い放つ。
「だから! キョウヤにあたしたちが面白いって思えるような遊びを、提案しなさいって言ってるのよ!」
「なぜ俺に?」
「一番弱っちそうで、可愛い女の子の頼みなら受け入れてくれそうだって、あたしの勘が言ってた」
「お……お、お前の勘なんて当てにならないよ! そもそもお前みたいな生意気なガキが、可愛いなんて思えねーよ!」
軽く図星を突かれて、詰まりそうになった言葉を無理矢理吐き出す。
確かにキョウヤは可愛い女の子から頼りにされると、受け入れてしまうのは事実だった。
ニコルはまだ子供だけど、見た目だけは一応可愛い部類にカテゴライズする。ただそれを認めてしまうとニコルが調子に乗るからキョウヤは黙認した。
「あ、あのニコルちゃん? キョウヤさんが迷惑だから、わたしたちだけで遊ぼう?」
「そ、そうだよニコル! こんな奴のどこがいいだよ! 変な格好で、見た目弱そうなこいつのどこがいいんだよ!」
キョウヤに指を差してこいつ呼ばわりのロイクに何か言おうとするがやめた。相手は子供だし、ここは大人の対応するのが賢明だと判断を下して、気持ちを落ち着かせた。
「俺は忙しいから、お前たちに構ってる暇なんてないんだ。というかなんで俺って一日で子供に生意気な口をきかれてんだ」
さすがに子供相手にコミュ障は発症しないけど、その代わり子供に好かれるというよく分からない体質があった。それは日本にいたときでもそうであったように、この異世界でも健在だった。ただ単に舐められている可能性もあるが。
「どうして可愛いあたしの言うことが聞けないのよ?」
「自分で可愛いとか言ってる時点で、可愛くないんだよ! 可愛いってのはシゼルのような事を言うんだ!」
「え!? わ、わわわたし?」
シゼルに視線を向けると、わたわたし始めて頬を赤く染めた。
「シゼルが可愛いのは認めるけど、あたしも十分に可愛いわよ。ね、ロイク?」
「――っ!? お、おおおおおおう!」
狼狽するロイクはそっぽ向いて、こくんと小さく首を縦に振り肯定する。その横顔が赤くなっているのをキョウヤは目聡く見た瞬間、事情を察した。
「俺に構ってないでニコルはロイクと遊んでやれって。俺にはやることもあるし、第一子供の面倒なんか――」
「キョウヤなら面白い遊びを提案できるってあたしの勘が言ってるって言ってるでしょ! ロイクはつまらないからどうでもいいの」
頑なに否定するキョウヤに焦れたニコルは、台詞を遮りキッと睨み付けて声を荒げる。
そしてニコルの言葉にショックを受けたロイクが項垂れて、嫉妬の炎を滾らせてキョウヤを睨み付けてくる。
そんな二人にキョウヤは何だか面倒な事に巻き込まれたなと密かに嘆息する。
「えーと……ダリルだっけ? この子らどうにかしてくれないか?」
これまで言葉を発していないクール系のダリルに視線を向けると。
「ぼくはニコルに任せてる。もし暴走するような事があれば止める」
「今絶賛暴走中だけど……?」
ダリルの言うニコルの暴走とはどこまでの域を指すのか謎基準である。
取りあえず、ここでうだうだ言ってもニコルは全く引く気配を見せないし、ロイクからは目の敵のように睨まれる。
溜息を吐いて、仕方なくキョウヤが折れることにして、子供達に遊びの提案をすることにした。
人数もそこそこで遊べるゲームというなら、取りあえず缶蹴りを提案した。ただ異世界に空き缶が存在しないため、少し太い枝を代用に地面に突き刺した。これでは枝蹴りだ。
缶蹴りの遊びを知らない子供達にルールを一通り説明すると、取りあえず実際に遊んでみるために、鬼役をキョウヤが務めて子供達はそれぞれ散らばった。
