第0.5話

「あの人絶対そうだよ」

「マジかよ。そうは見えないぜ」

「公ちゃん。意外とああいう人がそうなんだよ」

「でもまだ決まってねぇだろ」

「いやいや、これは確実ですよ公太郎さん」

「おめぇなんだよ急にその話し方」

「探偵だよ♪」

「なんのドラマまねてんだよ?」

「オリよオリ。オリジナル♪」

「へぇ。じゃあ、名探偵さん。なんであの人がそうだって言えるんですか?」

「それはこのお店が『おかまの飯屋』だからなのよっ!」

「だからっておめぇ、あの人オカマじゃねぇだろ~」

「間違いない! ジャスティスッ!」

「なんだよそのキャラ」

「だからオリだよ。オリジナル。濡れ衣名探偵シリーズ桜川桃子」

「ぬれぎぬってなんだよ。逃亡者か?」

「濡れ衣はもちろん。お色気だよ♡」

「はぁ。おめぇにお色気とかありえねぇし」

「あるえるもん!」

「あるえるか?」

「あるえる!」

「あるえぬ!」

「あるえます!」

「あるえません!」

「とにかく! アルエッティ!」

「いや、アルエナティーヌ!」


「ちょっと、それどこの女よ!」

「はぁ、オリだよオリ。オリジナル!」

「そのお方どこにおられるのよ!」

「だからオリジナルだよ!」

「いいえ、言い逃れはできませんわよ!」

「逃れるもなにもねぇし!」

「この節穴、ただの目じゃなくてよ!」

「なんだよそれ?」

「亀有にメアリーありと言われた桜川桃子は騙されなくてよ!」

「なんかはじまったぞ」

「いいえ、あなたは決定的なミスを3つ犯しているわ!」

「は?」

「1つ、おかまの釜屋はこの店の上の階。2つ、私はさくらかわももこではなく、おうかわとうこ! 3つ、あの女性は女だからオカマではなくノーマル、普通のノーマルなのよ!」

「なんだって!」

「そして4つ、釜飯マンとチーズは同じ声優なのよ!」

「おっ、おっはーーー!」

「おほほほほ! この難事件も桜川桃子にかかればこんなもんよ!」


「ふはははははは!」

「ハムカツ王子。潔く負けを認めるのね?」

「このオレ様が負けたと思っているのか?」

「なに? 私の名推理に間違いがあるとでも?」

「あぁ、教えてやろう。おめぇがエレベーターのボタンを押した後にオレ様は3階を2度押しでキャンセルして、上の4階を押していたのさ」

「なんですと!」

「さらにあの女性はアルエッティではなく香山さんだ。しかもすでにバンコクで性転換手術を終わらせた筋金入りの元男性、冬樹さんだ!」

「なぬ!」

「そして、おっはーは慎吾ママではなく山ちゃんが元祖だと思われがちだが、意外とベッキーなのだ!」

「それはやばい! クリーンな私のイメージがベキベキと音を立てて崩れさって行く~ッ!」

「さあ、桜川! 潔く負けを……」



「なんで追い出されちゃったのかな?」

「知るかよ」

「エレベーター来た。あれ、ここ5階だったみたいだよ」

「マジ?」

「マジ!」

「じゃぁ、オレたち何の店に行ってたんだ?」


誤解が招いた2人の出現により、香山さんは次の日からお店に来なくなったそうだ。

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