第727話

「沙羅魅知ってるか?」

「知らな〜い!」

「だよな! スイカって普通種取って食うじゃん」

「うん。普通はね!」

「でもな、欧米では種取んねぇで食うらしいぜ!」

「へぇ、そうなんだ〜」

「それに種食うと盲腸になるって迷信らしいしぜ!」

「へぇ〜」

「おめぇ驚かねぇのか?」

「え、なんで? 沙羅魅前から種ごと食べてるでしょ?」

「おっ! 言われてみればそうだったな!」

「もう〜、公ちゃんだけに節穴ぁ〜!」


「で、カブトムシにスイカあげるとお腹壊すから食わせちゃダメなんだぜ!」

「え、本気と書いてマジ?」

「マジマジ! これは知らなかったらしいな!」

「うん。ってことは、昔兄上が飼ってたカブトムシのスイカをこっそり全部食べてたのは恩返し案件だったってことだよね!」

「はぁ? おめぇそんなことしてたのかよ!」

「いいでしょ別に〜」

「はぁ? そんなのいいに決まってんだろ! おめぇはカブトムシのデリケートなお腹を救った救世主なんだから胸張ってればいいんだし!」

「でしょでしょ! 公ちゃんもっと褒めて!」

「さすが沙羅魅!」

「もっと! もっと!」

「カブトムシの救世主!」

「もっと〜!」

「まぁ、胸を張るにも張るほど胸はねぇけどな!」

「え〜! 沙羅魅まだこれからおっきくなるんだもん! 公ちゃんセクハラ〜! いいところでセクシャルハザードやめてよね!」

「おめぇが先に節穴とか言ってくるのが悪りぃんだろ!」

「え、そんな昔のこと根に持ってたわけ?」

「はぁ? 1分39秒前だから昔じゃねぇし!」

「出た! 無駄に細かい〜!」

「100秒未満なら根に持つっていうほど昔じゃねぇってこと!」

「出た! めんどくさ理論〜!」


「てか、おめぇスイカなくなってるぞ?」

「え? どういうこと?」

「それはこっちのセリフだし! さっきまで食ってたやつどこに行ったんだよ?」

「なんだ。もう食べちゃっただけだよ〜」

「ま、まさか。おめぇ皮まで食ったのかよ……」

「何言ってるの? 当たり前でしょ!」

「意味わかんねぇし!」

「え? え?」

「普通皮は食わねぇだろ?」

「え、普通食べるから〜」

「食わねぇよ!」

「あ、兄上ちょうどいいところに来た!」


「なんだ沙羅魅? 公太郎とスイカ食ってんのかよ」

「お邪魔してます!」

「やだ、公ちゃん借りて来たネロみたい! それで兄上! スイカは種も皮も全部食べるよね?」

「は? 何言ってんだ沙羅魅? まさか家訓を忘れたのか?」

「もちろん覚えてるよ! 『家訓 その三! 食べ物を粗末にするものは明日無きものと思え! 食べものはすべて胃袋に入れろ!』でしょ?」

「わかってるならいい、そういうことだ!」

「ほら! 公ちゃん! そういうことだよ!」

「ら、らしいな。オレがちょっと違ったみたいだな……」

「じゃあまたな。この兵衛棍様は道場の方で汗を流してくるぜ。公太郎も来てもいいんだからな」

「きょ、今日も遠慮しておきます」

「うん。あとでね〜」


「おめぇん家は日本にあるけど日本じゃないってことか」

「え、どういうこと?」

「日本にあるアメリカ大使館の中は日本だけど日本じゃないみたいなやつだよ」

「?」

「だから、バチカン市国って言っても四国にはないってことだよ!」

「あ〜! なんとなくわかった! すべての道はローマに続く的なあれね!」

「それそれ、てかオレもスイカの皮食べなきゃいけねぇのか?」

「もちろん! 郷に入ればGO GO GOだよ!」

「ま、マジか……」

「でもね。食べたくないなら沙羅魅が食べてあげてもいいよ!」

「なんだよそれ、ただおめぇが食いてぇだけだろ!」

「そ、そんなことないよ、公ちゃんが食べたくなさそうだから、食べてあげようかな〜って思っただけで、べ、別に食べたいとかそういうわけでは……」

「わかったよ、しょうがねぇからおめぇにやるよ!」

「え、いいの! やった〜!」

「これがwin-winってやつだな!」

「なんかよくわからないけど、それだね!」


スイカの皮はキュウリみたいな味だから、味噌をつけるのがオススメ!

みんなも試して味噌!


by 沙羅魅

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