「というか俺って缶蹴り事態遊んだ記憶が無いんだけど……?」
悲しいことにぼっちだったキョウヤは缶蹴りで遊んだ記憶がなかった。
これが初缶蹴りもとい枝蹴りとなる。
数を数え終わると早速キョウヤは子供達を探す。しかし、枝から距離を空けず、枝に意識を向けつつ、子供達が隠れていそうな場所へ歩く。
今のところ出てくる気配はない――と思ったら反対側からニコルが飛び出していた。
キョウヤは急いで枝へ走り出すと、枝の上に足を乗せて。
「ほい、ニコル見つけたっと」
「な――っ!? ずるいわよキョウヤ!」
むくれたニコルが抗議してくるが。
「別にずるしてないぞ?」
どや顔で煽っていく。ニコルはまだ文句を言っていたがそれらを黙殺する。
残り三人。
取りあえず、厄介そうなニコルが捕まえられれば問題は無さそうだと判断した。いや、次いでロイクも厄介だろう。シゼルは苦手そうだし、ダリルはよく分からない。とにかく、連携が無ければ比較的楽に捕まえることはできる。
今度は少し距離を空けて他の三人を探す。すると家屋の裏にしゃがみ込んでいるシゼルを見つけた。苦笑したキョウヤに気付いたシゼルが驚愕する。
「キョ、キョウヤさん!?」
急いで元の枝がある場所へ走り出して二人目を見つける。
シゼルは遅れてやってくると、ニコルがなぜか非難の眼差しをキョウヤに向ける。
「女の子を捕まえるのは得意なのね」
「聞き捨てならないぞ!? そんなチャラ男みたいに別に得意じゃないからな! それに俺はコミュ障だから逆に離れていくんだよ!」
自分で言ってて悲しくなる。
兎にも角にもあと二人。厄介なロイクさえ捕まえることができれば大丈夫だろうけど、どこを探してもロイクの姿が見当たらなかった。
「あーあ、鬼に捕まったあたしたちはキョウヤに何をされるんだか」
「え? 捕まったら終わりじゃ無いの?」
「何言ってるのよ! 可愛いあたしたちはキョウヤに襲われるのよ? もう口では言えない、あんな事やこんなことを」
「うぅ~~、で、でもキョウヤさんは優しいから……」
妙な誤解を招く会話が聞こえたが、取りあえず無視して二人を探し続ける。
缶蹴りは缶から離れさせ、いかに鬼を油断させて缶を蹴るのかが問題である。逆に考えれば、遠くまで行ってないから近くにいるはずだけど……。
「あ」
シゼルが何かに気付いた声を漏らしたのをキョウヤの耳に届いた。それからニコルの「ちょっとシゼル静かに!」という声も、もろに聞いた。
キョウヤは振り返ってシゼルが向けている視線を辿ると、ロイクの頭が見えた。直ぐさま元の位置へ走り出す。
「うわ! 見つかった――」
ロイクも走り出す。距離は五分五分。
キョウヤとロイクが全力疾走し、結果は――
「これで三人目!」
「うおおおおお!」
枝に足を乗せるのと、枝を蹴るのが同時に――そして枝は離れる事なく土に突き刺さったままだ。
「はっはっは! 残念だったなロイク!」
「きたねぇーぞ! そんなに強く押さえられた蹴っても離れねーじゃないか!?」
「いやいや、これは反則じゃないからセーフだよ? さてさて後はダリルだけだが……ってそこにいるじゃないか」
ルールも代々把握しただろうし、これで四人捕まえたから鬼は一番最初に捕まえたニコルになる。
四人に近づいて次の鬼役はニコルと口にしようとした時。
「えいっ」
そんな可愛らしい掛け声で枝を蹴った人物がいた。
すると一斉に子供達はその場から蜘蛛の子を散らすように逃げ出していく。
「姉ちゃんでかしたぞ!」
「ふふん! 残念だったわねキョウヤ! 実はもう一人いたのよ!」
