第560話

「え、五郎丸を名前だと思ってたの!?」

「そうだよ、なんか文句あんのかよ」

「だって公ちゃん、あれ名字だよ。これ常識だよ!」

「そんなん知るかよ」

「しかも五郎丸はマスター・オブ・ニンジャっなんだよ!」

「なんだそれ?」

「ジャポニカ学習帳にもなったんだよ!」

「はぁ、おめぇやけに五郎丸に詳しいな」

「え、なにそれ嫉妬~?」

「ちげーよ」

「やだ~、沙羅魅照れる~」

「ちげーし! てか、何でおめぇそんなに詳しいんだよ!」

「だって、これぐらいみんな知ってるよ。

五郎丸歩は1986年の3月1日生まれで1歳年上の兄がいて身長が185センチで体重が100キロでポジションはFB。そして、血液型はB型」

「いやいや、普通そこまで知らねぇだろ」

「3歳からラグビーを始めて小学校4年生から6年生までサッカーもして福岡市選抜にも選ばれて、中学時代はサッカーとラグビーの両立。高校時代は3年連続で全国高等学校ラグビーフットボール大会に出場。U17日本代表にも選ばれ……」

「おい、ちょっと待て! いくらなんでも詳しすぎるだろ!」

「え、そう? 普通だよ♪」

「普通じゃねぇし!」

「普通だし!」

「いや、異常だろ!」

「以上じゃないもん! もっとあるもん!」


「てか、あいつあゆむっていうのかよ!」

「ちょっと、呼び捨てにしないでよ!」

「いいだろ別に!」

「よくない! あゆむくん♪ って言わなきゃダメなの~」

「はぁ、わけわかんねぇし!」

「これぐらいわかってよ~」


「てか、あいつ魔法使えるんじゃねぇ?」

「え、なにそれ?」

「鹿目まどか、暁美ほむら、美樹 さやか、五郎丸あゆむ」

「え、まさか!」

「そう、あいつは魔法少女だったんだ!」

「え~! それは知らなかった!」

「マジかよ。おめぇそんなことも知らなかったのかよ!」

「知ってたし!」

「おめぇ今、知らなかったって言ったばっかりだろ!」

「言葉のあやだもん。あややだもん!」

「そういえば五郎丸ポーズあったよな」

「あ、あの元イングランド代表のスタンドオフジョニー・ウィルキンソンに倣って、伸ばした左右の人差し指の先を合わせ、右手の中指、薬指も立てて拳に被せ気味にする独自のポーズね!」

「そう。あれ手の中になんか隠し持ってんじゃね?」

「ま、まさか、ソウルジェム?」

「いかにも!」

「まさか魔法でキックの成功率を上げてたっていうの?」

「だな!」

「そして、試合中に変身しないのは魔法少女だとバレないため?」

「さすがにラグビー中にスカート穿けねぇもんな!」

「そ、そんなの絶対やだ~!」


「なぁ、落ち込むなよ、沙羅魅」

「落ち込んでないもん」

「じゃあ、なんで暗い顔してんだよ」

「だって、あゆむくん♪が魔女になったら沙羅魅助けられないもん!」

「なんだ、そんなことか。やつが魔女になったらあの時みたいにオレがどうにかしてやるよ」

「え、公ちゃんが魔法少女になってくれるの!?」

「なんねぇし! てかオレ男だし!」

「そっか~。男の子は魔法少女になれないのか~。困ったな~」


あゆむくん♪ がGQ Men of the Year 2015を受賞したことを忘れていた沙羅魅であった。

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