第0.3話

「公ちゃん。みかん美味しいね♪」

「だな」

「みかんの皮って何かに使えるっけ?」

「目つぶし」

「違くてもっと生活の知恵的なやつ」

「ねぇな」

「そっかないか」


「みかんってどこで取れるんだっけ?」

「愛媛だろ」

「愛媛って何があるんだっけ?」

「みかん」

「他には?」

「ねぇな」

「そっか。かわいい名前だけで何もないのか」


「愛媛って四国だよね」

「だな」

「四国って他に何県があるんだっけ?」

「えっと愛媛、高知、香川、うどん県だな」

「あ、うどん県ってそこか!」

「香川もうどんが有名で、高知は名古屋コーチンだな」

「そっか。愛媛だけくだものなんだね」


「あれ? 阿波踊りって四国だよね」

「そうだな」

「何県だっけ?」

「徳島だろ」

「え、今四国に徳島入ってなかったよ?」

「マジか? パラドックスじゃん!」

「わかった! 徳島だけに島国なんだ!」

「ああそうか。四国大陸の横にちょこんとあるあれか!」

「そうそう。みんながこまめ島って呼んでるやつね!」

「はぁ? こまめって書いてあずきって読むんだろ」

「あ、あずき島ね。二十四の瞳の舞台だよね~」


「みかん美味しいね」

「だな」

「あれ? このみかん和歌山産だって」

「愛媛にある和歌山で採れたんだろ」

「なんで和歌山って名前なの?」

「それは松尾芭蕉が奥の細道で立ち寄って、みかんの和歌を詠んだ山だからだろ」

「ああ、そういうことか!」


「みかん美味しいね」

「だな」



次の日、手と足の裏が黄色くなった沙羅魅と公太郎であった。

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