「えっと……ご、ごめんなさい!」
「……」
それぞれ捨て台詞を吐いて子供達は隠れ始め、キョウヤは未だに呆然としてシャルリーヌに視線を向けたまま疑問符が浮かぶ。その視線に受けたシャルリーヌは――
「えへへ、ごめんねキョウヤ?」
と悪戯が成功した無邪気な子供のような笑みで、その場から駆けだした。
そんな稚気含んだシャルリーヌの笑みに、キョウヤの心臓を射貫かれて鼓動が速くなる。文句より、ただ自然と口元が緩んでニヤついてしまう。
「くぅ~~~~~~シャルが可愛すぎてニヤニヤヶ止まらない!?」
しばらく身悶えて、気持ち悪い笑みを浮かべていたのだった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
子供達としばらく遊んだ後は自分の鍛錬に励むため、シャルリーヌに用事があると伝え、子供達を任せてキョウヤは森の中にいた。行方不明者が出る森であるが、奧へ行くのを控えて入って直ぐの丁度いい場所で鍛錬を行った。
木剣はちょうど村にあったらしく、村長に断ってから拝借した。
因みにエルヴィラとケヴィンは捜索範囲を拡大して、今回の件の調査中である。
キョウヤとシャルリーヌが調査に参加しなかった理由は、四人とも村を離れる訳にはいかないという事で、キョウヤとシャルリーヌが居残り組と鳴った次第である。
しばらくして素振りを何百と繰り返して、樹木を相手に見立てて木剣を打ち付けたりと、自分でもハードな動きで剣術に励んでいた。ただ一人で鍛錬するには限りがあって、物足りなさはあった。
魔法に関してはディアヌの言葉を思い出して、何度か呪文を口にして発動はするが、マナを使用する量の関係で威力が弱かった。何度も挑戦してマナの使用量を自由に調節しようと試みるが、これが結構難しく、いつも同じ量のマナしか消費せず威力は変わらず。
剣術と魔法の鍛錬を三時間くらい没頭していると、体力とマナに限界が尽きて、一度だけ休憩を挟んだ。
「ふぅ~……こんなにも頑張った事って今までになかったな……」
腰を下ろして座ったキョウヤは昔の記憶をぼんやりと思い起こして呟いた。
あんまりいい思い出が皆無なぼっちだった時の日本にいた記憶。
異世界転生してから三週間は経つ。今まで鍛錬の事でゆっくりする暇も、考える時間もなかった。
「別に元の世界に戻るなんて考えてないし、俺はこれまで通り、この世界で生きていく。心残りはないよ」
ここでは日本でできなかった友達やコミュ障改善など、少しずつだけどキョウヤは変わってきている。自分自身ではそんな自覚はないにせよ、着実に変わってきている。
ここまでキョウヤを変えたのは、シャルリーヌに出会ったお陰である。
「俺はシャルのために生きるって決めたんだ」
気になる意中の少女のため、少女の騎士となったために、キョウヤは再び強くなることを心の奥底で誓う。
そして独り言に気恥ずかしくなったキョウヤは一人赤面していると、木々が揺れる音がして肩を跳ね上げたキョウヤは、音の発生源へ視線を向けると。
「あらあら~? こんなところで鍛錬~? 精が出るわね~」
エルヴィラが姿を現した。しかも手には木剣を手にしていた。どこかで見た既視感にキョウヤは怯えた顔をする。
「あ、あの、な、何の用でしょうか……?」
「うふふ~、どうしてそんなに怯えた顔をするのよ~?」
悪魔のような微笑みでエルヴィラが木剣を構える。嗜虐心が疼いて、恍惚とした瞳でキョウヤを見据える。キョウヤは背筋に冷たいもの走る。
「今は休憩中で――っ!?」
踏み込んできたエルヴィラが俊敏な動きで目前に迫り来て、キョウヤは直感でエルヴィラの剣撃を防ぐ。自分でも驚くほどの反射神経。
「どんな時でも気を張る事よ~? 敵はいつ現れるのか分からないからね~。けど今のキョウヤくんの反応はいいわね~。少しづつ成長している証拠よ~。だ・け・ど~、うふふ~【飛弾せよ~】」
魔法の呪文を唱えるエルヴィラ。キョウヤの肌に冷たい風が撫でると、視界に氷の塊が拳大の大きさ映った。
「――――くぅ!?」
既に行動に移していたキョウヤはしゃがんで、飛来してきた氷の塊を躱す。そして、地面を蹴ってエルヴィラに肉薄しようとした途端にかくんと膝が折れる。
「なっ!? いつの間に!?」
キョウヤの足が凍り付けにされて、地面に縫い合わせられていた。こうなってはキョウヤに打つ手がない。目の前の事で足下を疎かにしたキョウヤの不注意不足が敗因。
溜息を漏らして降参と言わんばかりに両手を挙げる。
「キョウヤくんは敵を対して降参するの~?」
しかし、エルヴィラは唇を舐めると、妖しく瞳を光らせて嗜虐的な笑みでキョウヤを見下ろす。
「え? ちょ、ちょっと待って下さい!? もう俺には何もできないし――」
「問答無用よ~?」
接近してきたエルヴィラの剣戟の猛威が襲ってくる。それを必死な形相で受け止めるキョウヤをしばらく嬲るエルヴィラであった。
それから心身共に疲弊したキョウヤは、全ての体力を使い果たして地面を大の字で寝転がっていた。あちこちに木剣による痣が幾つもできていた。痛みは通り越してもはや何も感じなかった。そんな容赦ないエルヴィラの攻撃に恨めしそうに視線を突き刺す。
「はぁ……はぁ、エ、エルヴィラさん……さすがにき、キツいですよ……」
「うふふ~ついついキョウヤくんが必死に鍛錬していたから~、ちょっとちょっかい出したかったのよ~。でも相手役がいて助かったでしょ~?」
「まあ……それに関しては感謝してますけど」
散々エルヴィラにやられ、しかも満足顔のエルヴィラの姿に納得はいかなかったけど。
しかし、エルヴィラもただキョウヤを痛めつけるばかりじゃなく、合間合間にアドバイスを指摘してくれて、助かる部分もあった。
「最初にキョウヤくんの相手をした時より成長していると思うわ~。ただ隙が多すぎる、単調な攻撃ばかり、考えすぎて行動を移すのが遅い、ってのが問題点ね~。魔法も発動できるようになったけど、それでも実用的じゃないのは問題ね~。マナの使用量を調整し、威力を上げる練習はもっとした方がいいわね~」
見事に的確な駄目だしを食らい、キョウヤは何も言えず凹んだ。
「まだまだ課題は山積みか……」
本当に自分は成長しているのかキョウヤは疑念を抱いていた。ただキョウヤの周りはレベルの高い人達に囲まれているせいで、自分の成長度合いが実感しにくい環境にいる。だから成長せず停滞しているように見えるだけだった。
実際キョウヤは成長している。
「さて~少し汗も掻いたし~この近くで綺麗な湖があったのよ~。キョウヤくん~? 行こっか~?」
「え――?」
キョウヤの返事を聞かず、エルヴィラに手を掴まれたキョウヤはさらに森の奥へ進むことになった。するとエルヴィラの言うとおり湖に辿り着く。
透明感のある水面に日の光が反射し、キラキラと輝いて綺麗な湖。底は浅く、水浴びするには絶好の場所といえる。
「こんな所に湖があったなんて……」
「うふふ~調査中に偶然見つけたのよ~」
そして、エルヴィラが突然、騎士服を脱ぎ出して、隠されていた美しい肢体が露わになる。少しだけ綺麗な柔肌を映し、慌ててキョウヤは背を向ける。
「な、なななななぜ脱いでるんですか!?」
「ん~? 水浴びするためよ~? キョウヤくんも一緒に入りましょう~?」
脱いだ衣服を綺麗に畳んだエルヴィラ。
現在、キョウヤの後ろでは裸のエルヴィラが立っている。
バスト、くびれ、ヒップ、突出した真っ白い肌に、艶めかしく綺麗な肢体、スラリと伸びた脚線美は長く美しい。
そんなグラビアスタイルのエルヴィラは、キョウヤの反応を面白がるようにクスクスと笑い、近づいてくる。すると裾に手が伸びて衣服を脱がそうとしてくる。
「は~い、脱ぎ脱ぎしましょうね~」
「ちょ、!? や、やめてええええええぇ~」
それから湖の中でお互い裸のまま背を向けていた。
この状況の意味が理解できないキョウヤは、忙しく視線を動かして戸惑っていた。直ぐ近くにエルヴィラの裸姿が……考えないよう煩悩を退散させようとするも、意識してしまう。
ただエルヴィラの方は特に気にした風はなく、キョウヤを異性として感じていないのかと少しだけ残念に思えた。
何か気を紛らわそうと話題を振る。
「あ、あの、少し気になっていたんですけど……、どうしてエルヴィラさんって屋敷で一人住んでいるのですか?」
「……別に隠すつもりはないんだけど~私のお父様は既に他界して~、ビサルア家は現在私一人なのよ~」
「えっと……お母さんの方は?」
「指名手配中よ~」
「……え? それって?」
思わず振り返りそうになった所をギリギリで止める。
エルヴィラの口調はいつも通りで、いつも通り過ぎて逆に悍ましく、他人事のような声音に少しだけ気になった。
「とある日を境に私のお母様は、突然人が変わったようにおかしくなったのよ~。お母様はお父様とお祖父様、お祖母様……実の娘である私まで殺そうとしたのよ~。そして、私の許嫁も。私は何とか生き延びたけど……お母様がビサルア家を壊滅させた」
「――」
突然エルヴィラの口から語られる、あまりにも壮絶な話にキョウヤは何も言えなかった。コミュ力ある人ならきっとエルヴィラに気遣いの言葉を一つや二つかけるのだろうか。
キョウヤは顔を伏せて、掛ける言葉見つからず沈黙していた。
どうして、その話をキョウヤに話したのだろうか?
「私の許嫁って年下で弟みたいな子だったのよ~。だから私は執拗に弟が恋しくって求めているのかも知れないね。キョウヤくんをこうして構ってあげるのも、私の許嫁に重ねているかもね。キョウヤくんからしたら迷惑な話かも知れないけど~。もし嫌なら……もう私はキョウヤくんの事は必要以上にかまわないわ」
「それは――」
エルヴィラの心情を聞かされたキョウヤは、あまりにもシリアスな話に情報の整理が追いつかず、言葉を濁してしまった。
しかし、このまま何も答えない選択肢は、最悪な選択と言える場面である事はキョウヤも重々承知している。
こうしてエルヴィラが心を開いて吐露してくれた事は、純粋に嬉しいと思っているし、キョウヤの中ではエルヴィラを姉として見ている節もあった。
一人っ子で姉がいないキョウヤは、エルヴィラのような姉がいるのも悪くないし、弟として姉弟関係を築くのも悪くないとさえ感じていた。ならこれだけは答えるべきだとキョウヤは口を開いた。
「俺はエルヴィラさんを頼れる姉として思っていますよ」
「…………ふふ」
そんな答えを受けると、エルヴィラは嬉しそうに微笑んだ。
なんだか二人の距離が縮まった感じがしてキョウヤも嬉しく感じた。
終幕→ゼロから紡ぐ物語 凉菜琉騎 @naryu0
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